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30

外は肌寒く、寒そうな明に白田はカイロ代わりだと手を繋ぐ。



30



2丁目



明と白田が乗っていたエレベーターが、1階に到着した。

扉が開くとすぐに明は箱から降りる、そして一緒に居た男を気にせずに早足でビルの外へと飛び出した。


「さむっ」


外気の肌寒さに思わず足を止めて、肩をすくめる。


「今日から夜は冷え込むって、天気予報で言っていたよ」


だからお前は、ちゃっかりコート着てたのかよ・・・・

ちゃんと天気予報を見る明だが、まだまだ平気だろうと余裕をかましてスーツのジャケットのみ。

用意周到の男は、抜かり無く薄手のトレンチコートを羽織っていた。


「!?いいっ!要らない!」


明が慌てた様に、声を荒げる。

その原因は、男がコートを脱ぎだしたから。

白田が何も言わなくても、何をしようとしていたかぐらいは察する。


「明が風邪引くと困るよ。明日双葉に来るんだし」


「お前のコートなんか着たら、着せられた感満載だろうが」


身長も、肩幅も違う。

そんな男のコートを着れば、すぐに成長するだろうと大きめにあつらった制服を着ている中学一年生の気分になる。

白田は少し考える素振りを見せ「それも、良いかも」とにこ〜〜と笑う。

お前絶対今、想像しただろう・・・・男の解りやすい反応に、苦々しい表情で相手を睨む。


「そのうち慣れるから、いい」


そう言うと、男は残念そうに肩を落とす。

確かに空気は冷たいが、我慢できないことはない。

駅までの道のりを歩けば、身体も温まってくるだろう。

そう思い、明はうしっと気合を入れて歩き出す。

そして白田も、明の隣に並び歩く。

時折、男の腕が自分の腕に当たる。

近すぎるのだと思い、1歩横にずれるが・・・どうやら勘違いだったようで、離れた分だけ距離を詰める男。

文句を言ってやろうと男を睨んだ瞬間。


「!?」


明の右手が握られた。

骨ばった大きな男の手は優しげに、明の右手を包み込む。

人の体温が、冷たい皮膚にじんわりと染み込んでくる。

そんな心地よさを感じるよりも、恥ずかしさと戸惑いが勝る。


「何!?」


「俺、年中手が温かいって言われるんだ。カイロ代わりにならない?」


そんな問題じゃないと、明は手を振り払おうとした矢先。


「あら〜〜〜雅さんところの明君じゃない〜」


そんな第三者の声に、明はピタリと動きを止める。

2人同時に来た道を振り返ると、丁度フスカルが入っているビルから女性が出てきた所だった。


「あら、あらららら。もしかして噂の明君の彼氏〜?」


嬉しそうに近づいてくる女性は、フカルと同じビルに入っているスナックのママさん。

見た目は女性だが、元は男性。

工事済みで、女性ホルモンのお陰で誰の目から見ても女性だ。


「初めまして〜フスカルの1つ上の階で、お店をやってる秀子です」


「初めまして、白田です」


「やだ〜〜笑顔素敵〜〜。そう、明君この前はありがとう〜、もう本当に助かったわぁ」


「いえ、たまたまなんで・・・」


「何か有ったんですか?」


「それがねぇ〜。前に、エレベーターで酔っぱらいに絡まれちゃったのよ。それで丁度乗り込んできた明君が、その酔っぱらいの襟首掴んでゴミ捨て場に捨てに行ってくれて」


「へ〜そんな事が。明、困ってる人を見ると放っとけないから。ね?」


明の顔を覗き込み「ね?」と訊いてくる白田。

完璧に彼氏面している男に、シラけた目を向けてやりたいが・・・2丁目では恋人のふりをしなくてはならない。


「まぁな」


素っ気なくも返事を返す明に、男は嬉しそうに笑いかける。


「それにしても、本当に噂通りの美男同士のカップルねぇ〜。誰も入る隙無いんじゃないの〜?」


「そうですねぇ・・・俺は、明にメロメロなんですけど・・・・」


メロメロ!?

明はこいつ何を言い出すんだと、男の顔を見る。

Sっ気発動中の白田を確認すると、嫌な予感が過る。


「明は口では何も言ってくれなくて・・・ねぇ俺の事、好き?」


予感は的中。

ちょっとした悪戯心でも、質が悪い。

そこまでしなくても良いだろうが、と叫びたくなるのを必死で抑える。

演技だとしても「好き」なんて、恥ずかしすぎて言えない。

何とか・・・ここを乗り切るには・・・


「はぁ・・・お前意外に、勃たねぇ〜よ」


お得意のシモネタに走ったが、言い終わったと同時にギュッと明を握る手に力が籠もった。

それが何を意味しているか解らず、明は男の反応を確認しようと視線を向ける。

白田はママさんを笑顔で見ているものの、その笑顔は少しぎこちない。


「やだ〜ご馳走様。今度2人で、ガブリエルに飲みに来てね。じゃ〜ね〜」


手を振りながら、上機嫌で去っていくママ。

すると白田は、向かうべき方向に身体を向けて歩き出す。

何も言わないし、明を見ようともしない男に明は不安になる。

もしかして・・・・気持ち悪いと思われた・・・・

考えればノンケ同士、恋人のふりと言えど表面上だけの事だ。

そんなところに、生々しいシモの話をぶっこめば引くのが普通だろう。

嫌われたかも・・・そう思ったら、胸がぎゅ〜と締め付けられる。

何か弁解した方がいいのだろうかと、焦るが・・・・人に弁解などしたことがない明は、どう言えば良いのか解らないと悩む。

あぉぁでもない、こうでもないと頭の中でぐるぐる考えながら、白田の手に引かれて二丁目を歩く明だった。



31へつづく

本当はもう少し長かったのですが、データを上書きしてしまい消えてしまいました。

凹みながら、何とかここまで一気に書き上げた〜〜〜。

(実は元日早々、会社でも12月のデータを1月に上書きして。凹んでました)

イイネorコメントorブックマーク頂けましたら、次も頑張ってUPいたします!

本年も何卒、よろしくお願いいたします!!

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