魔王再誕2
古来よりラピスタリアに栄えた七つの王国に暗黒の流星が瞬いた。
天から降ったその黒き星より魔王が産まれ、長年の繁栄を脅かされようとしていた。
闇の暗黒魔導の力を用いて、大陸各地の町や村を襲い人々を魔族に堕としめる悪辣なる魔王。
邪悪の尖兵と成り果てた魔王の配下に侵略され、やがて世界中の主要都市を征服し、恐怖と混沌をもたらした。
魔王を倒さなければ、遠からずラピスタリアは滅亡するだろう。
幾多の英傑、英雄、勇者が魔王を討たんと赴くが、誰一人として生きて還る者はなかった。
誰もが絶望に打ちひしがれ、誰もが新たなる勇者の到来を待ち侘びた。
その切なる願いが届いたのか、ひとりの美しい乙女が神によって遣わされた。
その者、聖女と呼ばれ人々に路を標べ、魔王の悪しき術に堕ちた人々を救う。
聖女は光の力により魔王の暗黒魔導の力を破り、ついにこれを討ち倒す。
こうしてラピスタリアは勇敢なる聖女の活躍によって恐ろしい魔王の支配から解放されて平和が訪れたのだ。
ラピスタリア陰史 〜光と影、聖女と魔王〜
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長閑な田舎の農村。
田畑や放牧された家畜の牧歌的な雰囲気が漂う村の一角の民家から赤ん坊の元気な泣き声が木霊する。
「……元気な女の子だ。ほら、銀色の髪と輝く瞳がキミにそっくりだよ。この子は将来凄い美人になるぞ、イリア」
年若い青年が布地に包まれた赤ん坊を優しく抱いてベッドに横たわる今しがた産んだ我が子の母親に見せる。
「……ええ、そうね。でも顔付きはテオドア、あなたにそっくりよ。きっと優しくて思いやりのある頭の良い子になるわ」
銀髪の年若い女性は汗だくで息を荒げながら、震える細い指で小さな愛おしい娘の柔らかな頰をそっと撫でる。
頰を撫でられた赤ん坊はむず痒いのか、くしゃっと顔にシワを寄せるとぐずり出す。
「あらあら、お腹が空いたのかしら。さあ、ママのミルクを召し上がれ」
女性は自分の亭主である青年の男性から赤ん坊を静かに受け取ると、肌着を緩めて乳房を出してぐずる赤ん坊の口に当てがう。
すると赤ん坊はぐずりながらも母親の乳房に吸い付き始める。
その様子を優しく温かく笑顔で見守るふたりの若い夫婦。
新しい命の誕生に自然とふたりの頰に涙が零れる。
自分たちの下へ産まれて来てくれてありがとう。
…………ふう、やっとこさ外に出られたぞ。
いい加減腹ん中は飽き飽きしてたところだ。
しかし、こいつらなかなか子作りしやがらないから時間かかったぞ。
まったく……ガキのままごとじゃないんだ。ささっとやることやりやがれってんだ。
まさかキスはおろか、ろくに手も繋いだことない恋愛チェリーどもとは夢にも思わなかったぜ。
ま、オレ様をブッ殺した勇猛聖女様の子宮の中は大層居心地良かったがな。
えっ?オレ様が誰かって?
おいおい、オレ様だよオレ様。
オレ様詐欺じゃないぞ。
みんな大好き、魔王様だよ!
いや〜、転生の秘術上手くいったね。
オレ様のとっておきのチート能力。
それは女の子宮に憑依転生出来ること。
発動条件はオレ様が死ぬ事とと、他にも色々制限があるんだが、上手く発動してくれたな。
聖女がオレ様を殺した瞬間、オレ様の魂が聖女の卵子に憑依したんだ。
つまり聖女はオレ様を殺したと同時に間接的に受精しちまった訳だ。
処女のまま妊娠したんだよ。イエスキリストのマリア様みたいに処女懐妊だ。
だが、あくまでも仮初めの受胎だ。
受肉するには本物の新鮮な精子が必要だから、ずっと腹ん中で待ってたんだが……こいつら結婚してもまったくどっちも手を出しやがらねえときたもんだ。
ちなみに聖女は元々ド田舎の農村出身者で、この旦那の男とは幼馴染みで将来を誓い合った仲なんだそうな。
だけどくそったれの神に神託を受けて聖女化。
力に目覚め、魔王であるオレ様を倒すべく、愛しい婚約者を村に残して冒険の旅に出た〜云々(うんぬん)かんぬん。
そんで仲間を募ってオレ様を倒して、生まれ故郷に戻ってきて、こののほほーんとしたバカ面の気が優しいだけの農家の長男と結婚した。
正直なんでこんなダサい田舎暮らしを選んだのか理解に苦しむね。
聖女として時の人になり、持ち前の美貌で周りからは求婚されまくってた。一国の王や王子、大貴族や王国騎士とか一生楽に暮らせる財力も力もあるのに全部断っちまった。
周りの連中も何で?って顔してたしな。
幾ばくかの報奨金だけを貰って、こんな辺鄙な何にもない退屈な農作業しかやる事ない田舎村に魅了があるとも思えないから、やっぱり好きな男のところが良かったのか?
女心は解らねえわな。ま、オレ様はそんな女心をぶち壊して好き放題滅茶苦茶するのが大好きなんだがな!
そんなこんなで結婚したふたり。
高校生ぐらいの歳で結婚したから、やりたい盛り。こりゃ若さゆえに毎日お盛んかと思いきや、全然ことに至らない。
あれ?どした?何もしないの?
来る日も来る日も農作業の日々。
ふたりとも仲睦まじくいい感じなんだが、そっち方面はからっきしだった。
ああ、こいつら駄目だ。
優柔不断な童貞と、どうしたらいいかさっぱり知識がない処女。これじゃいつまでたってもオレ様が転生出来ないと思ったオレ様。
だから毎日ちょっとずつ聖女の身体からオスを発情させる催淫フェロモン出して旦那をその気にさせてたんだけど、こいつも童貞丸出しの若葉マーク初心者だからかなり手を焼いたぜ。
そうしてやっとのことで四苦八苦しながらお互いおっ始めてくれたんたんだ。
あっ、聖女の処女膜はオレ様がとっくに胎内で食っちまったから無い。
初めてなのに痛くないのを不思議がってたけどな(笑)。
んでもって待ちに待った精子くんたちはオレ様の栄養として魔力変換して喰らい、代わりにオレ様の精子を精製し、受精卵に送り込んだ。
残念だったな、聖女の旦那。お前の精子は全てオレ様の栄養になっちまったよ。この聖女の卵子は最初からオレ様が予約済みだったんだよ。
聖女の新鮮な卵子ちゃんにオレ様の何億もの精子くんたちが群がり、プチプチ中に入り込み蹂躙していく様は圧巻だった。
そして無事にオレ様の子供を受精。
この孕んだ胎児の肉体がオレ様の新しい身体になるって寸法よ。
正真正銘オレ様が孕ませたオレ様の赤ん坊。
くうぅぅ、やっぱりこの瞬間は堪らんね。
オスがメスを自分のものにした瞬間は何物にも変えがたい征服感が満ち満ちる。
残念、旦那くん!聖女の子宮はもうオレ様のものだから今後キミが何回やってもキミの子供は永遠に産まれないよ!代わりにオレ様の子供が自動的に量産されまくるよ!やったね!
聖女はオレ様を倒したことで、倒すために必要だった神から授かった聖なる力もチートな能力も失っているからオレ様という存在を認識出来ない。
でも腕っ節はAランク冒険者に匹敵するからまだまだ油断は出来ない。
現役を過ぎたとはいえ、感もまだまだ鋭いからオレ様の存在を気取られてはマズイ。
だから子宮にオレ様の淫紋を刻んでおく。
少しずつ気づかれないように胎内から魔力を脳内に送り続ける。
慎重にゆっくりとじわじわとこれからも洗脳しながら活動しよう。
いずれは完全なオレ様の忠実な肉人形になるように。
あぁ〜楽しみだな!
ヂュッパヂュッパとオレ様の母親であり、妻であるおっぱいに夢中でむしゃぶり付きながら甘い母乳に空腹感を満たす感覚に酔いしれ、オレ様は肝心なことを忘れていることに気付いていなかった。