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大魔王様ついてきます! ~ 最強の部下は大変なのです ~  作者: 水砲


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23. 魔王軍の演習Ⅱ 1

魔王軍の演習で使う模擬剣は、刃をツブしてあり剣というより長細い金属の塊だ。

通常の剣より更に重量があり、素振りを行うだけでも鍛錬となる。

模擬戦では体が小さく軽く力が弱い方が不利になる。


筋肉至上主義の魔王軍団は皆そのように信じているが、それは技量が似通ってる場合だ。


もちろん魔王軍での教練では皆に型通りの技術しか教えないため、結果として似たような技量となっているので間違いとは言えない。

しかしそれは所然(しょせん)狭い魔王軍の中だけに限られることに気付いていない。

圧倒的な技量の差があれば、問題とはならない。


勇者ベッチーと師団長ダンの模擬戦が始まり数分。

何度も打ち合っては離れる二人は、傍目(はため)には接戦に見える。


ダンは師団長、魔王軍ではベノンとガストンに次ぐナンバースリーの実力者だ。

隆々とした筋肉で軽々と剣を操り相手を吹き飛ばす、パワー・ファイター。

彼にとって武器は相手をぶっ叩くもの。


勇者ベッチーはガキンガキンと模擬刀を打ち合る度に力で押され、「きゃあ」とか「わわわわ」とか可愛い悲鳴を上げながら剣を捌いている。


・・・ように、見せている。


たまに打ち出す反撃も、軽々とダンに打ち返されている。

・・・ように、見せている。



「さすが勇者、・・・いや、さすがベッチー、というべきであろうな。」


観覧席から見る模擬戦はなかなかに興味深いものであった。

見る人が見ればわかる。

模擬戦という名の「ベッチー劇場」だ。


その観客にはダンがいて魔王軍団がいてアンジェリカがいて・・・そして大魔王グラディウスがいるに違いない。


剣の技量に格差がありすぎて、この模擬戦はベッチーの教練と化していることに気付いていない。

あれは、わざと相手に気持ち良く攻撃をさせながら、長所を伸ばし短所を指摘している教練だ。


ダンは最初こそ手加減していたようであったが、途中で気づいたようだな。


途中からは本気で岩を砕く斬撃を打ち付けているが、勇者はキャアキャア言いながらも軽く捌いている。


力の差を完璧なる技量で埋めてお釣りが来ているのに、周りのギャラリーは誰も気づかない。


周囲に悟らせないように剣を滑らせ、いなし、力点をズラす。

そしてダンの動作に隙ができると瞬時に一撃を繰り出す。


ダンが防いで弾いているように見えているが、剣先を一度軽く当てた上で止めにして、その剣をダンに弾かせている。

まるで「ここ気をつけろ」と指導するように。


あまりにも瞬間的な動きに、周りにはダンが油断したところを狙われて慌てて防いだように見えている次第だ。


相手によいところを持たせ、かつ学ばせながら剣を振い続けるとは、勇者の名前はダテではない。


さすが勇者。

ダンの上官である副官のガストスでも今のままでは敵わぬか。

軍団長ベノンが敗れることはあるまいが・・・二人が修行から戻るのが楽しみだ。


そして、それを見抜くワレとアンジェリカに対して・・・勇者の技量を見せた上で大魔王からの指示通りに胸を貸している。

もちろん魔王軍の団員に認められ溶け込み、自分のポジションを獲得するまでを見せるつもりであろう。


まさにベッチー劇場、ただの力まかせの勇者にできる技ではない。



興味深いベッチー劇場もいよいよクライマックスが近いであろう。

ベッチーはあと何時間続いても構わんだろうが、必死で恰好つけておるダンがもうヘロヘロになっている。

さて、どうやって終わらせるつもりか?


ダンの顔も立ててくれておるが、かといって勇者が負ける訳にもいかぬだろう。

力がすべての魔王軍、()められては今後動き辛くなる。

強さソコソコで可愛がられる娘ポジションも無くはないが・・・勇者のプライドがさせまい。


ガツンッ


強烈な音がして、刃がぶつかり合った両者の模擬刀は共に粉々に砕けちった。


「きゃああ」

勇者ベッチーは吹き飛ばされたが、何とか辛うじて倒れることなく体制を立て直しす。

・・・ように見せた。


実際にはベッチーはダンに吹っ飛ばされたワケではなく、交錯する模擬刀に両者の剣が折れるまで力を込めて砕き。

砕いた瞬間に吹き飛ばされたように自分で飛んで見せたのだ。

劇団ベッチー、団員は一人で勇者兼女優ベッチーのみ。

両者の模擬剣が同時に折れるようにコントロールし、タイミングを見計らい。

勇者も大変なようだな、イロイロと。


これが人族流の、気遣いというヤツであろう。

単純明快な魔人には馴染み難かろうが、かといって人族の文化を貶めるものではない。

それを実演できる勇者の技量が天晴ということである。


さんざん周りで囃し立ていた魔人達も、今では勇者への賞賛の歓声をあげておる。


「おまえ、やるな」

「三番手のダンさんとあそこまでやれるヤツいねーぞ」

「ダンさん優勢だったけど、さすが勇者だな、引き分けだろあれ」

「あれだけ筋肉力差があるんだからしょーがねーよ、頑張ったよおまえ」

「師団長も最後は結構強めだったよな、よく防いだよ」


勇者に怒りや恨みを持つものも少なくないであろう魔王軍、しかしまるで仲間のように溶け込んでしまった。


「ダンさん強かったーー。やさしくしてっていったのに!!」


ホッとした表情で甘える勇者に、皆顔を緩ませておる。


武を示し仲間と認めさせるだけでなく、さらにもう一つも二つも加えるか。

単純な武人はイチコロ、ベッチー劇場ここに閉幕である!


「あっ・・・ああ・・・、もう何も言わねーから、みんなにも色々と教えてやってくれ・・・」


ダンの背中から男の哀しみがあふれておる。


圧倒的な武。

信念ともいえる筋肉への絶大な信頼が崩壊したことによる虚無。


自分の立場を壊さぬように情けをかけられた、そのことに腹を立てることすら敵わない圧倒的な実力差。


学ぶが良い、ダンよ。

器は大きく持つものだ、世界は広く果てしないのだ。


お主が遠からぬ内に、ワレの片腕となる日を待ち望んで止まぬ。


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