<幕外10> 魔人パーティ 小さな戦士
絶対的な上位存在であるはずの悪魔から圧倒的な戦力で囲まれているはずの魔人パーティ。
だが相手を蹂躙しているのはすぐそばにいて自分たちを守ってくれているハズのエルフを含めてもたった6人のパーティの方だ。
噂は本当だったのだ。
最強の魔人のパーティがここにいる。
父親はもう言葉すら口に出せず呆然と見るしかできなかった。
そしてその横で足にしがみついていたはずの小さな男の子は、いつの間にか父親から離れて崖の際までニジリ出てきていて、キラキラと輝く瞳でその様を見ているのだった!
「ボク、危ないぞ?」
ろくに足元もみずにズイズイと前に出ていくく子供を満足げに抱きしめると、そのままアグラをかいてこどもを膝に座らせる。
子供はワクワクと体を揺らしフンスフンスと鼻息も荒い。
それはそうだろう、自分たちを虫ケラのように扱ってきた悪魔たちを。この魔人たちはまさに虫けらのように木っ端みじんにしていくのだから。
「ぼ、ボクも!ボクも!!」
両手を伸ばしてバタバタと動く子供を抱きしめる手は緩めずに、ジュディアーナは小さな頭に顎をのせた。
「キミもすぐにできるようになるさ!だってキミはボクらと同じ魔人なんだからね!!」
「やっときたかい?このまま放置されたらどうしようかって思ってたところだよ」
ジュディアーナは立ち上がると親子を後ろにかばって振り返る。
先のとがった崖の先端にいるジュディアーナたちは、森からあふれ出てきた悪魔の軍勢に取り囲まれたのだ。
その数は百体もいるだろうか。
何重にも取り囲まれており力量が少々上回ったとしても絶対絶命という状況だ。
一瞬にして父親の顔は絶望にかわり、それを見た悪魔たちは満足げに笑う。
ここにいる魔人らしき3人ではコイツ以外は女と子供。唯一戦えるであろう大人の男が自分の生を投げ出したのだ。悪魔たちが蹂躙の未来を描く。嫌らしい笑いがヒヒヒヒと響く。
しかしすぐに悪魔は気づくのだ。
この男は最も弱く戦う力がないものだということに。
ジュディアーナが後ろ手を子供へと伸ばす。
鋭角の魔石に金の装具がついた手のひらほどの小さな魔道具を渡す。
わからない顔の子供がその魔道具を受け取るとプニプニのほっぺにそっと手を添えた。
じわりと伝わるのは暖かさとそして勇気。
子供の目には自分にやさしく力を分け与えてくれる大きな背中、誰にも負けない気持ちが湧き上がる。
「この石を握ってごらん?そしてギュウって握ったらこう思うんだよ?「このクソムシどもに天中の雷がふりおろされろ!!!!!
「されろ!!!」
ビッシャアアアアァァァァンッッッ!!!!!!!!
ジュディアーナが最後まで言い終わる前に子供が繰り返す。
自分に伝わる輝く想いに素直に殉じたのだ。
優しく、眩しく、美しい憧れのヒトに言われるままに。
言霊がつむがれた瞬間には雷撃が振り降ろされ、二十体もの悪魔が消し炭となっていた。
彼女の後ろには悪魔を虫けらのように蔑む男の子。
渡された石を強く握りしめ目の前の悪魔たちにかざす。
輝く魔石はジュディアーナが埋め込んだ魔導装置に魔力を注ぎ込む。それぞれの魔道具から放たれた光が子供の直上の空でひとつに結ばれ、それは小さな玉となりバチバチと放電を繰り返しながらグルグルとまわって命令を待ちわびる。
「いいぞそうだっ!あいつらは汚いムシケラだよ、そしてキミはボクらと同じ魔人なんだ!さっさと踏みつぶしてしまえばいい、さあもう一発!!
「されろ!!!」
ビッシャアアアアァァァァンッッッ!!!!!!!!
「ボクたち魔人は負けないよ!」
「されろ!!!!!!」
ビッシャアアアアァァァァンッッッ!!!!!!!!
「ボクたちはみんなで幸せになるんだよ!」
「されろ!!!!!!!!!!!」
ビッシャアアアアァァァァンッッッ!!!!!!!!
辺り中が黒焦げとなり元は悪魔であった消し炭が山積みとなる。ついには大型の悪魔が一体残るのみとなった。
さきほどからこの悪魔だけは素早く雷撃をさけて生き残っており、上位の武力をもった隊長格であるのはあきらかだった。
「このクソガキめが好き勝手しやがって。そんなもの当たらなければなんでもないわっ!」
言い捨てた悪魔は大きく飛び上がり、刃物のような爪をたてて三人へととびかかった。
だが。
ガリンッ!
まるで空中に透明な防壁でもあるかのように固いバリアにはばまれ、悪魔はその勢いのまま弾き飛ばされる。
「頑張ったね?」
ジュディアーナはフラフラになった子供の頭をなでると父親にそっと引き渡した。
ギュウと抱きしめ後ろへ下がる親子。
その父親が見たのは、悪魔の微笑みなどかわいいと思えるほど爽やかな笑顔のジュディアーナだった。
「その子のおかげでボクは隊長格1匹だけかあ。またあのクソジジイに勝ち誇った顔されるかと思うと随分と悔しいんだけど。コイツをどうしてやれば気が晴れるかな?」




