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第19話 影響力

 ライブ会場を出る前に俺は髪型を崩す。

ボサボサに俯きがちに歩いているその姿は、まるで先ほどまでのユーキのオーラでは無い。


 服装こそはそのままだが、ユーキの正体に気づく者は居なかった。

そのまま、自宅に帰る。


「ただいまー」


 自宅に帰ると、ジャケットを脱いでソファーに投げた。


「もう、お兄ちゃん、ジャケットはちゃんとハンガーにかけないとダメだよ」


 まりんが俺のジャケットを拾ってハンガーにかけてくれている。


「あ、すまん」

「まあ、いいけど。それで、ライブは楽しかったの?」

「ああ、楽しかった。アイドルのライブって凄いんだな」

「そりゃ、今をときめくホワイトシンデレラだからね」


 ホワイトシンデレラが曲を出せば、オリコンランキングは1位。

サブスクのランキングも一気に駆け上がるほどの人気ぶりである。


「お兄ちゃんはその格好でバレなかったの?」

「まあ、会場の芸能関係者には何人かにバレただろうけど、それ以外には」

「さすがだね」

「まあ、こんな覇気の無いやつが人気TikTokerとは誰も思わんて」

「それ、自分で行ってて悲しくならないの?」


 まりんが憐れみを視線を向けてくる。


「別にならんさ。俺はプライベートは平穏に過ごしたいんだよ」


 もちろん、山川のようにプライベートも隠さないタイプもあっていいと思う。

しかし、俺はああはなれないと感じた。


 俺はSNSにもほとんどプライベートの様子はだしていない。

仕事関係や動画の告知くらいである。


 それによって、俺のプライベートは謎だと言われるようになった。

これだけ、SNSが発達した現代だ。

芸能人の目撃情報などはSNSを探せば腐るほど転がっている。

しかし、俺の目撃情報などが出回ることはここ最近は起こっていなかったのだ。


 まあ、学校の連中に怪しまれるという失態を犯したわけだが、高校生の話題の移り変わりはとても早いものだと感じる。

いまや、俺の正体などどうでもいいかのように扱われている。


「さてと」


 俺はソファーに深く座り、今日の動画をティックトックに公開する。

今日もバズってくれることを願うばかりだ。


「うわ、凄いなこりゃ」


 俺はSNSのアカウントを立ち上げた。

そこにはやけに多くの通知が溜まっていた。

今日は特に何も俺のアカウントでは投稿していないはずだ。

それで、この通知の多さはなぜか。


 俺がタグ付けされた投稿がバズっていたからである。


『今日は、ライブに人気TikTokerのユーキくんが来てくれました!』


 山川の投稿である。

そこには、俺と山川のツーショットが載せられていた。


 この投稿がかなりの反響を呼んでいる。


《美男美女ってのはこのことかw》

《え、そのライブ行けばよかった!》


 その投稿にはかなりの数のコメントがついている。


「俺の方でも反応しとくか」


 俺はその投稿を引用する。


『ご招待ありがとうございました! 楽しかったです!』


 山川もSNSのフォロワーは60万人ほどいる。

お互いの相乗効果で今日もフォロワーが増え続けていた。

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