家族団らん
下の階へ降りてみると、そこにはすでに大好きなお父さま、お母さま、そしてお兄さまが立っていた。
「おとうさま、おかあさま、おにいさま、おはようございます!」
そしたら三人から同時に
「おはよう、アリエス」
「アリエス、おはよう」
「アリエステア、おはよう」
と、返ってきた。
「今朝の調子はどうだい?」
「じゅんびですこし、つかれちゃったけどまだまだげんきです。......あ」
朝の大変だった準備の工程を思い返していたおかげで、あの事を思い出した。
さっき思ったことだったのに、もう忘れかけてたわ!
「おとうさま、りぼんをありがとうございます!」
わたくしは笑顔でお父さまにお礼を言うと、同じような柔らかい笑顔を浮かべた。
「アリエスに喜んでもらえたようでよかったよ」
お父さまによると、今日のために、わたくしのアクセサリーを準備したくて用意したものらしい。このリボンを見つけたときには、目と同じ色だから、すぐに買うことを決めたんだって。
「大きくなったわね、アリエス」
お母さまがそう呟きながらこっちに寄ってきた。ちらっとお母さまを見上げると、わたくしの頭を優しくなで、微笑んだ。
「えへへ」
お母さまの手は暖かくて、なでられている今は、すごく気持ちいい。
「アレンもおいで」
お母さまはそう言うと、わたくしをなでている反対の手を広げた。
すると、お兄さまは頬を赤くして恥ずかしがりながらも、こっちに来て、わたくしと同じようにお母さまになでられる。
そうしてみんなでほんわかとした時間を過ごしていると、
「旦那様、神殿へ向かうお時間でございます」
と、執事長のシルバーがお父さまに、こそっと声をかける。
「ああ、わかった。では、外へ出よう」
わたくしたちは、みんなで外に出て、馬車の方へ歩いていく。
そういえば、今、お兄さまはわたくしたちと一緒に馬車の方に来てるわよね?
儀式に来ちゃいけないのに、今一緒に行こうとしているのではないかしら?
「おにいさま?」
「ん?なんだい、アリエステア?」
「いま、ばしゃのほうにいっしょにきているけど、どうして?」
「それはもちろん神殿へ行くためだけど?」
と、当然だという風に言う。
「でも、おにいさまはぎしきににきたらだめでしょう?」
「ああ、魔力の儀は両親しか参加できないけど、神殿の外で妹を待つことぐらいはできるだろう?」
確かにそうなのかな?外で待つのはダメとはだれも言っていないものね。
「え、ええ...。わかったわ」
少しおかしい気もするけれど...。
「アリエステア」
「なあに?」
と、お兄さまを見上げる。
「はい」
お兄さまは優しげにそう言うと、わたくしに手を差し出す。
それにわたくしはお兄さまの手を握る。
「アリエス、アレン、急ぎなさい」
「「はい!」」
そのまま一緒に手をつないだままお兄さまには馬車の中へとエスコートしてもらった。
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神殿へと向かっている中、わたくし以外は楽しく談笑している。
わたくしの場合、すこし前から体が固くなってきた。
「それで、僕のときは両方3日ぐらい動くのが辛かったけれど、父上と母上はどうでしたか?」
「そうだな、洗礼の儀の後は2日間だが、魔力の儀では昏倒寸前になってしまったから、4日は寝込んだ記憶がある。マリアンナのときはどうだったかい?」
「そうねえ、確か...体の痛みが取れたのは2日経ってからではなかったかしら?魔力の儀は体験したことがないから存じませんけど」
はぁ.....。さっきからずっと、これを話してばっかりなのよ。自分の儀式のときはどうだったかって。
特に今なんて、何日間調子が悪かったかの話だわ。
「さっきからずっと黙っているけど、もしかしてアリエステア、緊張しているのかい?」
はぁ....。
「アリエステア?」
「はっ。あ、す、すみません。な、なんでしょうか?」
自分の顔の前には手をパタパタとさせている、心配顔のお兄さまがあった。
「やっぱり緊張しているんだね」
「.......はい」
自分んが出した声は、耳を研ぎ澄まさないと聞こえないような、風のような声だった。
そんなわたくしを安心させるようにお兄さまは話しかけてくる。
「アリエステアなら大丈夫だよ、父上と母上がそばで見守っているし、僕も待っているから。安心して?」
「う、うん。だいじょうぶだよね!」
まだ不安だけど、さっきよりは落ち着いた。
「ほら、着いたみたいだよ」
更新が遅くてすみません....。
すこし忙しくなってきたので、次の更新も遅くなりそうです。