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愚者の舞い 4-16

 ラテルが後衛である魔法使い、ロスカとパールのガードを、フーニスとルーケは牽制を。

いつもの陣形を整えたが・・・。

正直言って、ルーケに名案は無かった。

ハッキリ言って、ストライクダガーの突進を人間が止める事はまず出来ない。

それは、ラテルの戦士としての力量が不足しているからではなく、それどころか人間の戦士としてかなり優秀なランクに入る。

体格はガッチリし、重戦車と表現してもおかしくは無い筋肉もある。

それでも、ストライクダガーの突進を止める事は不可能なほど、ストライクダガーは重量級の魔物であり、力がある。

それは書物で読んで、知識で知っていた。

そして、厚い皮下脂肪と、硬い皮膚。

痛覚が無いと思えるほど、痛みの伝達が遅い。

多少剣で切りつけても、痛みを脳が認識する頃には、パールかロスカが肉魂に成っている可能性が高い。

それほど鈍いのだ。

つまり、牽制があまり役に立たない事を意味する。

また、普通の剣ではストライクダガーに傷を負わせる事も難しいほど、皮膚が硬い。

さらに脳みそが小さく、本能に忠実で獣のような行動をするが、普通の動物と違って食欲旺盛で獰猛、火も恐れず、逃げる事を知らない猪突猛進タイプだ。

本物ではないが、竜に近い魔物と言える。

「うぉい!? そんなの相手にどう戦えって言うんだ!?」

ルーケの思考と同時に、分かりやすいロスカの説明を聞き、ラテルが思わず絶叫する。

幸い、ストライクダガーは右目を負傷した事で警戒し、立ち上がるなり改めて獲物を物色するのに忙しく、動きを止めていたが、もちろん解決になる筈もない。

「本物の竜と違って、火炎や毒などは吐きません。 ですが、物凄くタフですので気を付けて下さい。」

「・・・よく分かり過ぎて、涙が出そうだぜ。」

苦虫を噛み潰したような顔をしてラテルがそうぼやくと、辺りを物色していたストライクダガーが再びラテルに視線を戻した。

だが、何かを迷っているようで、すぐに襲いかかる気配はない。

そんな様子を伺いながら、ルーケは対策を必死に考えていた。

だが、力こそ正義である魔界でも、持て余すほど獰猛な魔物だ。

生半端な手段は通用しないだろう。

ではどうすれば・・・。

「お前は魔力が無い、人間でも珍しい人間だ。」

そんな時、不意に師の言葉が脳裏に浮かんだ。

なんでこんな時に?

そう疑問に思うが、浮かんでくる言葉は止まらない。

「だがそれは、魔力がほぼ無いと言うだけで、全くと言う訳ではない。 言うなれば、お前は空の水袋を持っているだけなんだ。」

「・・・? え~っと、どう言う事ですか?」

「簡単に説明し過ぎたな。 いいか、人間に限らず、生物は必ず魔力を体内に持っている。 同じ種族でも、その持てる量と、容量に差はあるがな。」

「はぁ。」

「水で例えると、お前の場合、常に持ち歩いている水がほぼ無い状態だ。 だから、勇者の資質はお前には無い。 言うなれば、勇者の資質を持つ者は、普通の人が水筒程度の魔力しか持っていないのに対し、池ほどの器があるんだ。 だからスイッチが入ると一気に魔力を消費して、驚異的な力を発揮する。 お前の場合魔力が無いから、平素からの能力しかない。 だから資質が無いんだ。」

「はぁ。」

「だが、悲嘆する事はない。 お前の場合、器だけはでかいんだ。」

「・・・器だけがでかい? どう言う事ですか?」

「つまり、ため池があるとするだろ? お前は常にカラカラの干からびたため池だ。 だが、入れる器だけはある。 ため池なら、水を流し込んでやればいいだけだ。 そうすりゃ魔法も使える。」

「本当ですか!? どうすれば!?」

「それはな・・・。」

その後の説明に、思わずガックリもしたのだが。

ともかく、ストライクダガーを倒す手段を思い出したのは確かだ。

問題は、その時間を稼げるかなのだが・・・。

ルーケは決断すると、ラテルに向かって叫んだ。

「ラテル! 1分だけ! 1分だけ持ちこたえてくれ!」

言われたラテルは仰天しつつ叫び返した。

「馬鹿言うな! 数秒でももたんぞ!!」

「頼む! 1分で良い!!」

気軽に言いやがる、そうは思うが・・・ルーケがそう言うからには、何か策があるに違いない。

ラテルは覚悟を決めると、ドッシリと腰を低く構え、壁としての役割を果たすべく身構える。

「来るなら来やがれ! 化け物トカゲ!!」

と、気迫を吐こうとした瞬間。

「1分ですね! 分かりました!!」

背後からパールがそう叫ぶなりラテルの前に躍り出て、おもむろにメイスでストライクダガーの腹を殴り付けて誰もいない、ルーケとは正反対の位置へ離れた。

あまりに予想外の行動に、ラテル達どころかストライクダガーもキョトンとした。

「ほら! こっちよ脳足りんのトカゲ!」

「グル?」

幸いと言うべきか、ストライクダガーは目が悪い。

獲物と狙い定め、睨んでいたラテルをすり抜ける様にパールが後ろから出て来たために、獲物が分裂したように見えて戸惑った。

「いや! こっちだトカゲ!!」

「何言ってるの! こっちだよ!」

そこへ、ラテルとフーニスも慌てて騒ぎたてたために、尚更戸惑った。

ただ、そんな混乱は長くは続かない。

欲望と言うか、本能に忠実な獣だけに、食欲が再びわき上がり、些細な事などどうでもよくなる。

と言うか、元々深く考えられるほど脳みそが無いのだが。

分裂しようがどうしようが、要は食べ物が増えただけの事。

なら、一番美味しいのはどれだ?

クンクンと犬のように周囲の匂いを嗅ぎ、ストライクダガーはクルリと獲物に向けて身を向けた。

その先にいるのは、パール。

パールは重い荷物を背負ってこの丘の山頂に登って来た上に、ラテルと戦ってもいる。

つまり、汗を大量に掻いて、体臭を一番発していたのだ。

「やべぇ! こっちだ化けっ!」

ストライクダガーが誰を狙うのか確認するために、顔を向けたのが失敗だった。

向きを変えると同時に、死角を猛烈な勢いで尻尾が振られていたのだ。

有無を言わさず跳ね飛ばされたラテルに仲間の注意が奪われた瞬間、ストライクダガーは一気にパール目掛けて突進した。

寸前で気が付いたパールは、咄嗟に横に跳躍し、何とかそのアギトから逃れたが、無様に転倒してしまった。

しまった、と、後悔してももう遅い。

そこへ飛んで来たダガーがこめかみに当たるが、硬い皮膚で跳ね返されてしまい、注意を逸らす事さえ出来ずに終わる。

フーニスが己の非力さを嘆く暇もあればこそ、ストライクダガーは大きく口を開けて、パールに噛みつこうとした。

「こっちだ化け物!!」

すいません。

家庭の事情により、しばし離れていました。

これ以降もなかなか書けないかもしれませんが、書ける時に書いていこうと思います。

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