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ダンジョン

※ダンジョン説明回です



 迷宮の入り口は街の端寄りで、城壁により独立した一画になっていた。


「迷宮エリアは国際迷宮規約で閉鎖できる設備を備えた独立エリアになってる。スタンピード対策だ。ここ2百年は起きてないがな」


 開けてある大きな門をくぐると、屋台や売店が並んでいる。


「このエリアの店は基本街中より高い。だが、地図はここでしか売ってないぞ。地図屋は評判を確認して買ったほうがいい。素材を買い取ってくれる店もある。ギルドよりは安いが、ギルドに戻らない時は利用するといい」


「ならギルドの方がいいんじゃねーの?」


「荷物がいっぱいになった時とか、大して差がない時とかだな」


 ガイド付き迷宮ツアーだな、こりゃいいや。

迷宮エリアの中にある大きな建物に近づいて行く。人の流れの中心になっている、あれが――


「あそこに迷宮がある。入るには受付で冒険者プレートを見せて名前を書くんだ」


 建物は大きさこそ大きいが、のっぺりと壁とゆるいアーチの屋根で出来ていた。窓のない小学校の体育館って感じだな。


 入り口で受付を済ませ、中へ入ると――暗い。

ウジトと名乗ったギルドの職員が魔道具で灯りを付け、こちらも松明に火を付けようとすると


「松明は要らないよ、おじさんついてるね」


少年の一人がそう言った。


「光よ、ライト」


少年が唱えると、明かりが1m程前方の宙に浮かぶ。おお!光の生活魔法!


「司祭だったのか」


 ただ、光源が前方にあると見にくい。


「ありがたいが、明かりを上にあげれるか?」


 司祭の少年が光に手をかざし、手を上にあげると明かりがついて行くように頭上に移動した。

明かりに照らされたのは、盛り上がった土山とそのふもとに空いた口、入り口は人の手により階段に加工されているようだ。あれが、


「あれが下級迷宮”キジフェイ”だ」


 ごくり、少年達もだろう、息を飲んだ。


「入口付近は出入りが多い。邪魔になるから中に入るぞ」


 ウジトには慣れたモノなのだろう、さっさと中へ入っていった。


「ようこそ迷宮キジフェイへ一階層へ。一階層の入り口の壁際にはほら、そこの窪んだ空間があるだろ?あそこは迷宮踏破者が戻ってくる場所だ。決して物を置いたり、休憩したりしないように」


「「「「はーい」」」」


 少年達と声を合わせてしまった。


 迷宮の壁は土壁のような材質だが、さわってみると固い。魔道具とライトの魔法で照らされてよくわからないが、暗いとは言え完全な暗闇ではない。暗視があるので、新月の夜よりは見える。壁がほんの僅かに光っているのかな。

さすがダンジョンだ。よくわからん。


「一階層で出現するのはダークラットだ。今まで一階層で罠や宝箱が出た事はない。宝箱は最も浅くて3階。罠は5階から確認されている」


 今までは、か

可能性はゼロではないと。


「噂をすれば、ほら、あれがダークラットだ。誰か行くか?」


 通路の向こうに影が見えたが、まだ薄っすらと影しか見えない。ウジトも暗視持ちかな?


「ど、どうする?」

「お前いけよー」

「えー、あ、おじさん行く?」


「いいぞ」


 前に出ると、ネコ程もあるネズミがまっすぐに突っ込んでくる。ネズミまっしぐらだな。


 ちゅうちょなく突っ込んできたので、迎え撃つように剣を振ると<ズバッ>と真っ二つになった。

 ダークラットは地面に落ちると、黒い煙になって消えてしまい、魔石だけが残った。おお、ゲームだ。


「迷宮では死体が残らない。何故かはわかってないがな。残るのは魔石とドロップアイテムだけだ。逆に言えば、身体が残ってるうちは生きてるって事だから油断するなよ」


「宝箱はドロップしないのか?」


「階層主といわれる魔物が宝箱をドロップする。階層主は1人につき1度しか倒せない。それがパーティーでもだ。2回目からは1人でも攻略した者がいれば扉が開かないぞ」


「扉が開かなければどうやって下に降りるんだ?」


「攻略をした者が1人でもいれば、迂回する階段の扉を開けられる。ただし、階層守護を倒していない者は通路の途中でそこより上層のどこかへバラバラに転移してしまうが」



「階層主「おっとダークラットだ次はだれだ?」」


少年達が3人で顔を見合わせ、うなずいた。3人で行くようだ。

一人が盾でダークラットを受け止め、その隙に2人で攻撃した。危なげないな。


「で、なんだった?」


「階層主以外は宝箱はドロップしないのか?」


「世界的にも今までの記録ではない。が、フロアに宝箱が置いてあるのはあるぞ。一度開ければ消えてしまうが、しばらくして迷宮の別の場所へ現れる」


「ふぅん、後から参加したパーティーメンバーと一緒に階層を降りられないのは大変だな」


「そうだよ!どうするのさ」


「ギルドで階層主突破の臨時パーティーを組むんだ。冒険者同士はライバルだが、仲間でもある。日頃の行いが試されるな。臨時パーティーで素行が悪ければ次からギルドがパーティーを斡旋してくれなかったり、臨時パーティーメンバーから拒否されたりするぞ」


 次のダークラットは少年達が一人ずつ行くようだ。


「一階層にも階層主はいるのか?」


「階層主は下級迷宮では5階ごとだな。上級以上では10階ごとだ」


「たくさんの人数で挑んでもいいのか?」


「人数制限はある場合がある。キジフェイの15階と最下層もそうだ。1人しか入れない扉があって、扉の枚数分しか同時に入れない。キジフェイなら6人だ。まぁ、人数が増えれば分け前は減るがな」


 お!?この先に人の気配がする。


「人とすれ違うときはあいさつするのがマナーだ。無言でいれば魔術の準備と見られても文句は言えないぞ。キジフェイには少ないが、他の冒険者の装備や成果を狙うやからはいる」


「「「え゛っ」」」


「人気のない暗がりを、金目の物を持って歩いてるって忘れるなよ」


 気配に近づいていくと、扉の前で数人が話をしている。ウジトは軽く手を上げてあいさつをした。


「彼らはギルドの職員で迷宮のパトロールをしている」


「ご苦労様です」


 頭を軽く下げて扉の中に入ると、中には小さな水飲み場があった。エルフの女性を象った石像の抱える壺から水が流れ出している。


「水飲み場はフロア毎に一か所以上必ずある。この石像と同じ形の水源は安全が確認されている。たとえ泉に毒を入れてもだ。ただし、一度汲んだ水に毒を入れられればダメだからな」


 水飲み場完備ですか!なんて親切設計!


「とは言え、中には石像の耳が短い毒の泉なんてトラップもあったらしいから気を抜くなよ」


「それは引っかかるわー」

「「「うん、うん」」」


「こういった場所で休憩してもいいが、魔物も入ってくるから気は抜くな、あと迷宮内で煮炊きをするときは煙やにおいの出るのはマナー違反だ。迷惑だし魔物も呼び寄せる」


 その後、一階層の階段まで行き、階段の注意事項も聞いた。

階段の脇には立て札があり『左側通行!階段は一段ずつ!すれ違いはあいさつをしよう!』と書いてある。小学校か


「階段の中は魔物は入って来れない。休憩もできるが、通行の邪魔はするな。機嫌の悪い上位冒険者に蹴られるぞ。それと不用意に隙をさらすな」


 帰りは最短ルートで戻り、片道1時間程の広さだ。まっすぐではない道を警戒しながらとは言え、相当広そうだ。



 迷宮、いやダンジョンは想像以上にゲーム的だった。まるで異世界の中に異世界があるようだ。世界の理から完全に逸脱している。こんな物を作るのは神か悪魔か…

 いや、神だな。だってあの神様好きそうだから。これはおそらく巨大な娯楽施設だ。それも神が人間を観て楽しむための。


 人は欲に駆られて命をチップに遊戯版に飛び込んで行き、その中でお互いとさえ争い、神はそれを見て笑う。なんて事だ、つまり…



Win-Winって事だな!メムリキア様…あんた、最高だぜ!




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