<幕外11> 魔人パーティ 因縁の敵
全ての悪魔を残らず始末した後。
魔人グラディウスは飛行魔法でまっすぐ天に昇っていく。
高く高く。
氷山連邦の頂上よりもさらに高く。
そして天よりさらに上を睨みながら背中の大剣をふりかぶり、頭上に向けて大きく振り下ろした
「天・割・殺!!!!!!!」
真っ青な空しかなかったその空間に透明のヒビが入っていき、そしてそのまま
バリンッ!!
何もないはずの天空に大穴があいたところ。その暗闇からのぞき込んでいるのは巨大な髑髏であった。
眼底は真っ黒の闇に塗りつぶされ目線は見えぬ。
だが吹き出る邪悪なオーラが魔人グラディウスを捉えているのは明確であった。
空いた大穴から矢のように吹き出る呪詛の呪いは、しかし魔人グラディウスの前で消滅していく。
グラディウスは湧き出る負のオーラなどおくびにもかけずに骸骨をにらみつけ、世界中に響かせるように啖呵を切るのだ。
「ワレはグラディウス、魔人たちを引き連れ新たな国家を造り王となるものだ!!」
強い決意を持った炎のオーラが湧き上がると暗黒のオーラと衝突し互いに破裂する。
大きな爆発音が響くがそんなことは気にも留めないといわぬばかりに宣言を続ける。
「魔人に手をだすものは誰であろうがワレが許さぬ!!敵としてその魂の輪廻までコナゴナに砕いてやろう、ワレに挑むならそのつもりで来るがよい!!」
陰々と響き渡るその声に、何の表情もないはずの骸骨がニンマリと笑ったように見えた。
「クックックッ。分をわきまえぬ若造がオノレの立場すらわからぬか。ワシの姿を世界に表出させた褒美じゃ遊んでやろうぞ若き魔人よ!!せいぜい『ワシに挑むがいい』魔人どもが死に絶える前にな!!」
「うわぁ。悪魔王だよねアレ。いよいよ親玉がお出ましだ」
舌をなめずるジュディアーナ。
こんなことなら魔導衛星を打ち上げておけばよかったと心中悔しがっている。だが世界一の魔導士と認められるほどの彼女でも悪魔王の全貌はつかめず、魔力もオーラも底知れず計り知れない相手であった。
大魔導士であるはずの自分よりさらに格が二つも三つも上であり、こみ上げるくやしさに耐えながら研究者として敵の力を冷静に分析する。
「うむ。ワシらよりもはるかに格上じゃな。だが我らはグラディウスを魔人王として魔王国家の再建を誓い集まったのだ。打ち破るしかあるまいよ」
「けっ。おまえと一緒にすんなってんだ。確かに悪魔王はボクより格上だけど、おまえはボクより格下なんだからな!おんなじ立場で語るんじゃないってんだ全く!」
「口の減らんガキめが。いいからヤツをよく見ておくのじゃ。ワシら魔法使いはその魔法力で勝負が決まるのだから分析するしかない」
「うるせえって。あんたは魔法使いかもしんないけどボクは魔導士なんだからね。自分よりはるかに強い難敵?だからなにさ!打ち破るために頭を使うのがボクの役目さ!魔法使いみたいに魔法力をぶっつけ合うだけの単純な世界じゃないのだから知っておくがいいさ」
わちゃわちゃと二人でやり合うのを聞き流しながら、剣豪ビャッコは考えていた。
斬鉄丸であの髑髏切れるかの?
なんなら今すぐにでも。
たとえ実体がない魔力体であったとしても。斬鉄丸は魔剣であり、魔力も霊体もオーラでも、そして魂魄であろうと切り裂く天下に名を響かせる銘刀だ。
ジリジリと「やってしまいたい」気が心に渦巻くのは体質的にバトルジャンキーだから。強者に対する挑戦者気質が渦巻いてるのだ。さらに魔剣は魔剣で「いいからやっちまおうぜ?俺に切れないものはねえって言ってんだろ相棒?」とけしかけてくるものだから。
「ビャッコ殿?」
異変にあわてて声をかけたベノンのおかげでハッと我に返るビャッコだった。
永劫に続くかと思われたにらみ合いの末。
やがて悪魔王は不敵な笑いを残して去っていく。
陰々と響く呪いの呪言はグラディウスを逃すことないクサビを打ち込んで。
時はもう夕暮れ。
親子二人をつれて崖から降りていくジュディアーナ。
合流時点まで急ぐわけでもなくポックリポックリ歩いていく。
「ボクたちはあの男の想いに応えて集まっただけさ」
「想い・・?ですか」
「そうさ。あの大男は新しい魔王国を作って魔王になるグラディウスだよ。神にも悪魔にも、もちろん人間なんかにも。誰にも邪魔させない、みんなが楽しく生きてける魔人の国を造るってアイツが決めたから」
「ホント?ホントにホント!?」
小さな男の子は喜びを爆発させてジュディアーナにまとわりつく。
やせ細ったガリガリの体であってもその表情はキラキラと輝き、瞳の中には暮れていく夕日と同じ赤く揺るがない光がやどる。
ジュディアーナは何でもないことのように頷いて笑うと子供の頭をなでた。
「だからキミは『もうダメだー』なんて言ってる仲間の魔人たちに教えてあげてほしいんだ。虫けらに魔人が負けるわけがないってことを」
だからあきらめないで。
希望の光を消さないで。
ボクたちがいるのだから。
ウンウンと何度も子供は頷いた。
そうだ、自分だって悪魔たちに負けなかった。
「グラディウスがいて周りにはボクたちがいる。魔人が最強だってすぐ世界中に知れ渡ることになるよ」
この後。
グラディウスと悪魔王は因縁の相手として闘いを繰り広げていくことになる。
人族もまた魔人が勃興していくにつれ勇者を差し向け軍隊を派兵してこのパーティと闘い続けた。
後の大魔王グラディウス、そして魔王パーティの闘いは伝説と呼ばれるようになる。
そして10年もの激闘の末、ついには新魔王国が開国されたのだった。




