35. 未知との遭遇 2
「くっくっくっくっく!」
面白い、面白いぞわが秘書・・いや模擬戦挑戦者アンジェリカ!
見事に勇者をふっとばしおった!
久々に我が深淵の愉快なヒダがブランブランと揺れおったわ!!
ここまで深淵をゆらされたのは何時以来になろうか。
まったく油断ならん。
そうだ、我が親愛なる忠臣たちよ、我は完璧なぞ求めておらん!
自分の感情に、技量に、力の無さに、壁にあたり、もぎかき、そして見事に乗り越えてみせよ!!
もがき、苦しむ様がどんなに滑稽であろうと、シュールであろうと、黒歴史となろうと、それは問題ではない!
その先に高見を望み、追い求め続けることが魔王国の未来を作るのだ!
シンと静まり返った演習場。
ピクリとも動かない勇者殿をみてその場の全員が固まっている。
なにがあったんだ?審判の俺ですら、一瞬で何があったかわかんなかったっつーのに。
ツラツラッとまわりから念話が入る。
「ダン師団長、どうするんすか、これっ!」
こいつらはこの騎士がアンジェリカ様だとは気づいていない。
気づいていないが、模擬戦での戦いで達人クラスだと気づいている。
中にはこの騎士が誰か、を予想で賭けあっているやつらもいたようだが・・・
戻ってきたけどいなかった間の実力を確認したいベノン団長説。
戻ってきたけど勇者殿に立場を奪われて出るに出れないのでここで力を見せたいガストン副官説。
この2つが有力候補で、あとはジルベスト宰相が魔術で鎧を操っている説、体格が合わないのはわざとハンデにしている裏番アンジェリカ様説、昔大魔王様とパーティを組んでられた伝説の剣豪ビャッコ様説、実は料理長ヤヒチが包丁を模擬刀やランスに替えても強かった説・・・・正解からそんなバカなまで多様な予想が飛び交った。
しかし、みんなが固まってんのもしょうがねーっつーか。
勇者落ちてるし。
それより、なんでアナタも固まってんの?
「・・・姉さん、どうするんすか、これ・・・・」
俺の念話ではっと気づいた気配があったけど、鉄仮面の中の表情は読み取れない。
しかし、何かを達観したかのような。
やがて鉄仮面の騎士は、まるでそれが当然のように振り返った。
そして・・入ってきたときと同じように、ガシャン、ガシャンと練兵場から出ていった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ったー!!!」
まだ絶対念話が聞こえているハズなのに、いっさい返事がない。
いや、困りますってこれで放置されちゃ!
何度も何度も何度も念話を繰り返した末に、極微小な念話がやっと届く。
「・・・察してくれ・・・」
そうですか。
つまり姉さんにしても、やっちゃった系、ですか・・・
って、これどうするんすか、やっぱりちょっと待って!




