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黒い化け物 2

 ……今の、少しでも反応が遅かったら死んでたな。

 

「ふぅ……」


 俺は静かに息を吐き、気持ちを整える。


 いくら筋力値が高くてもあの威力は普通じゃありえない。

 だが、足場以外の闇や”権能”を使った気配はなかった。

 それ以外の”能力”であれをやったんだ。おそらくは強化系の”能力”だろう。

 それに【加速】か。

 あの巨体が猛スピードで突っ込んでくるという強力な質量攻撃はなかなかの脅威だ。

 どうしたものか。


《大丈夫?》

「ああ、大丈夫だ。――ラプラス。これ、勝率何パーセント?」

《…………言っていいの?》

「ああ言ってくれ」


 俺がそう言うと、ラプラスはコクリと頷いて口を開いた。


《……37%だよ》

「辛辣だな」

《”権能”と闇を使ってないのにあの威力だからね》

「……確かにな」

《やるの?》

「やらなきゃやられるだろ?」

《それはそうだけど……》

「大丈夫。安心しろよ。絶対に負けないから。俺が死んだら、ラプラスは消えちゃうからな」

《扇……》


 上目遣いで見つめてくるラプラスの頭をそっと撫でながら、俺は目の前に出来たクレーターを見た。

 隕石が落ちたかのようなその傷跡に、もしも当たっていたらと思うと、震えてしまいそうだ。

 だが、震えてもいられないのが現状だ。

 震えて死ぬのを待つくらいなら、限界まであらがってから死んでやる。


 ……いや、それも違うな。


 死んでなんかやるものか。

 まだこの世界でやりたいことがたくさんあるんだよ。

 俺の思うがままに楽しむって決めたんだ。

 それを邪魔するなら容赦はしない。

 全力で殺してやる。


「《創造主》」


 俺は”権能”を発動する。


 そして数百本の剣を一瞬で創造した。

 と言っても本気で創った剣ではない。

 精々、牽制が関の山だろう。

 だがそれで十分だ。

 牽制程度とはいってもれっきとした”権能”で創造した剣だ。

 もしかしたら効果があるかもしれない。

 それにラプラスの《解析》の足しになる。


「それじゃあやろうか」


 瞬間、創造した数百本の剣が同時に黒い鶏へと牙をむいた。

 そのすべてを《超高度AI》の力を使いコントロールする。

 四方八方から飛来する剣。

 普通の敵ならこれで終わりだろう。

 だが、目の前のこいつはそうはいかない。

 剣がその身体に突き刺さる寸前、黒い鶏から漆黒の闇があふれ出した。

 その闇は一瞬で身体にまとわりつくと、まるで鎧のように姿を変える。

 それと同時に、すべての剣がはじかれた。


 闇の鎧か。

 まあ、分かりきっていたことだが、こうして目の前で全部はじかれるとイラっとくるな。

 この怒りどう晴らしたものか。


 そんなことを考えていると、ラプラスが俺に言った。


《”権能”《闇ノ支配者》の発動を確認したよ。その効果は文字通りすべての闇を支配すること。そして闇系の”能力”、”権能”の力を上昇させることだよ。詳しいことはデータとして表示するね。気を付けて》

「わかった。ありがとう」


 俺はラプラスにお礼を言ってから、こちらに突進してくる黒い鶏を迎え撃つ。

 

「《スライムボディー》【形状変化】【超硬化】」


 おれは自分の右腕を大剣へと変化させる。


「【剛腕】【重腕】【剛脚】【重脚】【剛撃】【重撃】」


 次々と強化系の”能力”を次々と発動させていく。


「【加速】」


 俺が【加速】を発動すると同時に、黒い鶏の姿が掻き消えた。

 おそらく俺と同じく【加速】を発動したのだろう

 だが、見失うなんてことは絶対にない。


 俺は新しく”能力”を発動させる。


「【縮地】【切断】【速撃】【連撃】」


 【縮地】を使いさらに加速しつつ、黒い鶏の背後へと移動する。

 そして先ほど発動した強化系の"能力”に今発動した【切断】、【速撃】、【連撃】を上乗せして黒い鶏を袈裟斬りに切り裂く。


「ふッ!」


 ガキンッ


 まるで金属同士がぶつかったかのような音が響き、俺の大剣は止められた。

 だが、そんなことは知ったことではない。


「はぁあああああッ!」


 俺は止められたことなどまったくもって気にせずに、そのまま強引にぶっ飛ばした。


「キュエェエエッ!?」


 黒い鶏が驚いたような声を上げる。

 それと同時に、後方に闇を操って作った網を設置し、自身の身体を受け止め、ぶっ飛ばされるのを止めた。

 そしてそのままの体制で闇の触手を放ち、近づこうとする俺を攻撃する。

 俺はそれを【縮地】でよけつつ接近し黒い鶏の懐へと潜り込み、勢いをつけて大剣を振り下ろした。

 またもはじかれるが、俺は気にせずにもう一発、もう一発と打ち込んでいく。

 その間の黒い鶏からの攻撃は《創造主》で新しく創造した剣を使い凌いでいく。

 

 もう少し、もう少しだ。もう少しで()()()


 俺は黒い鶏からの嘴などを使った直接攻撃をよけつつ大剣を打ち込んでいく。


 いったいどれだけ打ち込んだだろうか。

 時間は一瞬だが、加速した俺にはものすごく長い時間に感じられた。

 が、ついにその時がきた。


 ズプリ


 今までとは違う感触が俺の手に伝わった。


「ギュエェエエエエエエエッ!!?」


 黒い鶏が悲鳴を上げる。

 その翼の部分の闇の鎧は一部が砕け散り、そこから血が噴き出していた。


 俺は思わず口角を吊り上げる。


 そう、切ったのだ。

 あの鉄壁を誇る闇の鎧を切ったのだ。

 俺はその後も大剣を打ち込み続ける。

 そのたびに同じように闇の鎧は砕け散り、その身体から血が噴き出す。


 いや、今までと同じではない。

 打ち込むたびに速く鋭く、威力が上がっているのだ。

 これは【速撃】と【連撃】の効果である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【速撃】:速度が早ければ早いほど、一撃の威力が爆発的に増す。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【連撃】:連続で攻撃を当てればあてるほど、速度と威力が増す。一度目の攻撃から次の攻撃に移るまでの間は3秒以内。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 この二つ、ものすごく相性がいいのだ。

 【連撃】で威力と速度を上げつつ、【速撃】でさらに威力を上げる。

 そこに【加速】まで加わればその結果は御覧の通りだ。

 3秒を過ぎると【連撃】の効果がリセットされてしまうという欠点はあるが、ハッキリ言って何も問題はない。

 加速している最中は3秒なんて短いのうちに入らないからだ。


「ギ、ギュエェエエエッ!!」


 黒い鶏が苦しそうな声を上げる。

 俺は気にせず攻撃を続けようと思ったが、次の瞬間、黒い鶏からとてつもない量の漆黒の闇があふれ出した。

 そしてその闇は無数の剣へと形を変えこちらへと飛来する、

 

「なっ!?」


 俺は慌ててその場から飛びのいた。

 だが、闇の剣は追尾するように方向を加え迫ってくる。

 どうやら迎撃する必要があるらしい。

 

「《創造主:武器創造》ッ!」


 俺はイメージしやすいように口に出して発動する。

 そして創造した剣を闇の剣にぶつけて相殺する。

 速度、威力は互角。

 ”神の権能”である《創造主》が普通の”権能”と同格という事実はなかなかくるものがあるが、戦いの中では十分なイメージができないため仕方なくはある。


 そこでふと俺の周りに靄のように撒かれた闇が充満していることに気が付いた。

 だが、どうやらそれに気が付きには少し遅すぎたらしい。


 ――次の瞬間、俺は身体を闇に刺し貫かれた。

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