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大魔王様ついてきます! ~ 最強の部下は大変なのです ~  作者: 水砲


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45. 極秘ミッション潜入

深夜。

魔王宮の最も奥まった辺り。


灯りも碌にともされていない暗い廊下を二人の男が進む。

片方の男がステッキで床を打つ音だけが響きわたる。


先導する男はシルクハットにモーニングコート、コールズボンにワイシャツ・シルクのネクタイ、ポケットチーフ。まるで王宮の最上級の儀式にでも参加するような礼装の身なり。

そんな老紳士が陽気に鼻歌を歌いステップを踏むように先へ進む。


「やあ申し訳ないね。暗いだろう」


自身はなんの迷いもなく進む足取り。この紳士が只者ではない証。


「問題ない。俺もそれなりに夜目がきく方だ」


魔王軍では数々の深夜行軍に随行した経験がある。

足元にツタが延びているのか穴が開いているのか泥沼か、しかも頭上から大量の毒蜘蛛が糸を伸ばして待ち構えているとか大蛇が木の枝からとびかかろうと狙っているとか。そんな危険な作戦を何度もこなしてきた。

それにくらべればピクニックでもしている気分だ。

暗いというだけで足元は整然といるし襲ってくる闇の生物もいない。


「ここだよ」


ハットを小脇にかかえて紳士が扉を開いた。

煌々とした光がまぶしく眼を細めてしまうが視界を失う失態はおかさない。

そこには魔人だけではなく妖精やエルフに獣人と多種雑多な種族のものが忙しそうに行き来している。


「やあ。きみがガストンくんかい?大魔王から聞いてるよ」


ひとりの女性研究者が足を止めこちらを振り向いた。


「ハワードくんもお疲れさん。ガストンくんとは今後も縁があるからね、よろしく頼むよ」


ハワードと呼ばれた老齢の紳士は優雅に礼をしてスウと消える。


「ここはどこでしょう?」


親しみのもてる女性研究者の笑顔。

丁寧に質問するとニンマリした怪しい顔に切り替わった。


「ココはあなた達が裏魔王宮って呼んでる夜の執務室だよ。ボクはキミの上司でジュティアーナ。研究者だよ」


ジュディアーナという印象的な呼び名が頭にフックをかけた。

決して楽しい思い出ではない、遠い昔のなにか。

痛い記憶が引きずり出されるのは気のせいではなかった。


「研究者、ジュディアーナ・・・・・って、マ、マッド・ジュディ!!」

「久しぶりだね?100%くん!」


思い出すのはさも当然と言わんばかりに、マッド・ジュディと呼ばれた女は下弦の三日月のように細く怪しい笑みをたたえた。

へびに睨まれたカエルが感じるほどの圧力が発せられガストンは逃げられない定めを悟る。


マッド・ジュディ。


伝説の旧魔王パーティで魔王と共に闘った大魔導士。

パーティ内では豊富な魔力と妖精の力を借りた大魔法を扱う自然系魔法の超高位者。

大魔導士であり大魔法使いではない。大魔法使いとよばれたパーティメンバーは別にいたからだ。


彼女は絶えず森羅万象の秘密を探り続け、新しい魔法や魔術を探求し続けることに生きがいを見つける研究者。どんな危機に晒されようとも変わらない。パーティメンバーの命はもちろん、100万都市の存亡に関わる闘いであろうとスタンスが変わらない筋金入り。


彼女にとってあらゆるトラブルは研究成果を図る実験場に過ぎないのだ。

壮大な実験は時に大成功して空中の悪魔軍十万を一瞬にして燃やし尽くし、時に大失敗して魔王国第二の都市グリンランドを数十万の市民ごと水没させようとする。


常軌を逸した実験とその際の言動から付いた呼び名が「マッド・ジョディ」


彼女の最大のラッキーは大魔王との出会ったことだ。

壮大すぎる実験で研究成果を試せるのは唯一魔王の元だけであったのだから。


「さてガストンくん。さっそく実験につきあってもらおうかな?」


そこには先日大魔王の執務室から突き返された洋式トイレ型の椅子が鎮座していたのだった。

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