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トーチカ

中野は、砂浜の先に広がる草原を進んだ。今でこそ草木がおおい茂っているが、つい80年前は火山ガスが吹き出す植物が育たない場所であっただろう。しだいに木々が見え始めるとそれらはは痩せこけた土壌に根をはり林を作っていた。 あちらこちらにシャーマン戦車が顔を出しここが激戦の島であったことを思い知らされる。


(巾着袋…)


中野は、おもむろに巾着袋を開けた。


ボド


まさにそのような重さであった。開けた手のひらにはずっしりと重さを感じる。和紙に包まれた円型の何が、中野の手の上にあった。幾重にも巻かれた和紙を中野は、剥がしてゆくとそこには、一つの星型の金属製のバッチが現れた。


「珍しいものをお持ちですね」


いつの間にか考古学者の辻は、中野の手の上のものを興味深そうに見ていた。


「これは、勲章のたぐいのものですね。それもかなり立派なものです。僕の範囲ではないので詳しいことはわかりませんが…」


(艦長は、こんなもの持っていたのか…)


だが、一体なぜどうして彼が勲章を持っているのか、そしてはたまたなぜ専門外の中野にもたせたのか。


気づくと辻以外の研究者たちも物珍しそうにそれを見ていた。


「中野さんの親族のものですか?」


一人が中野に問いかける。


(弱ったな…艦長のものとは言い難い)


わざわざ中野だけを甲板に呼び渡したものだ。


「ええ、私の実家にあったものです。」


中野は、本当のことは黙っておくことにした。事実、ひいおじは戦時中軍馬の治療法で褒賞を得ている。


(調べられても不思議には思われないだろう。)


辻は、少し驚いていたが


「いいお守りになりますよ。大切にしてください」




その頃あけぼのでは、緊張が走っていた。


「まさに、魔の海域だな」


副船長は、コーヒーをすすりニアニアしながら、艦長の操艦を見ていた。しかし他の船員としては恐怖以外の何物でもない。絶えず船内には衝突警告ブザーが鳴りっぱなしだからだ。


「副船長、なにニアニアしながらコーヒー飲んでるんですか」


航海士の加藤は、思わず声を上げた。


あけぼのは、左右を暗礁でできた迷路を的確に道を当て進んでいた。


「加藤、彼を見てみろあれは間違いなく海の男だ。」


そう言うと、何故か副船長は窓の外を指さした。


「ヒィ!!」


思わず加藤は、奇声を上げた。あろうことか、そこには機雷が暗礁に引っかかり海面をぷかぷかと浮いていた。


「この潮の流れで船を手首のように操れる船長は少ない。わかったら双眼鏡を覗いて機雷探しを手伝ってくれ。」


あけぼのは、回避行動を取るかのように右へ左へと突き進んでいた。副船長は、夏の空を見上げた。


○▽○


空高いところから太陽が600隻の船をギラギラと照らしている。その最前線に一隻の船がいた。米巡洋艦ペンサコーラは、煙が立つ島に向けなおも攻撃を続けていた。怒り狂った山は、いたるところから白煙を吹き、砲弾と言うなの噴石を手当たりしだいに飛ばしていた。


「ジグザグ航行開始!」


ペンサコーラは、砲弾を避けるため左右に舵をきった。船の左右には次々と大きな水柱が立った。砲弾が艦橋のスレスレを飛んださいは、思わず息を呑んだ。


「前方に暗礁があります。ぶつかる!」


突然のことにペンサコーラは、急旋回しつつ砲撃を続けたが山に対して90度の位置にたっしてしまった。


「伏せろ!!」


その声と同時に甲板の艦載機が爆発した。続いてそこら中に水柱が上がり運悪く2番砲塔の弾薬庫に直撃弾が打ち込まれた。誰もが顔を青ざめたその瞬間。


ドカーン


まさにその言葉通りだった。爆風とともに打ち上げ花火のごとく砲塔が空を舞うと海へと落ちていった。


「ダメコン急げー」


ペンサコーラは、すぐさま反転するも爆風により艦橋の窓は粉々に割れるか蜘蛛の巣のようになり視界を遮ってしまっていた。


「救護を早く」


「消火は、まだか早く注水を」


甲板には、慌てふためく声と肉片と血の海が広がっていた。しかし幸いにも機関に損傷はなかった。全速力で退避をするペンサコーラをなおも山は追いかけていたが、アイオワが鉄壁の如く山とペンサコーラの間に割って入った。


「万里の長城だ」


誰がそうつぶやいた。


アイオワは、一つたりとも砲弾を通さなかった。その巨体についた巨大な砲台からは煙が立ち上ってた。そして砲身は、憎き山へと向けられていた。山の中腹から土煙が上がると山肌は崩れ白煙を吹くことはなくなった。


○△○


 中野ら一行は、島の奥へと向かっていた。擬態して中野らを待ってたかのように木々に埋もれたトーチカから一式機動四十七粍砲(対戦車砲)がニョキっと砲身を出し80年がたった今もなお(きた)る戦車を待ち続けていた。


「米軍の資料が正しければ、浜辺から200ヤードほどのこの場所で戦闘の火蓋が切られたと思います。」


辻が古い地図を見ながらそう伝えた。


「辺を探してみましょう。何か出てくるかもしれない」


そう調査隊長の鈴村が、指示を出した。それぞれがあちらこちらを探した。割れたヘルメットを皮切りに銃、砲弾、水筒…そして人骨。辻が突然顔をあげるると


「記録が正しいのであれば、対戦車砲1つでアムトラック20両、LCT3両、ブルドーザー1台を破壊した軍人がいるとか。」


彼の情報量は、とても多くなおかつ多岐にわたっている。


「そりゃすごいな」


(ホントかな?)


だが、彼の情報は、公文書など正確なところから取られている。


鈴村が話を付け加える


「ええ、それは中村少尉ですね、極めて優秀かつ有能な軍人ですよ。彼は、撃破ごトーチカが崩れたために戦死したとされていますが」


予想よりも鬱蒼とした林は、無数にあるであろうトウチカを隠し調査隊長の発見を拒んでいた。


 ○▽○


 トーチカの上空スレスレを米海軍コルセア戦闘機が次々と飛んでいく。まさにワルサーが流れる場面である。120機の戦闘機は、機銃掃射をしながらナパーム弾をそこら中にばらまきわずかに生えた草木を、燃やしにかかった。 これにはわけがある。


 少し前 太平洋上空、米海軍戦闘爆撃機海兵隊所属機


「海軍の奴らてこづってるらしいな〜」


操縦士は、笑い飛ばすように無線を飛ばした。


「あいつらは、レベルが低いんだよ。あんなのじゃ女とピーとかピーとかできねーよ! ハーハー」


 海兵隊は、技術は高いがまぁ程度は低い


「あいつらを励ましてやろうぜ!」


 ついでにプライドも高い


「そりゃいい真珠湾(パールハーバー)のお返しだ派手に飛んでやろうぜ」


無線を聞いていた指揮官の声が響く


「機体が海岸の砂をこするほど低空飛行せよ」


48機の戦闘爆撃機が一斉に急降下すると、海面スレスレを飛び、まず20機が6隻の戦艦の上を1回転しながら飛行していった。


アーカンソーの指揮官は思わず双眼鏡を目からはなしてしまった。


あの野郎(海兵隊)、ありゃ攻撃というより見世物だ!おばあちゃん(アーカンソー)をもう少し大切に扱ってほしいもんだ」


無線が艦内に響き渡る「ヒーハー」


逆さの機体からガッツポーズをするパイロットは、声を張り上げていた。

そのまま海岸駆け上がると次々と爆撃を開始した。

しかしさらに28機が怒り狂う山の南北稜線に現れた。山肌スレスレで、7機ごとに分かれるとあざ笑うがごとく山肌スレスレを飛行した。


「あれはもう曲芸飛行だな」


空中管制官は、眉をひそめた。

辺一面に火の手が上がったが鉄筋コンクリート造りのトーチカは、全くびくともしなかった。騒がしいタカ共がただ外でぎゃあぎゃあと騒いでいるだけであった。トーチカから空を見上げた日本人は、一言こういった。


「騒々しい奴らめ晩飯の足しにしてやる」

全金属製のタカは食えないが、蚊の音を聞いたら叩きたくなるのと同じである。高射砲に手をかけると曲芸飛行中のタカを叩きにかかった。そして案の定、立派なとりの丸焼きが出来上がってしまった。 アーカンソーの航空管制官が、頭を抱えたのはいうまでもない。


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