目覚め -出遇い
空から森に囲まれた集落を望む。
綺麗に整理された区画に木造の家が並ぶ。
「これは・・・」
「ここは我々六柱が創り出した世界のひとつ、ポエシリアレティにあるユーフと呼ばれる村である」
「ポエシリアレティ?」
「そう、優輝殿にはこのポエシリアレティを救っていただきたい。この世界は、人族と魔族とのバランスが拮抗することで調和を保ってきた。それが今ではこんなことになってしまった」
そういって、最高神エネムはある一点を指さす。
そこには、ユーフという村めがけて濁流のごとく押し寄せる、化け物の群れがあった。
「な・・・!」
「こやつらは魔物と呼ばれておる。魔族が生み出し、操ることのできる眷属じゃ」
ものの数分もしないうちに、魔物の群れはユーフに達し、村の外壁をいとも簡単に破壊してしまった。
そして、村の住人へと迫り、場は一気に凄惨な状態へと変わる。
村中に響く叫び声、我が子をかばいながら倒れゆく母親、地面は赤く染まり、砂埃が舞う。
その光景はあまりにもすさまじく、言葉に詰まってしまう。
やがて砂埃が晴れると、村は一気に静まりかえっていた。
魔物の群れは、村の踏襲を果たすと来た方とは別の方角に向けて進みだしていた。
「そう、これが我々の犯した過ちなのだ。我々の道楽で創った世界で、魔族が力を持ちすぎてしまった。しかしそれに気づくには少々遅すぎたのだ。我々はもはや直接力を加えることはできん。故に、優輝殿、何卒我々の願いを聞き届けていただくことはできぬだろうか」
一瞬の沈黙。
現実では想像できない状態に、なんと答えればいいかわからなくなったが、改めて自分の力ではどうしようもないと判断し、依頼を断ろうとする。
「・・・大変申し訳ございませんが、俺にはどうしようも」
そういって、断ろうとしたその時であった。
――――――だれか、助けて
小さくか細い声が聞こえた。
崩れた民家の隙間から一人の少女が見えた。
怪我を負ってはいるが、まだ命はあるようだ。
誰か急いで彼女を助けないと!誰か、誰か、だれか?
そこで、急に気が付く。あぁここには本当の助けなんか来てくれないんだ。
何故自分でもこんな気持ちになったのか説明がつかないが、それはひどく冷たく、悲しい想いだった。
■
気が付くとまた目の前には広大な宇宙が広がっていた。
最高神が待っていたあの部屋だ。
「優輝殿、私の試練はこれで終わりだ。見事、その心を見させてもらった」
「試練?」
「左様。先ほど優輝殿に見てもらったのが私からの試練だったのだ。あそこで、優輝殿の心を見させてもらった。やはり優輝殿は我々と同じ波長をもっておる。それならば、世界を救うことができるやもしれん。否、絶対に救えるはずじゃ。既に優輝殿がここにおられる時間が迫っておる。大変心苦しいが優輝殿の武運を祈っておる。さらばだ」
そういうと、世界は白く反転し、深い深い眠りに落ちるような錯覚を覚える。
不透明な頭の中で、助けを求めたあの少女の姿が浮かぶ。
彼女あの後どうしたんだろう?大丈夫だったかな
あれ?この子は?あの子じゃ・・・ない?