第16話 ライブへの誘い
ひなと家が近所だと分かった翌日、俺は普通に学校へと向かう。
相変わらずのインキャスタイルだ。
俺の本業は学生なので、大きな仕事が入っていない時はできるだけ学校に通うようにしている。
元々、芸能活動には寛容な学校であり、教員たちにも話は通してあるので、休むことは問題にはならないのだが、行ける時には必ず行く。
怪しまれてはいるが、まだ完全に周囲にバレてはいない。
まあ、1人には完全にバレてしまったが。
話題というのはすぐに移り変わっていくようだ。
今日はそこまで質問攻めには合わなかった。
「今日は平和に過ごせそうだな」
俺は安堵する。
眠くなるような退屈な午前中の授業が終わり、昼休みの時間となる。
俺はいつものように、中庭のベンチに座って昼食を取ろうとする。
「ここ、いいかしら?」
その声に俺は顔を上げる。
人気アイドル、山川愛莉がそこに立っていた。
「いいも何もこれは俺のベンチじゃないんで、ご自由にどうぞ」
「そ、じゃあ、座るわね」
そう言って、山川は俺の隣に座る。
正直、学校ではあまり目立ちたくは無い。
しかし、山川の近くに居ると必然的に目立ってしまうのだ。
「何か用?」
「用があったから来たのよ!」
「じゃあ、用件をどうぞ」
俺は飯を食いながら喋る。
「これ、渡したくて」
山川がポケットからチケットを一枚取り出して差し出して来る。
「これって」
それは山川の所属するアイドルグループのライブチケットだった。
確か、すごい倍率でチケットは争奪戦だと聞いている。
しかも、それは関係者席のチケットだった。
「いいのか? もらっても」
「あげるって言ってるの! その代わり、絶対来てよね」
日付は今週末になっている。
今週末は撮影が数件入っているが、ライブの時間とは被っていないし問題ないだろう。
「分かった。見に行かせてもらうよ」
俺はライブチケットを受け取ると、財布の中に丁寧に仕舞った。
「本当!? ありがとう!」
山川の声が弾んでいる。
「それで、できたらユーキ様スタイルできて欲しいんだけど、いい? 関係者席の周辺には芸能関係者しかいないから!」
「まあ、そういうことなら分かったよ。会場までは変装して行く」
「ありがとう!! ライブ、頑張るから期待しててよね!」
「ああ、楽しみにしているよ」
そう言うと、山川は戻って行った。
「アイドルライブか。初めて行くな」
今まで何度か招待されていたことがあったが、仕事と重なって行けなかったのだ。
しかも、今回は大人気アイドルグループのライブである。
ファンでもなかなかチケットが手に入らないライブに行けるのはシンプルに楽しみだった。
『メンバーもユーキさまが来るって楽しみにしてるから!』
その日の夜、山川からの連絡が入った。
どうやら、俺が来ることは他のメンバーにも伝わっているらしい。
『了解です』
俺は山川にスタンプを送った。
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