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会社からの個人所有のEメールアドレスへの通達。
一人一人に警告を与えているように感じた由美。
会社からの個人所有のEメールアドレスへの通達。
一人一人に警告を与えているように感じた由美。
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早朝
ビジネスマンの姿が歩道を埋め尽くす時間帯。
フローラの本社に繋がっているこの歩道も、スーツ姿の人間達が駅からそれぞれの会社へと足を向けている。
大きな会社が多いこの界隈は、川や高速道路に並行している大通りが目の前にあり車の往来も多い。
そんな歩道を会社に向かって歩く由美。
駅でバッタリと出くわした英子と、昨夜のテレビ番組の話題をしていた。
そんな2人の横を、一台のバイクが通り過ぎる。
それ自体、珍しいものではない。
だが運転していた人間はデニムに革ジャンと私服だったが、後ろに乗っていた男性はスーツ姿。
少し珍しい光景。
会話の間でも、由美の頭の片隅にバイクの残像が残る。
そんな時、スマホの通知音が鳴る。
それも由美と英子のスマホが同時に。
いや、周りの一部の人間もだ。
驚いた顔で着信音が鳴るスマホを手にしているのは、フローラの会社の人間ばかりだった。
「え・・・何」
鳴っているスマホを手に、不安げな英子。
「会社から緊急の連絡かしら・・・・」
そう由美は結論つけたが、こんな事は今までなかった。
スマホを起動してみると、Eメールの通知。
送信先は、会社の総務部からだ。
ここで立ち立ち止まっている時間が勿体ないので、メールの内容を確認しながら歩く。
「『社員個人情報漏洩の注意』」
件名を声に出して読む、英子。
それを慌てて止める由美。
「他の会社の人も居るのよっ」
「あっごめん」
素直に謝る英子を許し、由美は件名より後の文章に目を通した。
文面はこうだ。
最近社員の個人情報を外部に漏らしている人間が居ると、電話番号や住所以外にも、交友関係やプライベートな行動まで外部に漏らす行為は個人の情報を流していると同じことにあたる。
ざっくりだが、内容はそう書かれていた。
そして最後は、これを破る場合は然るべき処置をとると締めくくっていた。
言わんとする事は理解できた。
だが通達の方法に疑問が残る。
通常ならば、重役達から各部の人間に注意を促すだろう。
それか社内メールの使用もある。
個人のEメールに始業時間前に送られてくる事に、由美は何か裏でもあるのかと疑ってしまう。
「漏らしたって、誰が誰の情報をだろうね〜」
英子はメールの意図よりも、犯人探しの方に興味が湧いたようだ。
何事も深く考えない彼女に、はぁと由美は溜息をつく。
「あっ!あれって、愛野さんじゃない?」
英子の興味はすでに違うところへいったようだ。
会社の方角に指を指している彼女に、由美はそちらへ視線を向けた。
明だ・・・・。
さっき由美達の脇を通り過ぎたバイクの後ろに乗っていたのは、明だった。
会社の前で停まっているバイク。
明はフルヘルメットを、運転していた男に手渡している。
「ごめんっ、英子。私、先に行く!」
由美は英子の反応を無視して、ヒールを鳴らして小走りで走り出す。
2、3言、明と相手は言葉を交わすと、バイクはその場から走り去った。
ある程度バイクが遠ざかるまで見ていた明は、そのまま会社の方へと体を向けて歩き出す。
「ちょっと!今の何!?」
走り寄る由美は勢いがあまり、明の肩にぶつかった。
だがそれよりも、今の光景を問いただすのが先。
「いってねぇ〜なぁ、朝から当たり屋ですか・・・桜庭主任」
「今はいいのよ、そんな事!だから今の何!?そして今の誰!?」
明は面倒くさそうな顔で、会社のエントランスへと入る。
エントランスには何時も以上に人が多く居た。
皆、スマホを手にしている。
事務所に向かおうとせず、先ほどのメールの話に夢中だ。
そんな人達の横を通り過ぎる、明と由美。
「何よ、答えられないの!?浮気?ねぇ浮気?」
「何、訳の解らねぇ〜こと言ってんだよ。雅だし」
「嘘つき、後ろ姿全然違ってたわよ」
「何で、そんなこと解るんだよ・・・」
エレベーターを待っている明の横で、「イケメンの事なら解るのよ!」とドヤ顔をする。
もちろん、馬鹿にしたような表情を向けられるのは予想済み。
そうは言っても、雅がゲイだと見抜けなかった事はこの際おいておく。
チンとエレベーターが到着し、扉が開ききる前に明は中に入る。
その後に続く由美は、くるりと体を反転させるとエントラスを指を指した。
そして・・・・
「あっ社長!」
由美の棒読みの言葉に、エレベーターに乗り込もうとした人の足が止まる。
そして皆がエントラスを振り返ったのを見計らい、由美はエレベーターの階数ボタンを押しそして閉ボタンを連打。
「おい・・・何やってんだよ」
奇妙な由美の行動に、明は若干引き気味。
「これ!!」
由美はスマホの画面を明の目の前に突きつけた。
「どういう事よ!」
「はぁ?会社からのメールだろうが」
「関係してるんでしょ?バイクで来た事と、このメールは関係してるんじゃないの?」
「何でそう思うんだよ」
「このメール異様すぎるわ。個人情報を外部に漏らした人が居るなんて嘘よ。そんな人が居たなら既に処分が下されて、社員を集めて注意を促す程度で終わるわよ。個人の所有するメールにわざわざ送るなんて、一人一人に警告しているようなものよ。個人の情報を流すな・・・・住所や電話番号なら解るけど、個々個人の交友関係とかプライベートの事って普通書く?わざわざ書くような事でもない事を、書く必要があったんでしょ。ねぇ教えてよ、何があったの」
これは興味本位ではなく、明を心配しての事。
真剣な顔で、明の顔をじっと見る由美。
「・・・・・・・はぁ」
明は大きく溜息を吐く。
そのタイミングで、エレベーターの扉が開く。
明はエレベーターを降りながら、口を開いた。
「倖田の婆が、興信所雇って俺のこと調べてる」
由美は慌てて、明を追いかける。
「えっ!?何で今頃!?」
「バッタリ出くわしたから」
「何それ、自分から追い出しといて!!ちょっと連れてきなさいよ!私がガツンと言ってやるわよ!」
人様の家庭の事で怒り心頭になる由美は、引き止めるように明の腕を掴む。
本当にガツンと言いたげな由美に、明はふっと笑いを漏らす。
「まぁそういう事だ」
「じゃ〜あのバイクの男は?」
「昔の友人。雅のバイクが用意出来るまで、送り迎えしてもらう・・・・つ~か朝は来なくていいって言ったんだけどな」
「白田さん知ってるの?」
「・・・・・・何も言うなよ」
「あんたが言わないのに、私から言えるわけないでしょっ」
「・・・・?・・なぁ、何でそこで白田の名前が出るんだ?」
「え・・・・・」
明の反応に、逆に呆然としてしまう由美。
あれだけ白田と明の仲はダダ漏れなのに・・・・まさか自分で気づいていないとでも思っていたのだろうか。
付き合ってないにしても、付き合う寸前のような2人は、間近で見ていた人間ならばお互いに想っている事は感じ取れる。
白田の明に対する好き好きビームもそうだが、明が白田に向ける初めて恋をした小学生男子みたいな態度も解りやすい。
「バレバレだから」
由美は明の肩をポンポンと叩くと、ニヤリと笑い事務所に向かって歩き出した。
「何!?何がだよ!」
背中から聞こえる焦ったような明の問いかけに、由美は「ふふふふはははははっ」と悪代官みたいな笑いで返した。
59へ続く
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