第3話 雑談配信
市場調査も終わった所で、明日の投稿分の動画を編集する。
最初のうちはスマホで編集をしていたが、最近はパソコンで編集することが多い。
動画投稿サイトでも、投稿を始めているのでそっちの編集もやらないといけないのだ。
ティックトックは、数秒から数分という極めて短いショート動画なのだが、その編集や撮影には1時間以上かかることがザラである。
「ふぅ、これで明日の投稿分も大丈夫だな」
俺は椅子から立ち上がると、軽く伸びをする。
「そろそろ俺も、同年代の男ファンとか付けないといけない時期か……」
今後インフルエンサーとして生き残って行くには、同年代の同性の層が鍵となってくる。
ファンが一緒に成長してくれるのは、同年代の同性。
そこの層を獲得できた時に、安定して動画も回って行くことだろう。
今の俺のファン層は圧倒的に女性だ。
それも、10代20代の女性が七割強を占めている。
俺が投稿している動画が主にそこを狙っているので、それも当然だと言えるだろう。
「さて、そろそろ時間だな」
時刻は22時を示している。
今日はティックトックでライブ配信をするという告知をしていた。
毎週水曜日は必ずライブ配信をするようにしている。
ファンと交流を取る機会を設けるのも、大切なことだと思っているからである。
俺は照明とスマホをセットして、ライブ開始をタップする。
すると、続々と視聴者が集まってくる。
あっという間に同時接続者数は5000人を超えていた。
ティックトックライブでこれだけの人数を集められるのは、かなり上位のTikTokerだけである。
「こんばんはー」
コメントが画面に一気に流れて行く。
その速さは目で追いきれないほどである。
【今日の動画見ました!】
【今日もイケメンですね!】
「みんな、ありがとう。今日のはおかげ様でバズったよねぇ」
今日の動画は既に360万回再生3万いいねが付いていた。
【ユーキさんが最近注目してるTikTokerっていますか】
俺はそのコメントが目に入ったので拾う。
「最近だと、佐藤ひなさんかな」
【ひなちゃん知ってます!!】
【ユーキさんに気にかけれれてるとか羨ましい!!】
「あの子、凄いよね。あそこまでファンが付いてるTikTokerってあんま居ないと思うんだよね」
多くのTikTokerはある特定の動画がバズってフォロワーが増えていく。
しかし、佐藤ひなさんの場合は全部の再生回数がほぼ同じで100万再生超え。
平均値が100万、200万再生で、いいねやコメントの数も安定している。
バズってる音源使えばある程度の所まではバズってくれる。
しかし、彼女の場合はそういう次元ではない。
どんな音源使ってもある程度同じような数字を取る。
それは、まさにティックトックの理想的なものである。
「中身で見られてるんじゃなくて、人で見られてるってを感じるよね」
【ユーキさん凄い! めっちゃ分析してる】
【もう、ひなちゃんのファンじゃん】
【私、ひなちゃんも推してるけど、その目線では見たこと無かった】
「まだ10代であれはめっちゃ努力してるんだと思うよ」
【ユーキさんも10代じゃん】
「まあ、そうなんだけど。あと、同世代10代20代の女性ファンを付けてるのも大きいよな」
あのルックスなら、男性にフォロワーが傾くのが一般的とされている。
しかし、彼女の場合は女性ファンも多くついている。
女性ファンが付くと、一気に仕事の幅が増えるのである。
例えば、アパレルやコスメ系の案件を受けられるのが強い。
女性はそういった有意義な情報を発信してくれる子を定期的に見る傾向にあるらしい。
「どっかのタイミングで会いたいなとは思ってるかな」
【2人の絡み期待!】
【キモいくらい分析してて草】
「俺、人の分析するの好きなんよ。じゃあ、今日はこのへんで終わりにしようかな」
約1時間配信した所で俺はライブ終了をタップした。