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大魔王様ついてきます! ~ 最強の部下は大変なのです ~  作者: 水砲


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42. 出会ってしまった三人と1人 その4

「ところで大魔王よ」


トーンが変わり落ち着いた声で悪魔王が問いかける。


空気を凪らせたのは話しを変えたいのであろう。

もちろん落としどころを探るためは間違いない。


このまま女悪魔を滅するのは惜しいと思惑が透けて見える。

非道と呼ばれようとも自分なりの筋は通すのが王のあるべき姿。


「なぜこの場に勇者"どの"がおわすかの?」


勇者の力は神族から人族に与えられる奇跡。

全種族の中で最も弱い人族へ神の救いとして授かる奇跡。悪魔や魔族を打ち破る力と民を守護する宿命を与える。

勇者からすれば悪魔王も大魔王も宿敵だ。


勇者ベッチーは悲壮な覚悟で悪魔王を睨みつけた。


二人には絶対的に敵わない力量差があり、それはベッチー本人が一番にわかっている。

しかし逃げることはできない。勇者としての宿命が彼女を駆り立てるからだ。

神は勇者に逃げず退かない宿命を魂に焼き付けており、悪魔王を目前にして逃走する選択肢がベッチーにはない。


それをわかっている悪魔王が確認したのだ。本人ではなく大魔王へと。


「勇者キャサリン・ベッシリーニはワレに仕えし臣下である」


大魔王の宣言する声に悪魔王はわざとらしく驚く。

ベッチーの周囲に張り詰めた神の意志は緩和し、彼女は呆然と魔王を見つめるしかできない。


「人族の勇者が大魔王に仕えるか?勇者としての役割を放棄するとはどこかの悪魔と同じじゃな」


勇者の宿命も絶望も関係ないとばかりに悪魔王は続ける。

神の意思で動く勇者なら瞬殺するが、この勇者は大魔王が認めた配下。

宿命など関係なく大魔王がこの勇者を縛るのであれば、悪魔王が気にする相手ではない。


勇者ベッチーは緊張した面持ちでことの成り行きを見守り続けた。

いざとなれば人族と悪魔軍の全面闘争が始まるのだから剣をにぎる手のひらにも汗がにじむ。


「勇者の持つ宿命なぞ神が因果を保つための役回りに過ぎぬ。囚われるのは神を妄信する愚か者であろう」


勇者ベッチーの頭脳にはびこる神の宿命回線がパチンパチンと切られていく。

爆弾処理で「青か赤か?」2択でブチ切る配線のように。


「くっくっくっそう言い切れるのはお主の傲慢であろうが。では大魔王よ?お主は人族と手を組むつもりかの?」


さすがに悪魔王は漠然を許さぬ。

悪魔軍総司令官をどうするか決まらぬ状況で人族と全面戦争が目の前なのだから当然。


「勇者ベッシリーニは我が配下となりしもの。ワレは他の臣下同様にこの勇者へも守護を与えるであろう」


勇者ベッチーが目を見開いてこちらを見るが当たり前のことだ。

お主はただ一人で魔王国へとに赴きワレの心核に触れ、配下として与えた役割を果たしておる。臣下でなかろうはずはない、そして臣下を守らぬワレではない。


ワレが遇するは魂の深淵でありそこに見た目も性別も種族も関係せぬ。

己の魂でワレに触れてくるものを拒むことありはしない。


「しかし今この時に臣下である人族は勇者ベッシリーニだけである。ワレが守護を与える人族もまた勇者ベッシリーニのみっ!」


我はココに集う臣下たちの王。

王として守護するのは配下と認めた者だけなのだ。


「ほう。本来宿敵である勇者も人族もお主は歯牙にもかけぬ。そういうことであろうかな」


「いかにも。我が深淵に届くもの拒まず、我が魔王国に敵対する如何なるものも許さぬっ!」


滔々と続く問答は悪魔王にとって好ましいのであろう。

厳しい表情はいっさい変わらないが、相手を刺し殺す空気が和らいでいく。


「くくくくく。それはお主が絶対強者であるから言えるのであろう。ワシも肝に銘じようぞ。では悪魔軍総司令官ベールス・ゼブブよ!」


「はっ!」


「おぬしの悪魔軍総司令官の任を解き情報統括長官を任ずる!魔王国に出没する勇者の動向及び目的を把握し、魔王国と人族の関係を監視しせよ!なお魔王国潜入中は大魔王の臣下としてその信頼を獲得し諜報活動へと活用するのだ!!」


「ハッ!!!!!!」


悪魔軍総司令官改め情報統括長官ベールス・ゼブブは、深く深く優雅にそのコウベを垂れた。

頭を下げ続ける彼女の影にポタリポタリと輝く涙がシミをつくる。


「もちろんいいじゃろうの?大魔王よ」


片をすくめる大魔王。


これほどあけあけっぴろげに情報収集する相手へと啖呵を切った諜報活動もあるまいに。

言うにことかいて本人の前で「大魔王の信頼を獲得しろ」だ。


あきれた素振りでうなずく大魔王の瞳が楽しげなのは悪魔王しか気づいていないが。


これで悪魔王は人族に楔を打ち込んだことになる。

今この場所で魔王国と悪魔国は実質的な休戦協定を結び人的交流を行ったのだから、勇者を差し出した人族より遥かに強力な盟約が結ばれたのだ。


「ワレがその魂を認めた臣下を拒むことはない!二言なし!!」


魔王国軍団長ベノンと魂を分けあう悪魔ベールス・ゼブブが大魔王の臣下となった瞬間であった。




すげえぞ。あのカオス状態にカタがついちまった。

大魔王様が見事にさばき切った。


魔王国は悪魔軍のナンバー2を取り込み、悪魔国は大魔王にすり寄る人族をけん制した。しかも最強の悪魔を魔王軍に潜入?させた。

それだけじゃない、これはつまり実質的な休戦協定だ。なにせ悪魔軍が魔王国を襲撃すればベノン団長が応じるしそして団長に敵対する相手は最強悪魔の敵になるんだから!

もしかしてベノン団長が最強になったってことかコレ?

二人は離れることがないらしいからワールドクラス二人のニコイチがワンセットってことにならないか?


勇者ベッチー本人にとってもマイナスはないだろう。

悪魔と人間の大戦争を回避することができたんだから。

大魔王様が直々に配下であると宣言してくださり悪魔王も認めた、そんな勇者世界で初めてに違いない。


今回の会談で唯一追い込まれたのは勇者ベッチー以外の人族だけ。

彼女を魔王国へ派遣した宮廷の政治家達はビックリするに違いない。


勇者ベッチーについては忘れてはならないことがある。

大魔王様は人族では彼女のみを庇護すると断言した。ではもし彼女が人族の王であれば?

戦うベッチー王を大魔王様が庇護すればどうなる?


勇者ベッチー。

本人は気づいていない。

実は人族での立場が爆あがった会合であった。

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