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明と白田カップルは車を走らせ、遠く離れた場所へ向かっていた。



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車を走らせて一時間。

今は山の中の高速道路を走っていた。

向かう場所は、静かでのどかな場所。

そこでピクニックをしようと、白田は言った。

てっきり賑わう街へ行き、そこで食事でもするのかと思っていた明。

ピクニックと言うのだから、お弁当の用意はしているのだろう。


「なぁ・・・この車、まだ新しいよな」


車に乗った時、少しばかり違和感を感じた。

だが色々と会話をしていく中で、その違和感は頭の片隅に追いやられていた。

それが会話が途切れた瞬間に思い出され、運転席の男に顔を向けて問い掛ける。


「うん。実はね・・・・納車がつい3日前だったんだ」


「え・・・買い替えか?」


「ううん。車が無くても会社の車を使ってたから不便は無かったんだけどね・・・明と色んな所へ行きたいなと思って、買っちゃったんだ」


「・・・・・・・・・え・・・?は?わざわざ?」


「うん。わざわざ」


さすがの明もコレには呆れる。

こんないい車、そう簡単に買えるものでもないし、切っ掛けが自分と恋人になったから・・・・なんて。

だが付き合い出したのは一週間前、新車を買ってすぐに手元に届くとは思えない。


「・・・・買ったのいつ?」


「ん〜〜三週間前かな」


「それって・・・まだそうなるなんて、解ってね〜じゃねぇ〜かよ」


「なるものだと俺は思ってたよ」


付き合うことが解りきっていた男の言葉に、明は言葉をつまらせる。


「俺も明の事好きだったし、明もそうだと思ってたから・・・遅かれ早かれ恋人になると思ってた」


真っ直ぐな道路に向けていた白田の視線が、明に向く。

優しく微笑む男の顔に、明は思わず頬が熱くなるのを感じた。

自信家めっ!と皮肉りたい気持ちもあるが、それよりも嬉しさが込み上げてくる。

どういう顔をしていいのか解らず、明は助手席の窓に顔を向ける。

体に触れる行為やキスは平気でするくせに、こういう空気はどうも苦手と感じてしまう。

胸がキュンキュンして、甘くうずく。

何も言わずそっぽを向いてしまった明。

だが運転席の男はそんな彼の気持ちが解っているのか、クスリと笑いを漏らした。


「もう少ししたら、サービスエリアがあるから一度休憩しようか」


「ん」


顔を向けずに返事を返す明の髪を、一度だけ男の手が撫でる。

すぐに離れた男の手に物足りなさを感じつつ、明は流れる景色を黙ってみていた。


それから白田の言った通り、数分でサービスエリアの標識が見えてきた。

やがて大きな駐車場へと車が入っていき、停止。

休日というだけあって、エリア内は車も人も多い。

2人は車から降りて、店舗が並ぶ場所へと足を運ぶ。


「明、飲み物買おうか?」


「ん」


肩を並べて自販機コーナーへ向かう2人。

その場に居た女性たちの視線が、2人を追い掛けてくる。


「明は、ブラックだよね?」


「ん〜〜違うの飲もうかな・・・・ちょっとまて」


「どうかした?」


「お前が出そうとかするなよ」


自販機の前で財布を取り出す白田に、明は手でそれを制す。


「俺は女じゃないし。お前は運転してんだから、掛かる金は俺が払うのが道理だろ」


「そんな事気にしなくていいのに」


そう言うと思っていた明は呆れた視線を男に投げかけ「お前、逆だったらどうするんだよ」と問いかけた。

男は視線を斜め上に向けて一瞬の間の後、明に顔を向けて困ったように笑う。


「じゃ明、ご馳走になるね」


と答えた。

明の気持ちを理解したようで、白田は財布をパンツのポケットに直した。


「お前は何飲むんだ?」


「ねぇ、明・・・そろそろ名前で呼んでくれないかな?」


「!?」


コインを自販機に入れていた明の手が、止まる。

唐突に要求された名前呼び。

白田さんと会社で呼ぶ以外、普段はたまに白田と呼び捨てだが、殆どが【お前】呼び。


「・・・・・・・」


何故今言うんだと、責めるような目を男に向ける。

そんな明に、期待いっぱいのニコニコとした表情。


「・・・・・・・・まだ早い」


「早いって」


「早く押さね〜と、俺が適当に押すぞ」


と明はお汁粉のボタンに指を乗せる。


「解ったから、それ押さないで」


と今にもボタンを押しそうな明の手を握り、止める。

そしてその手を握ったまま、ミルクたっぷりのカフェオレのボタンに明の指先を押し付ける。


「?」


白田はボタンを押したタイミングより早く、機械が反応した事に首をかしげた。


「あっ!明!?」


そして握っていない方の明の手が、お汁粉のボタンを押しているのに気がついた。


「酷い・・・」


「甘いの好きなんだろ」


「だからって、お汁粉で喉は潤せないよ」


「責任持って飲めよ」


と取り出し口から出てきたお汁粉を、白田の手に押し付ける。

ガックリと肩を落としている男にしてやったりと笑い飛ばし、今度は自分の番とコインを入れてブラックコーヒーのボタンに手をのばす。

が・・・・止められた。

白田に背中から覆いかぶさられ、ボタンを押そうとしていた右手の手首を掴まれる。

そして先手を打って、明の左手もガッチリホールド。


「明も好きなの飲めると思ってるの?」


こめかみから聞こえる男の低い声。

ゾクリとした痺れが背中を駆け巡る。


「おいっ!」


くっつきすぎだと抗議する明に、男は楽しそうに明の右手を操る。

そんな2人に、周りの人間は好奇心の目。

だがそれは男同志でイチャついている様には映っておらず、友人同士でふざけて合っていると思っているのだろう。

それに2人は外見だけはピカイチという事も重なっているので、余計に人の目を引きつける。


「あっ!お前!!」


明の手がボタンに押し付けられる。

ガコンと取り出し口に落ちてくる缶。

それを白田が取り出し、明の手に乗せた。


「はい」


「お前なぁ・・・・絶対許さねぇ。覚えてろ」


甘きものが苦手な明の手に収まっている、お汁粉の缶。

明の口から出たのは恨み節だが、本気で怒っているわけじゃない。

やり返したとおかしそうに歯を見せてわらう男に、明も釣られて笑う。

笑いながら自販機コーナーを後にする白田の背中に「逆に喉が乾くだろうが」と言葉と拳をボスンとぶつける。

背中にぶち当たった拳を後手で掴む白田。

そして自然な動作で、明の手を握り直す。


「大丈夫、車にお茶をつんでるから」


「それを先に言えよ」


男に恋人繋ぎされ、そのまま車のある方へと向かう。

明は人前で手を繋ぐ行為に少し戸惑いながらも、その手を振り払わなかった。

どうせこんな遠く離れた場所では、知り合いと会うこともない。

それに、温かく大きな手が心地よく放しがたかった。



82へ続く

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