第4話 所属事務所
配信が終わると、俺のスマホに着信があった。
画面を確認すると、三井美南と表示されている。
俺の所属する事務所、NEOプロダクションの担当マネージャーだ。
NEOプロダクションは、最近何かと話題のVtuberやTikTokerなどのインフルエンサーが所属している。
「お疲れ様です。戸張です」
『ユーキくんお疲れさま! 今日の配信も良かったよ!』
「見てくれたんですね。ありがとうございます」
『もちろん! ユーキくんの担当だからね!』
美南さんは俺がNEOプロダクションに入った頃からずっと付いてくれているマネージャーさんだ。
入社して2年も経って居ないと聞いたが、その優秀さを社長も買っているのだとか。
最近は俺の規模も大きくなって来ているので、マネージャーさんも増えて来ているが、美南さんが一番長い付き合いになる。
『ユーキくん、佐藤ひなちゃんのこと凄い分析していたよね』
「ああ、そうですね。TikTokerって急にバズって有名になることは多いですけど、彼女の場合は何か違う気がして」
『ユーキくんのその分析は確かだと思うよ。うちの社長も同じこと言ってたし』
「まじすか」
NEOプロダクションの社長は自身もインフルエンサーであり、総フォロファー数は1000万人超えというトップインフルエンサーだ。
巷では新世代のカリスマと呼ばれている。
そんなカリスマと同意見というのは誇らしい。
『会ってみます?』
「誰とですか?」
『誰とって、その佐藤ひなさんですよ』
「会えるんですか?」
確か、彼女はまだ事務所に所属して居なかったはずだ。
プロフィール欄にはフリーと書かれていたのを記憶している。
『もちろんです。だって、佐藤ひなさんは本日から弊社NEOプロダクションの所属となりましたから!』
「まじすか……」
『マジです』
彼女の伸び方を見るに、かなり多くの事務所からお声がかかっていることだろう。
その争奪戦にうちの社長は勝利したということだ。
さすがは、業界最大手と呼ばれるだけのことはある。
「また、女の子が増えるんですね」
『ユーキくん的には嬉しいんじゃないの?』
「いや、肩身狭いっすよ。あそこに居るの」
NEOプロダクションのティックトック部門はまだ人数がそれほど多くない。
ティックトック出身のクリエーターは俺含め12人。
その中で、男は俺1人だけである。
しかも、みんな美人なのだ。
多少なりとも肩身の狭い思をしている。
『それで、ひなさんと会いますか?』
「ひなさんがいいと言うなら、ぜひお会いしたいともっています」
『大丈夫ですよ。ひなさん、今日のユーキさんの配信見て、喜んでましたから』
「そうなんですね」
俺は苦笑いを浮かべる。
一応、相互フォローにはなっていたが、配信で彼女を褒めていた所まで見られていたとは思わなかった。
『今週末、空いてます?』
「土曜の午後ならいけます」
『では、事務所でお待ちしています』
「わかりました」
そう言って、美南さんとの通話を終了させた。