37. 後始末
「それでどうするつもりじゃ?」
フードを深くかぶった老人が不機嫌そうに問いかける。
"大魔王ズ・ホットライン"
今日も今日とて悪魔王との直通会談が続く。
悪魔王は割と気楽に使うこのホットライン魔法。実は世界が危機に瀕した際のみ使用できる。
世界が危機であると「神が定めた合理」が判断した場合のみ顕現するのだから、滅多に発動できるものではない。
しかし先に勃発した「悪魔軍第一師団の魔王国襲撃事件」から度々使用されているのだ。世界の趨勢は神ですら先行き不透明なこと示している。
そんな激動の状況においてしかめっ面の大魔王の口角が2ミリも持ち上がっていることに気付く者はいない。
悪魔王と通話の途中であるにも関わらず心が沸き立ちニヤけてしまう大魔王なのだ。
今まさにわが魔王軍団長ベノンと悪魔軍総司令官ゼブブの邂逅が世界を揺らしているといっても過言ではない。
若者の成長と次世代の台頭。胸躍り心核のタップダンスが弾けておるわっ!
タン・タタタン・タタタンタタンっ♪
タップシューズの金具が連続して床を打ち付けるように感激が心を打ち続けるのだが。やはり気付く者はいない。
「わしもな?」
心中で盛り上がる大魔王とは対照的に、大層つまらなそうに悪魔王がグチりはじめた。
「ゾルトまではしょうがないかと思うておったんじゃ」
悪魔軍第一師団の司令官ゾルト。
守るべきもののために独断で魔王軍に攻め込み全滅した漢。
将来魔王国で幹部になるであろう。
しょうがないと言う割に悪魔王はいちいち忌々し気に吐き捨てる。
よほど腹に据えかねているに違いなかった。
「独断とはいえ悪魔軍が魔王国を襲いおったし。お主は悪魔軍内部のウミを顕在させてくれおった。国を代表して詫びと礼が必要な事案じゃ。」
しおらしく頭を下げるこの悪魔はそんなことをするタマではない。
フードの下では次の企みを算段したニヤけ顔に違いない。
「大したことではない。ワレが信義に基づいて動いた結果である。」
悪魔王はニヤリと嗤った。
「では問おう大魔王よ。おぬしからの誘いにのってゼブブをけしかけたものだが、そのままゼブブを引き抜くのは信義に悖るとは思わんかの?」
世界とはその命運を生ける者の感情に委ねることが好きなのであろう。
創造者の嗜好を反映して脈動しておる。
全てが森羅万象の法則と合理で世界が動くのであれば争いは起こらぬ。しかしそれは神の国であり魂の深淵が欠けている。
ワレらは自分の手で大切なものを掴み足を踏み進もうとするからこそ、魂の奥底が震えるのだ。
魂に従って行動する我らに予定調和なぞクソくらえだ。
悪魔王はこう言いたいのだろうよ。
”うちのナンバー・2を勝手に引き抜くってどういうこと?どうやって落とし前をつけるつもりか教えろや?”
うむ。
突然ふってきた問いではあるが我には問題にもならん。
心沸き立つ若者二人が結びつくのだ、それは世界にとって新しい春でなければならぬ。
目出度い未来を祝福するのが我の役目である。
新春に向けてお目出度い話にしたいです。
何でもよいので足跡残していただけると嬉しいです。
誰の足跡もついていない真っ白な雪原を踏んでみませんか?




