27. 地獄の修行 2
竜王の元に魔王軍の特訓部隊がたどり着くその半日前。
時を同じくして悪魔軍ベールス・ゼブブが率いる精鋭部隊もまたセイサン山脈の頂上んに住まうと聞く竜王の元へと向かっていた。
私ご自慢の部下を引き連れて空中を突き進む。雪交じりの豪風が吹き荒れ近づくにつれてチリチリと皮膚が毛羽立ち背筋に冷たいものが伝う。
神も悪魔も近づくことができない竜王の居城。
特殊な結界と厳しい自然に守られた鉄壁の要塞が待ち受ける。
はるか昔に悪魔王様が軍を率いて攻め入った際も結局は撤退されたとか。
「ワシひとりで行けばよかった」
そのつぶやきの意味を知るのも今となっては悪魔王様だけ。僅かな生き残りもすぐに息を引き取った。その後悪魔王様から「あそこは放っとけ」指示がでることになる。
現在は大魔王の支配地域となっているために手出し厳禁の聖域になってしまった。
ガゴン、と体が大きくはじかれた。
今のは何でございましょう?
山脈の守護結界でしょうか激しい衝撃のあとから一切の魔法が効かないですわっ!
「ほ、ほほほほほほほ」
ふ、浮遊も飛行もきかない、こんなこと許されない、わ、私が落ちていくなんて!!
あれれれれえぇーーーーーーー
小隊30体。わたくし自慢の精鋭たちも壁に突き当たり落下していく。次々に墜落して雪山に落ちていく悪魔軍。
何が起こったかわからずにもう一度飛行の魔法をかけようとして気づく。
ま、魔力が放出できないっ。
私だけではないようねっほかの将校たちも慌てふためいているのだから。
「ま、魔法がきかない!どうしたのだ!」
気を抜くと体から急速に力がぬけていく。
なんでしょうこれは。
おそらく何らの加護がこの地に働いているのでしょう。ですがこのままでは下手すれば全員が滅してしまいますわ!
悪魔は人族や魔人に比べると受肉はしているがその本質が霊体に近い。
悪魔にはこのセイサン山脈特有の吹雪やマイナス50度の気温、足を突き刺す吸魔石の痛みなど露も気にならない。
しかし神や悪魔から竜族を守護してきた竜王の守り。悪魔には悪魔でまた効くのである。
彼らにとって肉体は世界に接触するための仮の姿でしかない。本質を構成するのは霊力や魔力。その点で悪魔は神と近しい。
今この瞬間も悪魔たちは吸魔石にその根源である魔力を抜かれ続けているのだ!
魔人と違って痛みを感じない分足元に気付かず、余計に「なにがなんだか!?」大慌てである。
「ゼブブ総司令ご指示を!このままでは我が部隊は壊滅します!いかがいたしますか!」
優雅さを捨てるヤツはキライよ。
悪魔は騙り、虚ろわせ、狂わせる存在。
必要なのはセンスと余裕。
敵の深淵を手のひらで転がすのが私たちの本懐。
焦るのは敵で焦らすのが私たち悪魔。
そんなこともわからないなんてコイツらも使えないですわね。
魔力が猛烈に吸収され体が薄れているようだけど。知ったことじゃあないわ。
「目指すは頂上!遅れずについてきなさい!」
誰からの返事が無くても許してあげる。
体が残っているのは私だけなのだし。




