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大蜘蛛は愛しの花嫁を溺愛する。  作者: 瓊紗(夕凪.com)


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13/22

花嫁とデート。


「買い物?」


「は、はい!」

それは突然の申し出で、ふゆはがここまでウキウキしながらお願い事をしてくるとは思わず、きょとんとしてしまった。


「買いたいものがあるのなら、こちらで注文する。金のことは気にするな」


「そ、それは、そのっ!自分で買います!」


「え゛」

な、何故だ!?


「ちょ、ちょっと待て。欲しいものがあるなら、買える。月や空なんかじゃない限り、山でも島でも宝石でも買ってやれるぞ」

それだけの財力はある!

そして花嫁に貢ぐのは妖怪としてもごくごく普通だ!!


「えっと、山?」


「欲しいか?」


「い、いいえっ!」


「では、島にするか?」


「そういうことでは!」

ふむ。山や島はいらないか。迷子になっても困る。まぁ、隠れ帯に入れば蜘蛛妖怪たちに出会えるから大丈夫だろうが。

とは言え、宝石やブランドものを欲しがる性格でもないからな。


「あの、自分で選びたいので」


「選ぶとは、何を」


「あの、糸を」


「糸?なら出してやろうか?俺の場合は尻から出るが」


「尻!?」


「うむ、口からは出せぬしな」

もちろん人間の尻からではなく、一度大蜘蛛の本性に戻ってからとなるが。

ユカタヤマシログモはヒト型のまま出してくれたが、さすがに俺たち他の蜘蛛たちは蜘蛛の姿で出した方が楽なのだ。


「えと、その糸じゃなくてっ」

「違うのか?」

蜘蛛の糸が欲しいのなら、出してやっても構わない。


「今、お姉さまたちに教えてもらっていて。それで私も糸を選びたいなって」


あぁ、そう言えば最近姐さんたちが刺繍に誘ったり、ゆららがぬいぐるみ作りを教えたりしていると聞いた。寝室にも子蜘蛛ぬいぐるみが増えているし。


布や綿も手配したことはあったが、種類はゆららが選んだものだ。糸は蜘蛛たちは自分で作ることもできるし、蚕妖怪から買うこともできるが、人間が紡いだ糸も好きだそうで。

たまに人間のふりをして買いに行くのだ。

そしてその糸に蜘蛛妖怪の糸を混ぜてお守りの効果を付けることもある。


「そう言うことなら、俺も行こう」


「え、でも」


「何かあっては困るからな」


「その、迷子とかにはならない、よ?地図もあるし」


「それでも、共に行きたい。それにデートのようで良いだろう?」


「デート!」

顔を赤らめてキラキラと見つめてくる姿もかわいらしいな。


「だから、一緒に行こう。金も俺が出すぞ?」


「い、いえ!蛇さんにお小遣いをもらいました!」

マジで孫娘扱いだな、あの蛇爺。

本当なら、俺が与えてやりたかったのだが。


「それくらいいいではないか。孫娘をかわいがるのは老生の楽しみだ」

不意に蛇が現れふふふっと嗤う。


「その金どこから出した」

以前は支援金として蛇たちに渡していたが、褒美として与えたのは金ではない。それにこの蛇ウチに居候するニートだし。金運はあげてくれるが、仕事してないニートである。


「鱗を売れば、結構儲かる」

まぁ、おめでたい白い蛇妖怪の鱗。しかも神気まで帯びているのだ。


「へ、蛇さんっ!?」

だが、そのことを知らなかったのかふゆはが戸惑っている。


「孫娘のためならば、安いものだ。それに定期的に何片か落ちるのだ。ちょうど持て余していたところだしな。それに、ふゆは」


「えと、なぁに?」


「おじいさま、と呼んで欲しいと頼んでいただろうに」

いや、いつの間にそんな要求してんだこのジジイ。


「ジジイ同士で盛り上がってしまってな」

と、不意にもう一匹のジジイ蜘蛛のナガレが現れた。


「しずれも呼ぶか?おじいさまでもじいじでもいい」


「いや、呼ぶかいっ!」

てかじいじって。じいじはないだろ。そんな歳でもないわっ!


「ふふ、我が孫は反抗期のようだ」

「悪かったな」

因みに血縁ではない。同胞ではあるが、長生きなのでみんなの祖父のような存在なのだ。


「では、早速明日にでも行こうか」

「はい、しずれ」

ふゆはが嬉しそうに微笑む。


俺としても楽しみだな。初のデートか。




***



そして、明日が来た。


「さぁ、デートに出掛けるぞ!」

気合いは十分だ!

鬼の角は隠し完全に人間に擬態しているが、やはり和服が落ち着くし、本日も和装に身を包んでいる。そして白い髪が目立たないように和装に合わせた帽子もかぶる。

一方でふゆははーー


「ひゃ、ひゃいっ!」

緊張で噛んでしまうふゆはも、かわいい。

そして本日はかわいらしいワンピースを着ている。

何着か似合うものをと贈ろうとしたら、カタログを蜘蛛女たちに強奪されたのは悔しいが、ふゆはと一緒にふゆはに似合うものを選んでくれたから、まぁ仕方がない。

それにレースやリボンがあしらわれた桃色のワンピースはなかなかかわいらしいな。

微笑まし気に眺めていればーー

「私たちも行きたかったのに!」

「そうそう、ケチなんだから」

と、姐さんと椛姉さんがやってきて文句を言ってくる。


が、


「デートなのだ。ふたりきりが基本だろう?」


「でも護衛はつくんでしょ?」

と、ユズリハ姉さん。


「えっ、護衛って」

ふゆはが驚いたように俺を見てくるが・・・


「念のためだ。たゆらが付いて来てくれる。陰ながらな」

蜘蛛たちは隠れ帯に潜みながら護衛ができるのだ。特にコガネグモ系の蜘蛛たちはそれが得意である。


「ん!」

たゆらがシャキーンとサインを出して来て、ふゆはが微笑ましそうに頷く。


「じゃぁ私たちもいいじゃないの~っ!」

いや、姐さんたちがいたら、隙を見て確実にふゆはを掻っ攫われるからな!!却下だ!!


「あの、お土産買って帰りますから!」


「ふゆはちゃんがお土産買ってきてくれるなら、しょうがないわねぇ」

ユズリハ姉さんがクスクスと笑う。


「けど、泣かせたらただじゃおかないから」

そこだけくわっと目を見開くな!蜘蛛女がやったら迫力物凄いからやめろ。


「この俺がそんなことをするはずないだろうが」

本当に、お前ら俺を何だと思ってんだか。


そして、


「行ってきます」

かわいくそう言って手を振るふゆはを、

『行ってらっしゃ~いっ!』

と微笑まし気に見送っていた。ふぅ、ひとまずは第一関門の蜘蛛女たちを突破したか。


「では、まずは早速手芸屋へ行こうか」

「はい、しずれ」

手を差し出せば、自然な感じで俺の手を取るふゆは。


重ねた手が、ふんわりと柔らかく、温かく心地よいな。

今日のデートは幸先が良さそうだ。




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