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大魔王様ついてきます! ~ 最強の部下は大変なのです ~  作者: 水砲


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25. 秘書アンジェリカの憂鬱

「よろしいのですか、大魔王様」


我が秘書アンジェリカは最近我にいろいろと問いかけてくる。


以前までの先回りして完璧にこなすのではなく、確認を行うようになったな。

訪れた勇者が影響しているのは間違いない。


これまでの聞かずとも完璧、であった秘書が揺らいでいる。

生きとし生けるすべてのものがそうであるように、鏡のように平面であった感情が波打ち、揺らぎ、惑う。

乗り越えてみせよ、大魔王秘書アンジェリカ!

楽しみに待つ。

おぬしが更なる高みに昇る姿を!


「否定する理由があるまい?わが同胞アンジェリカ」


「しかし・・・っ」


ほう。われの言葉に食い下がるか。


ここ数年では初めてかもしれぬ。

臣下としては無礼になるが、同胞であれば聞くのは当然だ。


「理由を尋ねよう。」


そのくやしげな顔の理由を考えるがよい。

おぬしは何に対してくやしいのだ?


「なぜ、勇者ベッチーが魔王軍に稽古をつけることにそれほどこだわる?人族の技術を公開し、かつ教練の手法まで披露しておるのだ。わが軍にとって得るものしかあるまい。」


「しかし、教練もみな勇者殿を気にして締まらない様子、訓練において笑い声が出る始末。規律正しい魔王軍とはとてもいえませんわ。」


ふむ。一面を見ればそうみえるかもしれぬが、はたしてそうかな。


「もうしばらく様子を見るがいい。新しい刺激に対する皆の反応もなかなか見ごたえがある。」


「はっ」



しっかしわかんないわね。


今日も勇者は教練に参加して、みんなにチヤホヤされてるけど。

ちょっと走り込みすれば「つかれたー」「もーだめ、みんなはやいねー」。

それ聞いて背中おしたり肩車したりして走り込みしてるあのボケども。


あいかわらず打ち込みや模擬戦の間には、ちょこちょことアドバイスしてるみたいだから、そこはわかるけど。

注意されるほうがニコニコして、あれって頭にはいってんの?

そんなチビなのに、屈伸してるバカの背中おしたって何もできないでしょうに。「とどかないよー、せなかおっきくてかたいー」。

ぽてっと転んで、「この石ころひどいっ」とか。あわてて起こしにいくバカとか。

見ていると本気でムカついてくる。


これになんか意味あんのか?


それとも、しばらく教えさせるだけ教えさせて、ポイでいいのか?

明らかに訓練に身がはいっていないようにしか見えないが。

大魔王様がしばらく様子を見るとおっしゃったのだから、それだけではない・・・はずだけど。


ただし。

なんかバカドモにしては、動きがよくなってんだよなー。

体力に余裕あるっつーか、技がなめらかっつーか。

アタシの地獄の特訓がきいたか?

しかし、どうもちがうんだよな、動きが。


ぼーっとそんなことを考えていると、いつの間にか訓練が終わっていたらしい。

訓練場には誰もいなくなり、だんだんと夕方になってきていた。

この時間は嫌いじゃないんだ。

茜色の時間。


わたしが大魔王様にはじめて出会った時間。


ボンヤリと日が沈んでいくのを眺めていると、いつの間にか暗くなっていた。


仕事にもどろうと立ち上がった瞬間、鍛錬所に松明で灯りがともされた。


今日はもう全ての練兵が終わり、ここを使うことはないはずだけど?


ゾロゾロと戦士たちが出てくる。

いくつかのグループに分かれて、模擬戦を始めるらしい。

もう勇者はいないから、ただの自主練か。


ガチン、ガチンと戦士達が切り合う。

まわりには審判ひとりと、取り巻いて応援するギャラリー。


組合せが決まっているらしく、試合が終わる都度すぐに選手と審判がいれかわる。


ほう、やるじゃないか。


練兵が終わりヘトヘトになった後に全力での模擬戦。


限界までがんばった後にギリギリまで力を振り絞る。

しかも勇者から習ったであろう新しい技を使いあい、実践でどう使えるか試している。


なるほどな。


毎日これをやってりゃ、力もつくか。

いい熱気している。

この後の一杯でもかけてんのか。


闘技場の入り口の暗がりから、そばにいたダンに声をかける。


「おい」


振り返ったダンは、ビクリッと肩を震わせた。


「大丈夫だ。今日は、何もしねえから」

「は、はい、ありがとうございます!」


わたしは、しーっと唇に指をたてて、ダンを暗がりにまねく。


「なんだおまえら、勇者がきて腑抜けてんのかと思ったらがんばってんじゃねーか」


勇者のことを別にすれば、あたしはこいつらのことを見直した。


あたしの中の基準は簡単だ。

大魔王様のためになることか。ならないことか。

なることを頑張ってるやつらは応援する。

ならないことをやるやつは叩き潰す。


「おめーらこの後どうせ飲みにいくんだろ?こいつでいっぱいやっとけ」


全員がたっぷり飲めるだけの札束を出して渡す。


「え?いいんすか、コレ?」

「あたりめーだ。強くなるために必死なヤツラを見たら放っとけねーし。」


ありがとうございますっ!

大切そうに懐にしまうダンも嬉しそうだ。


うまく、アタシからカンパを引き出したとでも言えば、こいつの株もあがんだろ。


「しかしアイツラ・・・随分必死だな。なんだあれ、組合せも決まってるみたいだが魔王軍最強決定戦でもやってんのか?」

「ええ、大会には違いないっすけど・・・あれは、来週の模擬戦の相手決めです。」

「ん?今やってんのが模擬戦だろうが。意味わかんねーんだけど」


模擬戦の相手を決めるのに模擬戦やんのか?


「週末までに一位が決まって、ソイツが次の週の模擬戦でベッチ・・・勇者殿に模擬戦で稽古つけてもらえるんすよ」


・・・

こ、こいつら

エサを目の前にぶらさげられたサルか!


金返せ、言いかけた自分を必死で止める。


こいつらが必死に強くなろうと稽古しているのには変わらない。

勇者が絡んでるのが気にいらないが、それはそれ。


気づくと、うおおおお、と大きな歓声が闘技場から聞こえたから、どこかの組み合わせの勝負がついたか。

しっかし・・アホだなこいつら。


それにしても勇者。


いいのか悪いのかわかんねー。

でもなんか気にいらねえ。


「なあ、ダン」


いつまでもモヤモヤしてんのもあたしらしくないじゃない。


「それ、アタシも参加できるかい?」

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