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大魔王様ついてきます! ~ 最強の部下は大変なのです ~  作者: 水砲


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48. 大魔王と新人秘書の1日

「大魔王様本日はよろしくお願いしますっ!」


3か月ほど前アンジェリカに連れられてきた少女が今日から独り立ちをする。

役職は第二秘書。名はビャクカ。


長い白髪をまとめ銀の瞳を持つ少女。ピシリとした白銀のスーツには魔王国旗と同じく金の紋章が入っており、品位の良い印象を与えることに成功しておる。さんざんアンジェリカに相談したであろうことがわかるチョイスである。

アヤツは異常なまでに「大魔王秘書」の役職に固執しておるから。


後輩の育成を秘書アンジェリカに指示してからはや1年も経つ。

募集と確かな筋から紹介に面接面談と調査。仮採用を経て本採用の研修期間。

完璧主義者のアンジェリカからもついに認められ独り立ちとなったのである。

彼女もこれで立派な大人そして社会人といえよう。


本日アンジェリカは公休である。1年を超える連続勤務に終止符を打った。それも絶対的な休み。

なぜなら彼女は本日魔王宮への登庁が禁止されているのだから。魔王宮中に触れを出した正式な通達である。

そうするよう勧められたのは不本意である。だが秘書アンジェリカはそうまでしないと休まないのだ。


第二秘書にとって上司もおらず遇する上司は最強大魔王。プレッシャーがあるだろう。

うら若い乙女であり繊細な心(ガラスのハート)が打ち震える年頃だ。

明日のアンジェリカには申し訳ないが、今日の業務は急ぎ案件だけに絞りゆるりと進めていくべきである。


「さてそれでは始めるとしよう。まずは緊急の案件から片づけ・・・」


「はっ!本日集まった案件は1,356件、そのうち重要案件が54件。緊急性の高いものは2件でございますっ!」


おおっワレの思いを先読みして見事に分析し報告をくれておる!

第一秘書アンジェリカ見事なり、お主の教育により部下は立派に成長しておるぞ!


若干ワレの言葉にカブったが新人としては上出来である。気にするものではあるまい。


「そうか、ではまずその2件の情報を・・・」


「はっ!1件目は先般の豪雨によるアマデウス河川沿いの緊急護岸工事、2件目は魔王国と人族世界の境界大森林における魔物の大量発生(スタンピード)です!」


合格だビャクカよ!


端的にわかりやすく内容を報告を大きな声でハッキリと、ワレ納得!

またもやワレの言葉にカブったがそれも若さゆえの先走りであろう。

彼女をみれば誰もがわかるはずである。楚々としておれば高貴な家柄のご令嬢かという容姿であるくせに、直立不動で天井に顔を向けてツバキを飛び散らせ必死に報告しておるのだから!

緊張しておるし必死なのだ、こんなもの応援するしかなかろうが!


「よしまずは護岸工事であるが・・・」


「はっ!ジルベスト宰相経由でベノン軍団長管理下の軍部建設部隊に工事を手配中でありますっ!宰相に特別予算の許可もいただきましたっ!」


う、うむ。

確かにワレが魔王国民の生活を脅かす水害を放置するわけはないのである。


こんなもの「いますぐとっかかれやるぞ魔王軍っ!」しかない内容ではあるのだが、単独任務初日でこれは独断専行がすぎるか?

報・連・相をすっとばして結論ありきであるまいか?


いや待つがよいグラディウスよ、お主は大魔王だろう。

部下の自主性を重んじて次代の魔王国へと繋がる希望の灯火を()けることも役割である、やる気満々の新人の出鼻をくじくのがお主の流儀か?

しかも相手は緊張しっぱなしの新人秘書である!


よく思い出すがいい、ビャクカは秘書アンジェリカの愛弟子と言うべき存在。

アンジェリカであればこの案件は既に工事が始まっていてもおかしくない、いや大半の工事を終えて「既に住民への危険はございませんわ?それよりそろそろご休憩をとられてはいかがでしょうか。本日は料理長ヤヒチの新作菓子が届いておりますので」まだ朝一番だというのに休憩を呼びかけ平然と笑いかけるのが常なのだから!ビャクカはむしろ丁寧といえるのではないか?


「う、うむ。その件はそれで進めるがよい苦労であったな。では2件目のスタンピードであるがワレが赴こう。なに一時(ひととき)もかからぬであろうよ。しばし待つがよい」


今度こそはカブせてくることもなく、ビックリした顔つきでこちらを見つめるビャクカ。

新人の彼女には展開が早すぎてついて固まってしまったか。悪いことをしてしまった。


だがワレは大魔王。

魔王国民の安全を1秒でも脅かされるのは我慢ならぬのだ。

ワレの秘書としてぜひ知っておいて欲しい熱き想いである。


立ち上がり執務室を見渡してもマントや魔剣が見当たらぬ。

アンジェリカであれば立ち上がろうとした瞬間にはワレにマントと魔剣を装着してくるのだが。

装備なぞ無くてもスタンピードなぞ問題はないのだが、あまり長いこと振るわないとスネるからなアレらは。

そのあたりの塩梅もまたアンジェリカの気配りに含まれるのだ。


第二秘書ビャクカのそばを通り過ぎる際に肩をポンポンと二度ほど叩き、部屋の片隅にある装備庫の扉を開ける。

肩の力を抜くがよいお主はよくやってくれている。

護岸工事の件をお主が手配終わらせたおかげで今すぐスタンピードの対応ができるのだからな。


マントを自分でかけようとすると、ビャクカの瞳には涙があふれ今にも零れ落ちそうだ。

後はまかせるがよい、お主は十分に良く働いてくれたぞ!


「ス、スミマセン!!魔物の大量発生ですがワタシの方でヤっちゃいました!!!!!!!!!」


おや?


「大魔王様の出陣案件なんて思わずについっ!ついっ!!魔物10万体は大魔王様の出勤前に殲滅しちまいましたっ!!!!!」


うむ。

うむうむ。


うむむむむむむ・・・?


「わ、わ、わたくしの首をお納めください、死んでお詫びいたしますっ!!」


隠しから飛び出した短刀の刃をクビにあて、頸動脈を掻き切ろうとしたところで大魔王に止められたのは言うまでもない。



ビィーーッ!

ビィーーッ!

ビィーーッ!

ビィーーッ!


「こ、この警報は何でしょう大魔王様!?」


警報音が宮殿中に鳴り響く。

昨日設置したばかりの探索装置にいきなりひっかかるかあのバカ者が!


「大魔王、あんたの秘書ってバカなの?ねえ彼女脳みそついてんの?ボクが本人に伝えたの見てたよねキミ、アンジェリカの生体オーラに反応する警報機を城中につけたから絶対に来るな来てもすぐわかるんだからねって!それとも何かい、あんな若造秘書が天下の大魔導士と呼ばれるボクお手製の魔道具を(あざむ)けるとでも?ずっいぶんと自惚れたもんだね、ハンッ!ボクは寝てたんだからね、あとは自分で何とかしてよねっ!!」


緊急念話がガンガンとワレの頭に響きよる。

魔導科学庁長官ジュディアーナ、通称マッド・ジュディ。

彼女がその膨大な魔力を念話程度に容赦なく注ぎ込めば、耳傍(みみそば)にハンドマイクをピッタリつけられて最大声量でガナりたてられるのと変わらぬ。

いっさいの遠慮なし。まさにブチ切れておる。

夜型の彼女からすればまさに午前中のこの時間は寝入りばな、ベットに入ってヒプノスに誘われた瞬間にたたき起こされたのと同じ。誰しもがそうなるであろうスマぬ。


「ビャ、ビャッカ!!やりすぎちゃダメなのよ秘書に大事なのは気配りなのっ!!なんでもかんでも終わらせりゃいいってもんじゃないんだから!!!あのコあんまり仕事の覚えが早いからついそっちばっかり教えちゃったけど違うのよ!!」


秘書アンジェリカ。

お日様が天中に上る前、魔王宮の回廊を疾風のように突き進んでいたところを魔王軍団長ベノンとその補佐役ゼブブの連携により捕縛される。


「あんた何やってんのよ・・」


女性同士ということでゼブブがアンジェリカの尋問を始めた第一声がこれだ。

アキレ顔のゼブブに対して、大魔王秘書は必死の叫びを上げたのだ!


「だ、大魔王様秘書の心得その2。大魔王様を一瞬でも不愉快にさせたら自害っ!間違いなくやっちゃってるわ!」


いつも冷静な秘書らしからないガクガク震えて真っ青な顔のアンジェリカ。

悪魔であるゼブブには不思議でならない。

大魔王は「話せばわかる」タイプだと感じているだけに、取り巻き連中の圧倒的なマジメさにたまに辟易するのである。ベノン以外が対象なのは言うまでもない。


「だから何?別に新人秘書ちゃんが何をやっても気にされる大魔王様ではないと思うけど?」

優雅な自分を譲らない彼女も、同世代で自分に近い強大な力を持つ同僚の異常行動にホトホト呆れている。

言葉遣いに優雅さのかけらも含まれない。


「街を散歩してたらビャッコ師が!妙にスッキリした顔で歩いてたから聞いてみたら『娘の仕事を手伝ってきたが久々に満足だ』って!きっと大魔王様の出番とっちゃったに違いないわっ!これは彼女の責任じゃないワタシの責任よっ!こうなったら今すぐこの場でっ!!」


袖から暗器が降りてきたところでアンジェリカはガクリと首を垂れた。

悪魔軍のNo.2を誇る洗脳術をもってすればアンジェリカすら圧倒する。意識を刈り取るなぞお茶のこサイサイなのだ。

彼女の手に握られるハズの暗器がそのまま床にカランと転がった。



魔王宮に許可なく侵入した罪人アンジェリカ。

宰相ジルベストによる再度の秘書教育受講の後に強制休暇1週間。破れば今度こそ秘書資格はく奪の処分。

休暇中はジルベストが宰相兼秘書役となりその補佐としてビャッカを任じる。期間内にビャッカ第二秘書の教育修正も行うこと。


「ガッテームッ!!」

怒りで額と口からシュウシュウと蒸気を噴き出しながらジルベストの「再教育」を拝聴する体のアンジェリカ。もちろん聞いちゃいない。

クソじじいにアタシが教わることなぞ何もねえっ!狂犬状態である。

そして終わった瞬間にどこへ行くとも言わずにいなくなってしまったのであった。


かたやビャッカ。

泣いて詫びる彼女を慰めるところから始まる秘書教育。

実はジルベストはビャクカを幼いころからよく知っており、裏で彼女を第二秘書に勧めたのもまたジルだ。

直接彼が紹介してしまうとそれだけでアンジェリカから拒否されてしまうため、あえて人を介して裏で内密に。


「ズ、ズビバセンッ!ジルベズド様ああぁぁーー!魔王様に無礼を働いた上にアンジェリカ様の心得も守れませんでしたあああぁぁぁ!もうワタシなんて、ワダジなんでっ・・・!!!!!」


「まあ落ち着くがよいじゃろう。お主はよくやってくれたと大魔王様もお褒めになっておったんじゃから。アンジェリカもまあ・・・自分の教育に手違いがあったことを認めておった。お主が責任を感じることは何もないのじゃよ」


「そんな、ぞんなあぁぁみなさんやざじずきますうううぅぅぅ一生ついていきますううううわーーーーーんんっ!」


大声で泣き出す少女を必死で慰めるジルベスト。おじいちゃん役が板についてきたことに本人は気づいていない。

なおアンジェリカがこの娘の上司であるため「間違い」ではなく「手違い」と発言したところからも配慮はしているらしい。


「ところで教えてくれぬか『大魔王秘書の心得』とやらを?アンジェリカが秘書役に就くまではそんなもの存在しておらんかったのじゃからな!!」



成人された方おめでとうございます

差し込みました


このお話が明日消えてたら幻だったということにしてくださいませ

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