17. 勇者来訪Ⅰ 1 (小話)
ベノンが特訓の旅に出てからしばらく後。
魔王城には意外な賓客が訪れる。
人間の少女が訪れたのだ。。。
人族の少女が大魔王グラディウスを訪ねてくるなど魔王国の建国以来初めてのことだ。
衛兵から秘書に引き継がれ宰相に連絡が入る。
大魔王様や宰相・官僚に秘書。皆が集まる謁見の間で大魔王は少女と対面する。
その場全員の視線が興味津々に彼女へと集まる。宰相を除いて。
「大魔王様はじめまして!キャサリン・ベッシリーニです!」
子供の元気良い挨拶は魂に力を与えてくれる。
合格!
美しい金髪をクルンクルンと巻き、青い瞳は一切の恐れなく真っ直ぐに大魔王を見つめている。
見た目は貴族の子女であろうかという可憐さ。
「第183代目、勇者をやってます!!」
「・・・」
我が国の外交を司る宰相ジルベストよ。
おぬしは今日もまたワレの心の深淵を震わせる漢なのだな。
何故かこちらを向かずに直立不動で遠くを見つめておるが・・・
「ベッチーって呼でね!!」
指を立てホホに当てポーズを取るのが人族の流行りなのか。
ジルベストの膝がガクンと折れて頭を抱えているとは。
老体には勇者の元気が心に響きすぎたのか。
ワレの口角を3ミリも上げることができるとは誠に愉快。
この少女にどんな思惑があろうともよかろう。
大魔王の深淵を揺さぶることができる者は世界を揺さぶる者なのだからだ。
歓迎するぞ勇者ベッチーよ!




