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パーティ




 巨大な角がこちらを狙っている、そう認識した時には回避を始めないと間に合わない。その突進は砲撃を想像させるレベルだ。


「ミジット!」


 叫びつつ横っ飛びに剣を振り、足の力を抜く。7mはあろうかと言う巨体に突っ込まれては交通事故に等しい。当てた剣を支点に素直に吹き飛ばされる。


「はぁっ!」

<ギインッ>


 ミジットの剣が後ろ脚を切りつけるが、音が動物の毛皮じゃない。


 ”ホーンドディア”、ダイアウルフと並び森の四王と言われる一角。フォレストウルフをおやつがわりにバリバリ食べる鹿の凶獣だ。討伐ランクはD


 鹿なのに肉食かよ!って思うが、木や草も食べる雑食らしい。

こいつをミジットとパーティー(ペア?)で狩りに来ている。


 ミジットの斬撃に気を取られた隙に態勢を立て直し、反対側から距離を詰める。四足獣は横が弱い。

だが、間合いが詰まる前に跳躍され、距離を取られた。


 ミジットと肩を並べ2人で2本の剣をホーンドディアに突きつける。

ホーンドディアの目は赤く光り、頭を下げた。来る――


「翼鱗!」「応!」


 聞きなれた型の名前を合図に、左右に分かれ飛び退き様に回転しながらホーンドディアの巨体の通り道に剣を通す。


<<ギャイィィィンッ>>


 飛び込んできた巨体の両側から同時に斬撃が入った。何事もなく着地した姿からは、効いているかわからないが。


「潜刺!」「ああ!」


 それでも振り返る動作が一拍遅れる、隙を突いて左右から間合いを詰めた。ホーンドディアの目が驚愕に開く。


「らぁぁーッ!」

<ゴスッ>


 上がった頭の首元へ走り寄り勢いのまま突き込んだ。剣先は確かに肉を捉えたが浅い!飛び込んだ着地の勢いのまま刺さった剣を横に振るうと、胸元から血が噴き出す。


「ボエェェェェー!」


 それ鹿の鳴き声ちゃう!後ろ脚立ちになった脚にミジットの剣が突き刺さり、バランスが崩れる。


<<ズゥゥン>>


 チャンス!倒れ込んだ胸元を目掛け全体重を乗せた突きを差し込むと、血が噴き出しビクッビクッと身体を痙攣させ、動きを止めた。

 返り血で全身血まみれだよ。うへぇ。


「いい突きだった」

「だろ?」


 拳を突き合わせた。



 Cランク昇格を目指すミジットは、この冬キジフェイの迷宮踏破に挑み断念した。パーティーメンバーが見つからなかったそうだ。


 冬は魔物の被害が減り依頼が減るので、迷宮に出稼ぎに行く冒険者が多い。人が多くなる時期を狙ってアタックをかけたかったらしいのだが、ギルドが斡旋するのは稼ぎを優先する冒険者ばかりで、迷宮踏破を目指すのは固定パーティばかりだったとか。


 そこで目を付けられたのが、Eランクの昇格依頼件数を達成したものの、Dランク昇格条件の護衛依頼を達成できていなかった俺。


 キジフェイの最下層の階層主はCランクのミノタウロスが2体。Eランクでは役不足な大役だが、そこは同じ道場でお互いの実力を知った仲なので問題ない。

 が、2人ではまだとても無理だ。だが、Eランクがいては追加のパーティーメンバーが見つからない。そこで装備の更新を兼ねて、まずはDランク昇格を目指す事になった。

 

 今回は結成したパーティ”双連の剣”でDランク依頼に来ていた訳だ。


「やはりDランク一体に2人がかりでは張り合いがなさすぎるな」


 そう?びびりまくったけど?


「ま、まあな」


「次は最低でもDランク2体にしようじゃないか」


「その前に護衛依頼に付き合ってくれよ」


「わかってるって。さあ、男爵の手勢に報告してくるから血抜きをしておいてくれ」


「ああ、まかされた」



 とは言え、この巨体を吊り上げる訳にもいかない。

首筋に切れ目を入れ、頭を下げる為に穴掘りをはじめる。


 しばらくすると、今回の依頼主の男爵家の人々が細い丸太を持って森に入ってきた。

 森の外までコロで転がしていくようだ。



 王都に来てから1年が経過し、間もなくリバースエイジのリキャストが明けるはずだが、剣の修行が見込みがつかないので引き続き王都で過ごす事にした。


 この冬は迷宮へ向かう冒険者を後目に剣術修行に打ち込んだ。幸い、王都周辺は積雪が少なく、ギルドの依頼の移動に困らなかった事もある。



  名前 : アジフ

  種族 : ヒューマン

  年齢 : 25

Lv : 19


  HP : 156/156(+10)

  MP : 58/58(+9)

  STR : 47(+2)

  VIT : 36(+4)

  INT : 23(+3)

  MND : 29(+2)

  AGI : 31(+1)

  DEX : 25(+4)

  LUK : 11(+0)


スキル

  エラルト語Lv4 リバースエイジLv3 農業Lv3 木工Lv2

  解体Lv4 採取Lv2 盾術Lv5(+1) 革細工Lv2 魔力操作Lv6(+2)

  生活魔法(水/土)剣術Lv7(+3) 暗視Lv1 開錠Lv2


称号

  大地を歩む者 農民 能力神の祝福 冒険者


 指導者について1年間みっちり稽古したので、剣術スキルは一年で驚愕の5LvUPだ。爆上げといってもいい。新たに得たスキルは”開錠”で、夜な夜な鍵を開けていたらLv2まで上がった。

 VITの伸びがいいのは日々ボコボコにされているからだろう。おのれジリド、ありがとう。



 ホーンドディア討伐の依頼主、ロジホット男爵に完了報告をすると感謝されて一晩の歓待を受けた。


 ホーンドディアの状態がよかったので、多めに買取り金額をもらい、懐があたたかい。頭分けしても一人金貨10枚だ。Dランク依頼おいしい。


「盾が限界なんだよなぁ」


「鎧もだろ?キラーアント鎧でミノタウロスは無謀だぞ。紙切れに等しい」


「センチピードでも大差なかろうさ。せめてロックリザード。金貨20枚は下らないな…はぁ」


「昨日のディアもそうだが、大型の魔物に片手盾は有効じゃない。鋼に変えたとろで変わらんぞ。業物のショートソードでも探した方がいいのではないか?」


「む、一理ある」


ミジットの武器は片手半剣とスティレットを自在に使う1.5刀流だ。


 ゆっくりと馬に揺られながらそんな事をしゃべっていると、前方の道端に馬車が止まっているのが見えた。そして、これは血の匂いか?


目線だけでミジットへ合図すると、あごで岩陰を指示した。


 見ると、岩陰から弓が引かれている。即座にヒューガの腹を蹴り、弓の射線に盾を差し込むと


<カイン>


 盾に矢が当たった。



「襲撃ー!」


 射手が叫ぶが、そのまま馬で接近すると後ろ向いて逃げ出したので剣で切り捨てた。

先に弓を放って来たのに何が襲撃なんだかわからないが、とりあえず敵だと認識した。


 馬車にはすでにミジットが馬で駆けつけており、声を聞いて出て来た男を駆け抜けざまに切り捨てていた。


 馬車の陰から出て来たのは…残り5名か。

ミジットが駆け抜けた隙にヒューガから降り、盾を構えて接近する。


 相手は毛皮を巻いただけでろくに鎧も着ていない。得物も明らかに手入れされていないぼろい剣と槍。


「ふぅ」

殺気を沈め構える。


 しかし、相手の実力はお互いにわからない。距離を縮めないままこちらを包囲するように広がってきた。


にやけながら話かけてくる。


「おいおい、人数差わかってんのか?武器と有り金置いていったら見逃してやるぜ?」


 はい、盗賊決定。武器を置いたら殺されるに決まってるだろ。周りの男もにやけだした。



「それはありがたい。武器を置くから離れてくれないか」


「先に武器を置いたらな」


 思わず笑いだした盗賊の頭からスティレットの先端が飛び出した。間髪いれず、ろくに構えてもいない端の盗賊の首を切り落とした。

 

 あの一瞬でもう一人の存在を忘れるなんて、ある意味すげえよ。

ミジットがさらに一人を切り、慌てた盗賊が両手剣で袈裟懸けに切りかかってくる。


<ジャリン>


 はぁ、狙いが雑。剣筋が見え見え。軽く受け流して切り返し、首を薙いだ。その身体を盾に、後ろから槍が突き出される。


 槍はさんざんジリドの相手をして得意なんだ。


くらべてしまえばずいぶんゆっくりな穂先を盾で弾き流し、血しぶきを上げる死体が倒れ込むと、その後ろから姿の見えた槍を持つ盗賊を


「止まれッ」


袈裟懸けに切り裂いた。

もう一人いたのか



「止まれっていってんだろ!この女がどうなってもいいのか!」


 首に剣を突きつけられているのは15歳くらいだろうか?金髪の少女。顔は殴られ、瞼はつぶれ、全裸にされて涙を流している。


ミジットと目を合わせると、目を伏せ、軽くうなずいた。


「もしお前が少女を殺せば、その隙にお前を殺す」


盾を手放し、剣を突き出し、身を屈め盗賊に告げる。

盗賊の持つ剣は少女の皮膚を切り、白い肌に血が一筋流れる。


「いいんだな、やっちまうぞ」


「娘さん、もし君が命を失ったら倍の誰かの命を救うと約束する」


少女は開かない瞼を開き、涙を流し


「や゛だ、だずげて」


と言った。


「へへっ、だ、そう―」


少しずつ近づいていたミジットの剣が盗賊の頭を突き刺し、倒れた盗賊の剣が弾むように少女の喉を切り裂いた。


少女ののどから血が噴き出し、駆け寄ったが、手遅れだった。


「すまない」 

身勝手な話だ。謝っても許してはくれないだろう。

腫れあがったまぶたを閉じてやり、寝かせて手を組ませて立ち上がる。



ミジットに肩をポン、と叩かれた。


「私が2人助ける、アジフも2人、それで4倍だ」


「すまん、迷惑かける」


「パーティだろ?」



くそっ!泣かすんじゃねぇっ



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