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世界総プラスチック化

作者: ルーナ

深く考えないで読んでください。

 2020年、海洋ゴミは深刻化していた。

 先進国ではCO2削減だけではなく、石炭系燃料の脱却やプラスチック削減など環境に配慮した取り組みを行っている。


 しかし、増え続ける人口により焼け石に水といった状況であった。






 2030年、突如原因不明の漁業不良が世界で起こる。

 例年の漁獲量の3割ほどしか揚がらず、水産業をメインとする国々は大きな痛手を負った。未だ増え続ける人口に食糧難は待ってはくれなかった。


 だが、穀物や畜産業などは例年と変わらなかったため、備蓄された物でしのぶことができた。

 また、来年こそは大丈夫だろうと楽観視していた者も多い。一部の学者はこの出来事に警笛を鳴らした。






 翌年2031年。漁獲量は変わらなかった。

 このころより不思議な現象が起こる。なんと本物そっくりなプラスチック製の魚が多く水揚げ漁の網にかかったのだ。見た目はまんま魚なのに食べることができないプラスチックの魚は両氏からするとゴミ以外の何物でもなかった。


 そのような現象が世界各国で起こると誰がやった? ではなく、原因解明が急がれた。

 切断して中身を見るとどれも本物と同じような内臓に研究者は頭を抱える。魚に

 寄生しているものまでもれなくプラスチックなのだ。


 そう、あまりにも簡単に研究者はその謎の答えにたどり着く。



「生きた魚がプラスチック化した」



 海洋ゴミを減らす努力をしていても膨大なごみ全てを把握できるわけがない。海洋ゴミでの被害は減らなかったのだ。


 マイクロプラスチックを摂取し続けると体がプラスチック化する。


 そんな三流映画のような話が現実的になってきたのだった。


 多くの人々問題視したのは『人体に影響があるのか? 』だった。

 海産物で成り立っている国や、健康食でもある魚を摂取出来ないとなったら世界は一気に食糧難に陥る。国連は『体の小さい魚などは影響があるけど、人体の体の大きさに影響が出るほどではない。口から摂取されたものは排泄される』と表明した。

 一部の科学者は『魚を食べないほうがいい』と意見を出したが却下された。


 実際にプラ明日チック化された魚は小型のものばかりであながち間違っていないのかもしれない。

 人々はオゾン層問題の時のように数年騒いで沈静化していった。


 2040年、世界の海に漂う海洋ゴミは大方撤去されたといってもいいほどにAIが進化していた。

 海を漂い、ごみを回収して圧縮、タンクがいっぱいになると自動で処理場に戻るロボットが大量に投入されたのだった。さながら海のルンバである。


 これにより、海洋問題は終焉を迎えたと言えた。






 2060年、日本のある女性が病院で変なことを言った。


「体の一部がめくれたの」


 洋服ならいざ知らず、皮膚の一部がめくれたそうだ。

 話を聞いた看護師は「さかむけ? 」が真っ先に頭に浮かんだ。


 だが実際は違ったのだ。

 腕の途中から皮膚がめくれていた。それも骨が見えるほどに。


 看護師は混乱した。

 普通なら出血が止まらないほどの大けがなのに血が出ないのだ。手袋をして触ると硬い感触が伝わる。

 自分の頭では理解できない現象に、看護師は緊急でドクターに見てもらうように指示を仰いだ。


「理解できない」


 診察したのはベテランのドクター。腕の状況はベテランでも初めて見た症状だった。

 ただ、混乱している看護師と違って冷静に観察すると女性の顔もおかしいことに気づく。


 作り物のように表情が硬いのだ。


 聴診・触診などを行い、その変化に驚愕する。

 人体がプラスチック化していたのだ。



 2030年に問題になった魚のプラスチック化が人体に影響していたのだ。


 マイクロプラスチック化した海洋ゴミが海の生物に影響を与え、それを口にした人体にまで牙をむいてきたのだった。

 だが、見方を変えれば人類の自業自得である。


 ベテランドクターは食事の嗜好を聞き、魚をどれくらい食べるか聞いた。

 入院させるべく家族に電話してきなさいとベテランドクターは女性に指示をした。


 その30分後、外で全身プラスチック化した女性が発見された。



 すぐさまニュースになるが、その報道は世界に衝撃を与えた。

 そして同日、世界のいたるところで同様の事が起こっていた。



 研究者はすぐさま原因を究明すべく動いた。


 結果はすぐにわかった。




 そしてもう手遅れだということも。




 海に溶けたマイクロプラスチックは海水の蒸発とともに舞い上がり、各地に雨として降っていたのだ。汚染されていないものはほとんどないほどに進化していた。


 植物や動物ももれなく体内に侵入しており、ご飯を食べない乳児も胎内を通して汚染してしまっていた。



 それでも個体差は多く、症状が出ていない者も多かった。

 国連は混乱を避けるべく発表を取りやめ、原因不明の奇病と発表。





 2062年。出生率は0となった。

 生まれてくる赤子は産声を上げず、赤子の形をしたプラスチックになっていた。



 この頃になるともう嘘は隠せない段階になっていた。

 すでに多くの人々がプラスチック化しており、無機物を生物に戻すなんてそんな不可能なことができるはずもなかった。


 国連が発表したのは『人類敗北』

 先人たちが行った無責任な不法投棄。事故などで流出もあったかもしれないが過剰な資源の無駄遣いは当人たちではなく子や孫が代償を払う羽目になったのだ。


 道には壊れた鳥が落ちており、食べるものもほとんどない。

 社会が崩壊していく音が幻聴で聞こえるようだった。







 2067年。





 人類は絶滅した。

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