■2 『空団』怠惰と真面目
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その日もアイツは平然と授業中寝ていた。
「おーい、いつまで寝ているんだ」
「すーはーすーはー」
「寝息を立てるな!」
私はドン!と机を思いっきり叩いた。
しかしコイツはそんなことでは起きやしない。
「もう授業は終わったぞ。今は昼だ!食事は摂らないのか!」
「ご飯!」
バン!と顔を上げた少女。
コイツの頭突きが私の額に直撃した。
「痛っ!おい、シュトルいい加減にしろ!」
「あれ、いたんだ晴。気づかなかった」
「目の前にいただらうが。相変わらず怠惰な奴だな、お前は」
私は怒鳴った。
しかしコイツは全く悪びれもしていない。
自分も頭をぶつけたと言うのにそのことにすら何にも考えていないようだ。
「まあいいじゃん。終わったことは気にしなーい、気にしなーい!」
「昼食時にだけ自分から目を覚ます。何でこんな奴が成績上位者なんだ」
「そりゃ覚えちゃうからでしょ。私、寝ながらでも一応聞いてるからね」
「腹立たしい」
私は握り拳を作る。
今にもコイツの頭を殴ってやりたいが、そんな姿を他のクラスメイトに見られでもしたら何言われるかわからない。
まあコイツが常識から逸脱していること自体学校区のみならず、街全体で噂になっているのもあるがな。
それがコイツ、空風シュトルムと言う人間だった。
「まったく。お前はなんのために学校に来ているんだ」
「寝るため」
「そんなわけがあるか。ここに来るのは、勉学と友人関係を築き上げ社会へのコミュニケーション能力と、それ相応の知的財産を共有するためにあるんたぞ」
「それは晴の考え方でしょ。私に押し付けないでよ」
「少なくとも寝るために来ているわけではない」
「はいはいそれはわかったから。そもそも私は寝ながらでも聞いてるし、まあ聞きたくない内容は省いてるけど」
「くっ。なんでこんな奴が」
私はムカついてしまった。
しかし突き出した拳を仕舞い込む。
本当にコイツは面倒な奴だ。家が隣同士で昔からの付き合いがある幼馴染でなければこんな奴のこと気にも留めないのに。コイツの自堕落な生活リズムは本当に私と反りが合わない。
コイツは空風シュトルムはいわゆる天才だ。
その理由は睡眠学習にある。
昔、色々と商法として話題に上がってはいたがコイツは紛れもなく睡眠学習をやっている。しかも何にも使わずにだ。
つまりは先天的にコイツは寝ている間に見聞きしたことを記憶してしまう。そして不必要な要素は自らの意思で省くこともできる。それ故に授業中に当てられても何にも困ることなくスラスラと解答を書いていくのだ。
だがコイツの恐ろしいところは、その肝の座った態度にある。
寝ている間に物事を客観的に見聞き出来ること、それから幾ら言われようが動じない人間性に感心はする。が、やはり私には納得がいかない。
「今のコイツの姿を見たらお前の妹はなんと言うか」
「いやいやいつも通りでしょ」
「だろうな」
私は溜息を浮かべた。
このリアルでも何ら変わらない生活リズムを天が見たら、笑って過ごしていられるだろうか?
私は脳裏でそんな心配事がよぎるのだった。