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生活魔法実験室


 買取りカウンターは受付の奥を通り抜けた建物の裏にあった。なるほど、裏へ直接納品できるようになってるのか。


 薬草を持っていくと、前掛けをつけた見事に禿げ上がった職員が対応してくれた。解体担当なのかな。


「どれも採取は丁寧で状態はいいな。薬草は1束銅貨5枚、毒消し草、麻痺けし草は銅貨4枚だ。薬草は数が足りない、他の2つは特に依頼は出ていないな。どうする?」


ん?ちょっと安い気がする。


「わかりました。そちらは結構です」


薬草たちを鞄にもどし、ギルドを後にした。


ギルドを出て、ハっと気が付いた。


(そう言えば村で貯めた魔石があった!)


まぁ、今度でいいか。すっかり忘れてた。



 調薬師のおばあさんのところへ薬草を持って行くと、薬草は1束銅貨6枚、ほかの2つは銅貨5枚で買い取ってくれたが、


「冒険者ギルドには世話になってるからね、言いふらすんじゃないよ」


釘をさされた。

合計で銀貨3枚と銅貨84枚。片手間で半日も採取していないのだが、ギルドのGランク依頼よりよっぽど割がいい。取られていないからたくさん生えていて効率もいい。


 ただ、いくら小銭を稼いでも、依頼ではないからギルドのランクは上がらない。早くランクを上げた方が収入は上がるのかもしれないな。旅の資金にはありがたいが。


 その後、雑貨屋で鹿狩りの罠に使う黒い細めのロープを銅貨50枚で購入した。


 冒険者初日の収入は銀貨5枚銅貨84枚。厳しい世界だ。



 夕食を早めに食べて、宿の部屋に戻り、食堂で借りてきたコップに向かい呪文を唱える。


「水よ、ウォーター」


コポコポとたまった水は丁度1杯分くらいか。


「ついに魔法が…ふふふふ」


 部屋で独り言をつぶやいてしまっても仕方ない。

ステータスを確認して生活魔法(水/土)を見てにやける。どうやら生活魔法にはスキルレベルが無いようだ。消費MPは1か。

 コップの水を飲み干し、今度は空気中の水分を集めるイメージで呪文を唱える。


「水よ、ウォーター」


 コポコポとたまった水は今度はコップから少しあふれた。

ステータスを確認すると消費MPは今回も1だった。


「やはり」


にやけて独り言をつぶやいてしまっても仕方ない。


「土よ、アース」


現われた小石をコップの横へ置いておく。


「土よ、アース」


 もう一つ現れた小石を短剣の柄で砕いて見る。

断面は真っ黒でなんの模様もない。何かの結晶と言われても納得しそうだ。

今度は魔力をたくさん注ぐイメージでやって見る。


「土よ、アース」


 現れた小石の大きさに変化はない。消費MPも1で変わらずだ。

圧縮するイメージに変えてやってみる


「土よ、アース」


 お?気持ち小さくなったかな?砕いて見ると、少し硬かった…気がする。消費MPはかわらず1だ。

次は大きくするイメージで試す。


「土よ、アース」


 やっぱり少しだけ大きい!砕いて見ると前回よりも脆い!


 食堂に降りていって、コップと桶を借りた。「ガンガンうるせえ!」と、怒られてしまった。音の良く響く宿だ。ちっ

 しかし、小心者なので土魔法の実験はやめておこう。

部屋へ戻ると、コップの横へ置いておいた小石が無くなっていた。水はそのままだ。ギルドマスターの爺さんの言う通りか。ふむ


 次は水を圧縮するイメージでコップへ注ぐ。


「水よ、ウォーター」


 水位を軽くひっかいて印をつけ、水を桶にすて、コップの水をよくふき取る。

今度は大きくするイメージでコップへ注ぐ。


「水よ、ウォーター」


 前回の水位と比べてみると、ほとんど変わっていなかった。


「なるほど」


 今回の実験でわかった事がいくつかある。


『イメージで魔法の結果は変化する』

魔力操作のレベルが低いので確定ではないけど、まず間違いないと思われる。


『正確なイメージにより効果は増大する』

小石が消えたのに水が残ったのは、物質を具現化するプロセスの違いと思われる。魔法で現れた小石は魔力が具現化したもので、水は空気中の水分を集めたと思われる。それなら砂漠で水魔法の効果が少ないのも説明できる。精霊の働き説は否定された。


『魔力で現れた物質は自然界の物ではない』

これも仮定ではあるけど、なんの模様もない石なんて見た事ない。


『使用する魔力(MP)を増やして魔法の効果を上げる事は出来ない』

魔力操作のLvがあがったらまた検証が必要だけど、少なくとも今はそういう事だと思う。


『イメージで魔法の形や大きさは変えられる』

ただ、全体の効果量は増やせない、と


『現れた物質にたいして物理法則は作用する?』

これはまだかなり疑わしい。ウォーターで現れた水は自然界で存在する水だと思われるからだ。少なくとも現れた水が、魔力のイメージで縮んだり広がったりはしなかった。水の体積はほとんど変化しないからね。



 くくく・・・

だが、ここまでの実験など前座にすぎぬ…MPの残りは…10!


 本命はここからだ!

魔力を身体にまとって身体強化!とか、剣に纏わせて魔法剣!…とかは魔力操作がしょぼいのでおいといて

 

 属性、まだある他にもあると思うんだよな~。あの神様だし。ヒントは生活魔法の単純な呪文にあると思う。これなら試す価値があるはずだ。


まずは…布を放り上げて、素早く


「時よ、タイム」


そのまま床に落ちる布。


 いやね、そんなに都合よくいくなんて思ってなかったよ?しかも生活魔法でそんな強力な魔法がお気軽に?いや、ないでしょ。でもさ、思いついたら試さずにいられなくない?わかるよね?

 一応、念の為一応、MPを確認すると10のままだった。魔法は発動していないようだ。


 だが!その程度でくじけたりはしない!次こそは少しくらいは成功する可能性が奇跡的にあるかもしれない!


「空間よ、スペース」


MPは10。


「次元よ、ディメンション」


MPは10。


「重力よ、グラビティ」


MPは10。


「熱よ、ヒ「うるせえっつってんだろ!」」


<ドガッ>


 扉が蹴られた…怒られてしまった。今日の実験はこの程度で勘弁してやろう。

まぁ、今回はたまたま上手くいかなかったが、だからと言って属性が無いと決めるにはまだ早い。

 適正がない、呪文が違う、何かが足りない、仮説ならいくらでも立つ。今、現時点では何も起きなかったと思っておこう。


 とりあえず今できる事と言えば、ギルドマスターが言っていた魔力操作をなじませるくらいだ。

 ランプを消し、布団を被って腹下の魔力に集中する。ほんの少しだけ柔らかく思えるそれを揉みこむように、ゆっくりと回す様に意識する。


 まだ早い時間だが、明日は朝が早い。目をつむり、魔力の操作をしながら眠りについた。

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