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大魔王様ついてきます! ~ 最強の部下は大変なのです ~  作者: 水砲


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<幕外8> 魔人パーティ 救出

強烈な恐怖。

父親はとっさに全力で抱いていた子供を投げ飛ばす。


バキンッ!!


扉が吹き飛ぶ大きな音が響き、何が起こったかわからず倒れて泣き出しそうな子供に身振り手振りであっちへ行け逃げろと指示を出す。


「あら?絶望の闇に落ちた魂のくせしてほんのちょっぴりやる気だわ。それではワタシのディナーとしては味が落ちるからお料理が必要になるわね」


ニンマリと牙を出して怪しく笑う悪魔。

恐怖で動くことができない魔人を気にせず扉へと向き直る。

そこには動くこともできず目を見開いて立ちすくむ子供の姿。


「最後の力で守ろうとした子供を目の前で殺せば。あなたの心には何が残るのかしら?」


楽しそうに子供へと近づいていくその声とは裏腹に、口は半開きで涎を垂らし猟奇的な瞳は赤く濁って獲物を捕らえて離さない。

シュンとのびた爪は鋭く尖り1つ1つが鋭い短剣ほどもある。


「やめろっ・・」


必死な声を投げつけても。

ひ弱な魔人のことなど完全に眼中からはずれているかのように悪魔は振り返ることはない。

そうだ、俺には何もできない、だが、だがっ・・


「やめてくれええぇぇぇッ!!!!!」


悪魔がふりかぶった爪を子供の首筋に突き立てようとしたその瞬間。


伸びてきた手が悪魔の腕をつかんだ。

のそりと出てきた大男はその手を離さずに悪魔をふりまわしはじめる。


「ふんっ」


勢いをつけてはるか遠くまで投げ飛ばしてしまった。

バキンと壁をぶち破る音が響く。

そして大男が子供を抱きあげたそばを風のように何かが通り過ぎていくと。


「ぎゃああぁぁぁ!!!」


悪魔の叫びが響き、バランバランと床にこま切れとなった何かが落ちていく音がボトボトと聞こえたのだった。



差し伸べてくれた腕をにぎる。

太く固い腕、暖かくやわらかい手のひら。

引き起こされると魂の熱気に透き通った優しさが流れてきた。


「怖い思いをさせてすまなかった」


助けてもらったお礼を言う前に謝罪された俺は呆然とその男を見てしまう。

足元では子供が俺の太ももにしがみついて今にも泣きだしそうだ。


「こっ・・こちらこそ礼を言わせてくれ・・・でも、でも大丈夫なのか、あんた、あんなこと俺たちのためにっ」


悪魔も人族も。魔人を最弱種族だと考え蔑んでいる。

稀に生き残った正義感の強い魔人が抵抗すれば、悪魔は集団で襲い掛かりリンチして見せしめにする。人間は徒党を組んで討伐隊を派遣する。

そして希望となるべきその魔人も村も住民も全滅するのだ。

少しでも力があり、少しでも抵抗する魔人は周囲を含めて即座に抹殺される。

何度も何度も繰り返される「お前たちに未来はない」「お前たちに希望はない」


俺たちはバラバラになって逃げるしかない。

森に潜んで悪魔をやり過ごすしかできない。

生き残るために暗闇におびえて震えながら身を隠すことしかできない。


あいつらは自分たちに手を出した相手を見失うことはない。

「うまく逃げ延びる」なんて有り得ない。

生き延びることが出来たとすれば悪魔の恐怖を魔人に広めるための広告塔なのだから。

魔人族の希望の灯を消すための伝道師。

そんな呪いの宿命を背負うことになろうとも俺たちは必死で逃げ回る。


「も、もうひとりいるのか?でもいくらあんたらが強くても二人ぽっちでかなう相手じゃない、ここまでやってしまっては千体も悪魔の部隊がやってきてなぶり殺しになるぞ!?」


ひょこりひょこりと歩いてきたもう一人の武人が顔を出した。

大男と違って細くて背が高い。腰に一本刀をさしているだけの身軽な恰好だ。軍人というより武芸者という体の飄々とした男。


「たった千では前菜にもならんの。少しは歯ごたえのあるヤツが出てくればいいが」


気にするまでもない、と笑って出て行った。



大男の名は魔人グラディウス。

建物から出たところで仲間たちから声がかかる。


「今後の展開はどうだろう?そろそろ悪魔たちもボクらの存在を気にしてるかもね?」


美形のエルフがその大きな目をクリクリさせながらグラディウスの腕に飛びつく。

「白虎ちゃんがバラバラにしちゃった悪魔を見せしめにしちゃおうか。そうすれば村の人たちが逃げる時間も稼ぎやすいだろうし。ドンと大軍でも送ってこないかなぁ」

エルフの瞳には楽し気な感情しか映っておらず、自分たちを殺しにくる悪魔の大軍への恐怖はみじんもない。


「ふむ。見晴らし台にでも吊るすか?」


よく悪魔が使う手だ。

目だった場所に吊るして見せしめにするか、巨大な杭で突き刺してサラすか。


しかし白虎と呼ばれた剣士は気まずそうにほほをかいた。

「ああそれだがな?うちの刀が悪魔をミンチにしてしまってなあ。パッと見て原型がわからないが大丈夫じゃろうか?よく見ればパーツごとにはあの悪魔とわかるかも知れぬが。それとも肉塊のブロックをひとつひとつノリでつなげていくか・・・」


剣士が風のように悪魔にせまり通り過ぎた瞬間。

悪魔の体は縦にまっぷたつ、よこにまっぷたつ、さらに縦にスライス厚さ5ミリ横にスライス厚さ5ミリ、横にまわってさらに5ミリで縦切りする念の入りよう。

つまりはサイコロ上の5ミリ角の肉片になってしまっているのだった。


「ぱ、パズルにしては難易度高いね。立体的だし内臓なんて最初から見えてないし」


苦笑いするのはこのパーティの魔導士であるジュディアーナだ。しかしその目はあきらめたというわけではなく、ちょっと挑戦してみようか?微妙な表情ではあったのだが。


「何をつまらんことを言うておる。もうヤツをさらしてきたぞ」

「俺達でやっておいた。いずれ悪魔も気づくだろう」


戻ってきたのは二人の男。

魔導フードをかぶりシワガレた声の初老の男、そして全身が厚い筋肉に覆われ日に焼けた若者。


「おつかれー。それでどうしたのさ?ベノン?」


ジュディアーナは初老の男には見向きもせず、むしろ全くその存在をスルーして若者に声をかけた。


若者の名はベノン。

つい最近森の奥にある開拓村が襲われた際に救出した男だ。行く当てもなく呆然としているところをグラディウスから声をかけられ同行するようになった。

戦闘力とタフさは飛びぬけている。だがそれ以上に心の持ちようが気に入られたのだ。


わずか二十人ほどの魔人で構成された森の奥の開拓村。

悪魔の軍勢百体に襲われてはひとたまりもない。


グラディウス一行が駆けつけた時には村人はすべて虫の息であり、そんな村人たち全てを庇うように立つベノンの前には50体もの悪魔が倒れていた。

彼もまた全身から血を流し傷だらけであったが、それでも引くことなく死にかけた村人たちを守ろうと悪魔に立ちはだかる。

手には安物の鋼の剣、しかしすでに折れてしまっているが手放さないのは代わる武器をもっていないからであろう。鎧もマントもなく、木こりが森の中で使う皮のジャケットは悪魔たちに傷づけられてボロボロにちぎれていた。


手をこまねいていた悪魔たちが一斉に飛び上がり、手を掲げて詠唱を始める。

ベノンの直上に魔導陣が回転をはじめ、煮えたぎるマグマがベノンを襲い掛かろうとしたその瞬間。


一直線に飛び上がったグラディウスから繰り出された拳が噴出するマグマごと魔方陣を撃ち抜いたのだった。



「樽につっこんで見晴台のテッペンに括り付けてきた。鳥がつつくかもしれぬが魔力の残滓で悪魔たちも気付くだろう」


「そうかい、ひとりでご苦労だったね。うちのパーティはやり過ぎちゃうメンバーばっかりだからこれからも頼むよ」


「ワシも一緒にやったのじゃがなっ!」


真っ赤な頭から湯気を出す大魔法使いジルベスト。

あらゆる魔法を使いこなし、超高難易度の核激魔法から「こま切れ肉となった悪魔のミンチを樽に飛ばしてポイポイいれる」なんて初級魔法まで使いこなす魔法のスペシャリストだ。


「おまえいたんだクソジジイ。悪魔と一緒に鳥に突かれてハゲればいいっ!!」


新参者のベノンにとってはジュディアーナの気遣いに感謝である。しかしながらも「さすがにそれはないんじゃないの?」二人の仲の悪さに愕然とするのだった。


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