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未来暗澹

 





「こんなにたくさんオーク肉っ!凄いっ!!」


「ご馳走だね!お父さんお母さん!!」


「久しぶりに肉をたくさん食べられるぞっ!」


「パパ〜ママ〜いっぱい食べていいの〜?」


「ええ。お腹いっぱい食べていいのよ」


「ありがとうございます騎士様!!」


 村の広場に大勢の人々が集まり腑分けされた大量のオーク肉に嬉々とする。


「たまたま通りかかって退治しただけであります。いっぱいハンティングしたからみんなで仲良く食べるであります」


 紅い髪の美人でグラマラスな女騎士がニコニコと笑みを浮かべ村人たちにオーク肉を配っている。


 その様子を村人が並ぶ列の端から見ているミレイとイナンナ。


「食べきれないからみんなに分けるってさ。流石に食い意地はったハリティアでも、あれだけの肉はどうにも出来なかったからな」


「でもかなりの量を平らげていましたよね。彼女の胃袋は魔王様のアイテムボックス並みに許容量がありそうです」


 森の中で捌いたオークを焼いた端からガツガツかっ喰らうバーバリン女騎士にドン引きしながら火起こしを手伝ったミレイ。


 だがやはり量が多かったらしくハリティアは満腹になった。それで余ったオーク肉についてオレは村に持って帰って配るようにハリティアに指示を出した。


 旅の女騎士が村近くの森に潜む危険なオーク集団を偶然にも発見。これを討伐。それを偶然にも見かけたオレたち。すぐに村人たちに知らせてオーク肉を回収作業させた。村人たちは危険な魔獣を退治してくれ尚且つ食料を提供してくれた女騎士に感謝感激し村に招き入れてた。


 無限に近いアイテムストレージのチート能力を持つオレがオーク肉を収納して運ぶのは却下だ。ここは自然な流れを演出しなければならない。


 今、ハリティアは村のちょっとした英雄としての来賓客として対応されて、村の特産のワインを勧められてガブ飲みしてやがる。すでにほっぺた赤ら顔だ。酔っ払ってボロ出すなよな?


「………こんな田舎の村の近くにオークみたいな個体が群れるなんて今まで無かったのに………魔王を倒してから魔物の生態系が変わったのかしら………だとしても違和感が………」


 オレたちの隣りにオレの母親である元勇者兼聖女、イリアが訝しげに大きなお腹を抱えて女騎士と村人たちを見ている。


「………貴方たちが無事で本当に良かった。まさか偶然、旅の騎士様と遭遇するなんて。私が身重じゃなかったらすぐさま素っ飛んで行ったところだわ」


「何だか森の奥が騒がしかったから気になって様子を調べに行ったの。そしたらあの騎士のお姉さんが魔物と戦っていたのよ。凄く強くてあっという間に豚の魔物をバッサバッサ倒しちゃったのっ!」


 オレは興奮気味に棒切れを構えて、えいやっと振る。どうだ?我ながら無邪気な幼女らしさが出てるだろ?あんまり余計な事して怪しまれたら不味いからなあ。


「………申し訳ございません奥様。私が付いていながら………ミレイお嬢様がどうしてもと言うので………怪我などはございませんでしたが、お叱りなら私がお受けしますので、どうかよしなに………」


 イナンナがさも申し訳なさげに頭を下げる。ムムッ、なんかオレが悪いみたいな感じにしてやがる。まあ確かにオレがやたらとゴブリンスレイヤーしてたからなんだげどもな。


「………ごめんなさい、お母さん。イナンナさんは悪くないの。私がワガママ言ったからなの。イナンナさんを叱らないで?」


 ウルウルお目々でイリヤを見上げるオレ様。


 喰らえっ!必殺、幼女泣き落としっ!!すべての紳士(ロリコン)たちがスタンディングオベーションして拍手喝采するだろう演技力を発揮する。


「………大丈夫。怒ってなんかいないから。貴方たちが無事でいてくれただけでいいの。あの騎士様には感謝してるし、機会があれば是非うちに寄ってもらって夕食をご馳走したいわ」


 イリヤは穏やかな笑みを浮かべる。


 ふぅ。とりあえずは何とかなったか。あとはハリティアの今後の位置付けを如何様にするかだ。暫くは村に滞在することになるだろうからな。どうしようか。


「おーい!イリヤ、ミレイ!こんなにたくさんオーク肉分けて貰ったぞ!」


 我が父、テオドアが手押し車に積んだ大量のオーク肉の切り身をえっちらおっちら運んでくる。


「まあっ。ふふ、それじゃあ今夜は腕によりをかけてご馳走作らなきゃ。イナンナさんお手伝いお願いね」


「かしこまりました奥様」


 イリアがそろそろ臨月に近いデカ腹を揺らし二の腕を巻くり、イナンナが追従する。


「わぁ〜!凄いお肉!食べきれないよう!」


 正直あれほどスプラッタ現場見た後に食欲は沸かないけど、食料には助かる。今後もオークはポップするだろうから定期的に狩りたい。オレのレベルアップも兼ねて。その際にはハリティアを有効活用しよう。


「余ったお肉は干し肉と塩漬けにしましょう。これだけあるなら保存食としても丁度いいわね」


 肉を運ぶ若い父、笑顔の幼女、大きなお腹の若い母、静かに追従するお手伝いさん。


 村の人々もニコニコと朗らか笑顔でオーク肉を持って家族とともに家路に急ぐ。今夜は村中でご馳走だ。


 ああ、順風満帆だ。


 オレは母、否、妻イリヤの手を握り歩く。


 この調子で他のかつての眷属のメス奴隷たちが、ハリティアのように少しずつオレの下に集まってくるかもしれない。


 今はその下地と基盤をじっくりと固めていこう。


 くくく、早くオレ様のかつてブイブイ言わせていた股間部の自慢のマイ息子を復活させてメス奴隷たちをアンアン可愛がってやりたいぜ。


 夕陽が傾き、家族と語らい歩む幼げな少女の影をまざまざと長く切り取り映し出す。


 ニチャァと口が裂け嗤う紅い瞳の悍ましい暗影が村に昏い闇を落とした。











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