20. 勇者来訪Ⅱ 2 (side:勇者ベッチー)
勇者ベッチーが大魔王の臣下として宣言される前夜のこと。
「いやだあああああああああ!!!!」
イヤ、イヤ、絶対イヤ!!
「わたしは大魔王様と一緒にいるの、おつかえするためにココまで来たの!」
「そうはいうても大魔王様はお忙しい方じゃ。お主にばかり構っておるわけにはいかん」
宰相だかなんだかしらないけど、イヤなものはイヤ!
わたしは勇者なんだから!あんたらなんかより強いんだから!
大魔王様と一緒に居るためにココまで来たんだからね!!
「まあそう焦る出ない。お主はまだ客人でまだ子供じゃ。然るべき者が後見するのは当然じゃろう。」
「知らない、そんなの!知らないったら知らない!!」
言いたい事もやりたい事も全力で言う、繰り返すのがポイントよ!
ほらほらおじいちゃん、困ってるくらいならOKしちゃいなさい。
泣く子と勇者に敵う人はいないのよ!
サイショーが大魔王様にコショコショ話を始めたから、もういいわよね?
こっそりOK貰わなくてもいいのに、大人は大変ね!
「それではメイド長、あとは頼む」
メイドさんが荷物を運んでくれるのね。
そんな大した量ではないのだけど・・・それがこっちの流儀なら従うべきだわ。
「それでは、こちらへ」
メイドさんは笑顔でいい人っぽい。
人間にしか見えないけど、魔人?
いやいやそれどころじゃない、振り向いてエンジェルスマイルを捧げるわね、だいまおーさまーーーーーー!!
「大魔王様またあとでね!」
「ああ後ほどな」
ただ手を振って下さるだけなのに一糸乱れない大魔王様は完璧だわ。
伝わる優しさで勇者の心が洗われるの・・
メイドさんについて歩くこと数分。
「ここはドコ?」
「勇者様のお部屋になります。」
どうやら私はメードさんに騙されたようだ。
私一人には十分に広くて清潔な客間ではあるけど大魔王様の部屋じゃない。
「ベルを鳴らしていただければ、すぐに私がお伺いします。」
そうじゃなくて、わかってるくせにとぼけているのが憎たらしいじゃない。
「大魔王様は?」
「執務中です。」
「後で、って約束したんだけど」
「明日の朝に勇者様のお披露目がありますので、その事かと」
え?何言ってるのかしら?
夜はこれから始まるのよ。
明日の朝まで何時間あると思ってるのよ。
「大魔王様は緊急事態以外、夜通し執務を行われます。」
えええ?大魔王が夜通し仕事するのが緊急事態でしょう?
「大魔王様は日中は対外業務、夜間に内政に関する執務業務をされています。ご用事以外で自室にお戻りになられることはまずありません。」
え?寝ないの?
食事は?
お風呂は?
着替えは?
「そこは大魔王様ですから。聞きたいことがあればご自分で伺がわれてはいかがでしょうか?」
いつでもお呼びください、と礼をしてメードさんは下がっていった。
何なの?大魔王様って機械仕掛けか何かかの?
それとも魔人って皆そうなの?
わたしが魔王国に派遣されることを決めた時の話。
「ようこそ決心していただきました、勇者殿!」
スカした顔で頭の中は悪企みしかない宮廷政治家のおっさん達。
さも喜ばしいことのように大声で周り中に聞こえるようにツバを飛ばす。
「撤回はいまさら聞かないぞ」と言いたいんでしょうがそんな気ないから。
この人達は私のこと何だと思っているんだろう。
噂には聞いていたけど魔人に勇者を差し出すなんてバカなことあり得ない。
思っていたらほんとに依頼きた。
大魔王を倒せない勇者なんて使い道がないからゴマすって来いってことかしら
これまでの勇者のように魔王討伐へ行かない役立たずとでも思ってるんだろうけど。けどね。
魔王グラディウス。
アレは無理よ、しょうがないじゃない。
神界にも悪魔界にも敵なしの大魔王なんだから。
神様からお預かりしている勇者の力が、神様より強い相手に敵うわけないって何でわかんないんだろ。
私はどうにもならないことはしない主義なんだから。
だいたいなんで魔王を討たなきゃいけないのよ!
討つのは人族の敵でしょ!悪魔の方でしょ先に!
おそらくあの頭の悪い大臣たちは、私が魔王国行きを断ると思っていたんだろう。
私だって大魔王のことを何も知らなければ、秒で断っていた。
でもわたしは母から大魔王グラディウスの話は聞いていたから。
先々代勇者であった私の母を倒して、そして救ってくれた話。




