発見
2020年4月3日
僕は久しぶりにパソコンを開いた。理由は特にないが、少し触ってみたかった気がした。
パソコンを起動し、パスワード四桁を入力する。いつも通り開いた。
少しニュースでも見ようかとChromeを開く。
yahooを検索。chromeでYahooを調べるのって違法(?)と鞍掛に怒られそう…とか呑気に考えながらキーボードを叩く。Yahまで叩いた瞬間、履歴という文字が検索ボックスの隣に見える。いつもipadのSafariでネットサーフィンをしている僕には新鮮なページだ。スマホはアカウントで入って調べているから、今までどんなことを調べたっけ…?と気になったので好奇心でクリックしてみる。
福鉄バスファンページ にアクセスしました
福岡産業大学南口から天神総合郵便局前までの行き方 を検索しました
確かに僕が調べた内容が盛りだくさんだ。これは面白い。さらに下を見ていく。
則松急行 則松特急 違い を検索しました
IKRA福岡古宮 急行 バス を検索しました
ピルの飲み方 東京都心美容クリニック にアクセスしました
福鉄バスのことは確かに沢山調べたがピルって何だ?
すかさず前にいた母に聞く。
「ピルって何?」
「何で?」
「いや僕の検索履歴になぜか残っとったとよ」
「ちょっと見せて」
「うん。はい。これ。IKRAの下」
「もしかしたらあなたのアカウントハッキングされてるかもよ!今すぐパスワード変えなさい!」
「えっ?ハッキング?それは怖いね とにかくパスワード変えるね」
「早くした方が身のためだわ!」
「うん」
急いでパスワードを変更する。とその時。このデバイスに心当たりはありますか?との表示が出た。
Soly S5-63
Unzentu note personal computer
Grape Ephone6
Solyは僕のスマホだし、Unzentuは僕が今使っているパソコンだ。犯人はこのGrapeだな…と予測がついた。
母にそのことも伝える。
「ハッキングしてたのGrapeだったよ」
「ああ、本当。ログアウトさせときなさい。」
「うん」
Grapeをログアウトさせてパスワードを変更。これで大丈夫だ。
「どっちもしたよ」
「良かった。ピルはね、あまり良くないもの。女の人の体に子供を産ませないために飲む薬なの」
「え!何でそんなものが僕のアカウントに?僕そんなこと当たり前だけどしてないよ」
「何でかは私にも分からないわ。でも世の中には色々な人がいるから、気をつけなければならないの。尚更匿名でできるインターネットは特に。」
「うん。気をつけるね。」
何で僕がハッキングされたのだろうか? 僕を母から怒られて痛い目にあってほしいと思っている人でもいるのかね?と思う。僕は母親の期待だけは裏切らず、いつも褒められることに重きを置いている。小学校の暗い時期も母親がいたからこそ乗り切れた。母親のいない生活など想像もできやしない。もし母親がいなくなったら僕は生きていけないだろうなと思う。
そんな僕がまだ14歳だっていうのに異性交友を行うわけがない。勿論母もそのことは分かってくれていた。
確認がてらその下の検索履歴を目で追う。アカウント開設は2019年7月14日らしい。
2019年7月14日 Yahoa! JAPAN を検索しました
完全に僕の検索履歴だ。間違いない。
2019年7月15日 大濠電気鉄道 室藤駅 時刻表 を検索しました
〈公式〉大鉄グループ 室藤駅 時刻表 上り(天神 火見方面) にアクセスしました
〈公式〉大鉄グループ 13:17 急行 赤崎行き 停車駅時刻表 にアクセスしました
2019年7月16日 LINNをインストールしました
2019年7月17日 久米インター ホテル を検索しました
運転のご休憩に!久米インターすぐそば!ホテルウォータークール公式サイト にアクセスしました
なんと僕のアカウントが作られていてからたったの3日でハッキングされている。ここまでパスワードってバレるものだろうか…?英語の小文字と大文字、数字まで組み合わせて家族と作ったはずなのだが…ここまで高性能なハッキングなど聞いたことがない。
「お母さん〜僕のアカウント3日でハッキングされてるんだけど〜こんな早くハッキングされるもんかね〜」
「いやいやいや、普通そんなに早くハッキングされることはないよどんな検索履歴なの?」
「これよ」
「ホテルウォータークール?このホテル知らないな」
「よね。久米インターにホテルとかあったっけ?」
「あるのはあるけど… どうやら私たち、見たくないけど見なきゃいけないことを表に出そうとしているわ」
「え?何?」
「今このホテルを調べたらね、やはり私達が知らなくて当然のホテルだったわ。ここはラブホテルだったのよ」
「え…?やはり良くない人がハッキングしているんだね。何で僕のアカウントに…?」
「いや、違うわ。もっと身近な人で考えてみなさい。このアカウントのパスワードを知っていて、いつも帰りの遅い、休日しか話せないようなあの人。」
「え!お父さん?お父さんが他の女の人と遊びに行ってるの?そんなことないでしょ?」
「いや、可能性があるわ。遊んでないってことが100%正しいってことはないからね」
「うん。違うことを願うけど…」
「私もそう願うばかりだわ」
この時僕はこんなことを言いながらも父が他の女の人と遊んでいたという可能性に驚きはなかった。休日しか話せず、僕より電話でずっと話し込んでいる彼ならあり得なくない。こういうことはずっと前からシュミレーションしていた。
でも違うことに越したことはない。違うことを本当に願うばかりだ。