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発泡剤とバリウム

作者: 羽生河四ノ

この間健康診断に行った時、生まれて初めての発泡剤とバリウムっていうのを飲んで、あのアトラクションのような機械に身をゆだねたんです。あのあっち行ったりこっち行ったりのやつ。右むいてください左むいてくださいっていうやつ。右に一回転してください左に一回転してくださいっていうやつ。頭が下になったりするやつ。あれ。あれって発泡剤で胃を広げて、で、バリウムを胃の隅々まで届けるためにああいう事をするんですってね。バリウムを胃の隅々まで広げないと、機械でうまい事見れない、計測できないっていう事らしくて。それにバリウムっていうのはまずい物っていうのをなんかで見たか、聞いたかしたような覚えがあって、だからやる前は、

「どんだけまずいんだろう。吐いたりするのかな」

って思って不安だったんですけども、飲んだら別にまずいもんじゃなかったです。発泡剤も。若干甘味がつけられてて。まあ、ちょっとね、発泡剤はともかく、バリウムは飲んじゃいけないんじゃないか感がありましたけども。蝋とか絵具とか、ゴムを溶かしたやつを飲んでる様な。でも、大丈夫でした。

発泡剤の説明の時の方が怖かったかなって思います。

「げっぷはしないでください。決してげっぷはしないでください。絶対にしないでください。げっぷが出そうになったら唾を飲んでください」

は、は、はあ、はい。え、はい。

「もしげっぷをしてしまったら、また発泡剤を飲んでもらう事になります」

わあああ。怖い。

その後の機械でぐるんぐるんのアトラクションよりも私は発泡剤の説明の時が一番怖かった。バンジージャンプとかスカイダイビングとかも、もしかしたら一緒なのかなって思いました。説明されてる時が一番怖いのかなって。

そんで、その検査が終わって、他の諸々の検査も終えて、最後に先生から診断の結果とちょっとした問診をって小部屋に入れられて、先生と対談、対面して、お話をして、

「あと先ほどのバリウムの検査ですけども」

って、先生が縦になってるPCモニターに私の胃の画像を出したんです。それで、

「えーっとここに何か」

って言って、画像を拡大したんです。

拡大した画像を見た瞬間私は泣いてしまいました。

「ああ、しーちゃん」

泣いてしまいました。

それは、そこに写っていたのは私が子供の頃に大事にしていた白熊のぬいぐるみしーちゃんだったからです。白クマの癖に赤と白のマフラーを撒いて、頭に同じ柄のサンタがかぶってる様な帽子をかぶって、白クマのくせに、熊のくせにやさしい顔をしていた。しーちゃんだったからです。

しーちゃんはある日行方不明になりました。

「しーちゃん」

こんなところに居たんだね。ああ、良かった。ずっと一緒に居てくれたんだね。良かった。あー、よかった。私はボロボロと涙をこぼして鼻水を垂らして顔をぐしゃぐしゃにして泣きました。うれしくてうれしくて、泣いても泣いても涙は止まりませんでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そういえば子供の頃の思い出の縫いぐるみや人形は、気付いた頃には自分の手元からいなくなっていましたね。 そうしてアンティークショップなどで偶然見かけた時に、「今度こそ大事にしよう!」という思…
[一言] しーちゃん、まさかの方法で発見!
2023/01/11 17:02 退会済み
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