13. 悪魔襲来Ⅲ 1
「クックック。尖るな尖るな」
落ちたクビを持ち上げて元通りに据えながら、悪魔王が皮肉な笑みを浮かべる。
大魔王の部下を試すとはワレを試す所業である。
たかが悪魔ごときが我らを試すなぞ万年早いことがわかっていないとみえる!
「何なら今すぐにでも大戦の幕を開けるか?やぶさかではないぞ」
大魔王オーラが更に大きくなり、ついには天を衝き宙に届く。
「おお怖い怖い。ワシにも悪魔王として周りに示さねばならぬ威厳もあるのでな。お主の右腕と腕試しくらい良かろうよ。」
やはり我が右腕ベノンを試しおったか。
悪魔王としてのポーズと言い訳をしながらも、ベノンの力を臨界寸前まで試しおった。
ヤツの頭の中でベノンの能力値が更新されているのは間違いない。
油断ならん喰えないジジイである。
ベノンも精鋭達にもそして魔王国にも、被害は出ておらんから鉾を収めておく。
どのみち端からこちらに危害を与えるハズがない。
こちらからの呼び出しに応じる位の漢気はある男だ。
ベノンもようやく悪魔王の視界に入り始めた。嬉しさを感じたのだからここまでだ。
「大魔王グラディウスよ、悪魔王サターンはお主に詫びと礼を言おう。」
悪魔王が真剣な表情で宣言を始める。
「悪魔軍が魔王国を攻めしことを詫びよう。そして無礼な部下の言葉に耳を傾けてもろうたことに礼を言う。」
この宣言は、大魔王グラディウスと悪魔王サターンとの間で交わされる正式な宣言である。
「どちらも借りとさせてもらおうぞ」
小さな魂魄の宿った拳を振り上げる。
もう殆ど意識は残っておるまい。
それでもこの悪魔が必死にもたらした結果、聞かせてやるのが情けというものだ。
己が真に信じた王の言葉を。
「お主の部下の未練。ワレは悪魔軍の内側は分らぬゆえ伝えることしかできぬ」
譬え自分達が大魔王に滅ぼされようとも、縁者と悪魔国を想い続けた漢の未練。
この心意気に応えねば武人ではあるまい。
(2行空け)
悪魔王は高らかに宣言する。
「悪魔軍魔王方面軍の皆ども、命を賭して大戦を停めたこと誠に大儀であった!
これによる褒章は、お主ら一人一人に連なる悪魔達全員に配することでこの大儀に報いることを約束する!!!」
悪魔王の腕より、膨大な魔力が宙に向けて放たれた。
あれはワレと悪魔王のみが使えるスキル。
□□□□□□□□□□□□□□□
【リイン・カ・ネーション】
死亡して即時であれば、悪魔、魔物、人間を転生させることができる秘術。
現在では大魔王及び悪魔王のみが使用可能。
生者の意志による転生は神の理から外れる為神族には使用出来ない。
大魔王及び悪魔王クラスの魔力保持者が使うと、術者または死者が臨んだ種族への転生が可能となる。
大規模に使用すると天罰を与えるために神族が出撃することがある。
今回は少し神の怒りに触れかかった規模だが、悪魔王としては大魔王もいるので「まぁいっか」と"いい恰好"を優先したことは内緒である。
□□□□□□□□□□□□□□□
ワレの拳に欠片ほど残っていた意識の粒が風に流され、消え失せる。
最後に感謝と忠誠の想いが流れてきた。
魔王国に生まれる者は全て我が臣下であり同胞である。
次に会う日を楽しみにしておる。




