第24話 帰り道
打ち合わせも終わった所で、俺たちは帰路に就く。
「グランピング楽しみですね。優輝くんは行ったことあります?」
「いや、初めてだな。元々、そんなに出かける方ではないし」
俺は基本的に家で撮影できるような案件が多かった。
今回みたいに、泊まりがけの撮影などは初めての案件である。
「都心からは結構離れてるみたいですね」
「だな」
都心から車で2時間ほど行った所に、グランピングの会場はあるようである。
「それにしてもよかったのか? 美南さんたちも居るとはいえ、俺と一泊とか」
「嫌な訳ないじゃ無いですか!! むしろ楽しみすぎて今日から寝れそうにありませんよ」
「それは、寝てくれ」
案件ということで、俺たちは無料で行くことができる。
ここ最近、旅行などはしていなかったので、ちょっとした旅行気分である。
新宿駅から電車に乗り、俺たちの最寄り駅で降りる。
俺とひなは最寄り駅が同じなのだ。
「送ってくよ」
「いや、毎回悪いですよ」
「気にしなくていいよ。街灯があるとはいえ、この時間に女の子だけで歩かせた方が心配だ」
街灯で照らされているとはいえ、暗いことには変わり無い。
女の子の一人歩きは何かと物騒だと聞く。
「じゃあ、お言葉に甘えます」
「あいよ」
俺たちは並んで歩き出す。
「グランピングってことは、バーベキューとかもできるんですよね?」
「ああ、できるって書いてあったな」
「私、やってみたかったのですよ。バーベキュー」
「やったこと無いのか?」
「そうなんです」
そういえば、ひなはお嬢様であった。
そういったものに縁が無かったのも納得は出来る。
「どんな服を着ていけば行けばいいんでしょう?」
「うーん、まあ、あんまりフリフリしてない方がいいと思うぞ。あと、ある程度匂いがついても大丈夫なやつ」
バーベキューをやると、煙で服に匂いがついてしまうものだ。
俺はあんまりその辺は気にしていなかったが、女の子なら気にするものだろう。
「なるほど。参考にしてみます」
「おう、参考になったなら嬉しい」
「バーベキューはやったことあるんですね」
「まあ、家族で何回かな」
昔は両親も時間に余裕が多少だが、あった。
今は2人とも出世して、出張やら会食やらで家に帰ってくる時間の方が少なくなっている。
「送って頂き、ありがとうございました。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
そう言うと、ひなはエントランスの中に入って行った。
そして、振り向いて小さく手を振る。
俺も手を振りかえして、ひなを見送ると自分の家の帰路に就く。
数分歩いて我が家に到着した。
「ただいまー」
「おかえり」
妹のまりんの声が飛んでくる。
リビングに入ると、まりんはキッチンに立っていた。
「今日、ハンバーグだから」
「お、いいね。うまそう」
「もうすぐ出来るから手洗ってきなよ」
その様子を俺はじっと見つめる。
「何?」
視線に気づいたまりんが問いかけてくる。
「お前、母さんに似てきたな」
「私が年取ったって言いたい訳? もう、ご飯作ってあげないよ」
まりんが俺を睨んでいる。
「いや、そうじゃなくて。料理してる姿とか味とかが似てきたなと」
「まあ、一番食べてきたのはお母さんの料理だからね。くだらないこと言ってないで手洗ってくる!」
「おう」
俺は洗面所で手洗いを済ませる。
リビングに戻ると、そこには夕食が並べられていた。
「食べよ」
「頂きます」
俺はまりんと一緒に夕食を取る。
「そういえば、来週末に泊まりの仕事が入ったから一晩、家を開けることになる」
「分かったよ」
まりんが食べながら答える。
「すまんな」
「何が?」
「お前を1人にしてさ」
「私も子供じゃないんだから大丈夫だよ。仕事なんでしょ? 頑張ってね」
理解がある妹というのは本当に助かると、こういう時に思う。
「ありがとう」
「それに、来週はお母さんも帰ってくるから1人じゃないしね」
「そうか、ならよかった」
まりんが1人じゃないなら安心だ。
俺も母さんに会いたい所だが、忙しいので難しいかもしれない。
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