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大魔王様ついてきます! ~ 最強の部下は大変なのです ~  作者: 水砲


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<幕外7> 魔人パーティ 厄災

暗黒の30年間。


今から100年も昔になる。

旧魔王国が消滅し、魔人族が滅亡の危機に瀕した「魔人にとって最悪の30年」のことだ。


魔王国最強の戦士であった当時の魔王と従う屈強な魔王四天王、そして魔王国家の軍事力の象徴である魔王軍団。巨大な要塞城、戦略都市。

それらが3度の厄災によって塵も残さず消え去ってしまった時のこと。


最初に魔王国を攻撃したのは神の大軍。

魔人の強さの象徴であった魔王が天罰という名目で討伐されたことに端を発する。

当時30万もの魔人軍団のほぼ全てが神軍に討伐されたのだ。


次に魔王国を襲ったのは勇者一行とその後に続いた人族の軍隊。

対するは魔王四天王と魔王軍残兵8千。広大な魔王領を守るには戦力不足であり要所は次々と人族の軍隊に占拠されていった。四天王が勇者に討たれたことによって魔王軍という軍隊は世界から一度消滅する。


この2次災害までに3年が過ぎていた。

しかし残った魔人族にとってはここから長い苦難の日々が始まった。

全ての武力を失い逃げ出した魔人族へ人族の略奪と悪魔族による殺戮が執拗に繰り返されたのだ。

最も長く凄惨な3次災害の期間でのできごと。


チリヂリに逃げた魔人たちは誰も見向きもしない森の奥深くへ、極寒の山脈へ、孤島へと少人数でひっそりと身を潜めた。生き残るために。


そんな集落にひとつの噂話が流れる。

魔人たちを救ってまわる最強パーティの噂だ。

神に、悪魔に、人間に襲われて壊滅の憂き目にあっている魔人の集落を助けて回るパーティがいる。

彼らはどんな敵の前であろうとひるまず立ち向かう。

先頭に立つ最強の魔人を筆頭にメンバーは核激魔法を放ち、大地震を起こし、剣の一振りで数百の首をはねる絶対の強者パーティ。


空腹で腹をかかえて立ち上がることすら覚束ない子供たちが目を輝かせて大人たちに語るのだった。

そして。

聞いた大人たちは悲し気に子供を抱きしめ涙を流して詫びるのだ。


そんな噂話は魔王国壊滅から何度も流れてきた。


王国最強の将軍が実は生き残っており、秘密裏に魔人たちを救い再起の声をかけてまわっている。

魔王直属の秘密部隊が今も世界に散った魔人たちを救おうと暗躍している。

軍部の極秘部隊が魔王から託された財産で軍事力を蓄えて反撃の機会を狙っている。


そんな噂話は山ほどもあり、その都度大人たちは「どうせ」と口で諦めながらもいつか救われると一縷の希望にすがって生きてきた。しかしそれが20年も続けば骨身にしみる。

夢も希望もない。自分たちだけではない、子供達にすら閉ざされた暗黒の未来しか見えなくなっていく。


気付くのだ。

何の希望もない自分たちに誰かが生み出した優しく残酷な嘘であることに。

そんなヨタ話さえもなければ自分たちが生きていけないことに。


「こんどはっ・・本当だと、いい、な・・っ」


ウンウンとうなずく子供の頭を抱きしめて歯を食いしばる。

希望にすがろうとする子供にこんな情けない顔を見せられない。

いつか生まれるホンモノの希望が聞こえるまで子供たちを守る。それだけができる精いっぱいなのだから。


「今度はホントだよっ!となりの集落の、そのまたとなり集落に来ていた放浪魔人がリンゲルに立ち寄って聞いた話だって!!」


「はっ・・は、は・・・そうだな、そうだといい」


こんな話を聞くたびに語る相手が遠ざかっていく。

誰かの誰か、誰かの誰かの誰か、知り合いの知り合い、が見た聞いた話、聞いた噂話・・・


絶望が心をベッタリと塗りこんでいく。

闇が心をビッタリと覆っていく。光が入る隙間をうめていく。


もう心は希望に縋る力さえ残らず、絶望の中で子供の笑い顔を見ることだけが灯る残り火だ。

でももう。この先なんて。


「最高の絶望で満たされた魂に育ちましたわね。今日のメインディッシュにぴったりだと思わないかしら?」

太く蔑みに満ちた笑い声が響く。


振り返ると自分の何倍も大きい悪魔がこちらを覗きこみ品定めしているのだった。



今週から5話ほど<幕外>シリーズの予定です。

幕外は今の大魔王様の世界につながる「昔のお話」今回はど真ん中の「魔王国建国前」「当時の魔人グラディウスのパーティ」について。

笑い少なめで描写が若干残虐になりますのでお嫌いな方は読み飛ばしてくださいませ。本編には影響しません。

主要メンバーの若かりし活躍を描いた冒険です。ぜひお楽しみくださいませ。


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