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黒い化け物

 黒い鶏。別名ダーク オブ チキン。

 

 その真っ黒な身体からこれまた黒い靄のようなものが漏れ出る。

 名前と絵面はふざけてるが、その圧は本物だった。

 もはや雷竜など赤子同然に思えるほどだ。


 だが、そうなると一つ気になることが出てくる。


 それはステータスだ。


 確かに目の前にいる黒い鶏は強い。

 それは戦わなくても伝わってくる圧で本能的に理解できる。

 だが、ステータス的に見れば、”能力”こそこいつのほうが多いものの、筋力と魔力に関して言えば雷竜はそのどちらも倍以上に上回っている。

 それなのに目の前のこいつのほうが強い。


 それは何故だろうか。


 これは別にこの黒い鶏に限った話ではない。

 スライムキングに関してもそうだ。

 あいつも雷竜よりも強かった。

 実際に戦ってみたのだからそれは確かだ。確かなのだが――


《どうしたの? 考え事?》

「まあな。ラプラス、一つ聞いてもいいか?」

《ん、いいよ。なんでも聞いて》

「ありがとう。それで聞きたいことなんだが――」


 俺は油断なく黒い鶏を見つめながらラプラスに聞いた。


「どうして目の前のこいつを雷竜よりも強いって感じるんだ?」

《? 実際につよいからじゃないの?》

「まあ、そうなんだが。そう言うことじゃなくてだな」


 俺は自分が疑問に思っていることをかいつまんで説明した。


《んー。つまり、扇が聞きたいのはどうして圧倒的なステータスを誇る雷竜がこの鶏に劣っているのか、ってことで言いの?》

「ああ、そう言うことだな」

《それは簡単だよ》


 ラプラスは確信を持った様子で答えた。


《すべては”権能”の有無で決まるの》

「”権能”の有無、か。確かに雷竜には”権能”はなかったな」

《そう。”権能”っていうのは言ってい見れば圧倒的な力の塊だから。その有無だけでどんな雑魚キャラでも最強たりえるほどの圧倒的な力。それは扇が一番わかってるでしょ?》

「ふむ、なるほどな」


 納得した。

 確かに”権能”の性能はどれもぶっ壊れていた。

 《創造主》に始まり《超高度AI》、《死霊吸収》なんかはそのいい例だろう。

 まあ、《創造主》だけは少し別格な気がするが、そんなものはこの際気にする必要はない。


「ありがとう、ラプラス」

《んーん、いいよ。私は扇の”権能(もの)”だから。気になることがあったらいつでも聞いて》


 そう言ってほほ笑むラプラスはとても可愛らしかった。


「さて、もうそろそろかな」

《そうだね。頑張ろうね》

「ああ」


 俺はそう返事をしながら再び黒井に鶏に向かって一歩を踏み出す。

 それから数歩あるいたところで、黒い鶏に動きがあった。


「キュエェエエエエエエッ!」


 甲高い方向を上げながら黒い鶏はぐっと足に力を籠める。

 そして、そのまま真上にジャンプした。

 おそらく【跳躍】を使ったのだろう。

 飛ばない鳥である鶏が空を飛んだ瞬間だ。いや、地球の鶏もジャンプくらいはするのか? まあ、どっちでもいいが。


 黒い鶏は空中で翼を広げる。

 そして器用にもその場で一回転した。

 俺が内心で「おお」と思っていると、黒い鶏に近くに黒い物体が浮かんでいることに気が付いた。

 なんだ?と思った次の瞬間、黒い鶏はその黒い物体に足を付けると、それを土台にして思い切り空中を蹴った。

 それと同時に黒い鶏の姿が掻き消える。


 その時、俺の身体を悪寒が駆け巡る。

 本能が『あれはヤバイ』と告げていた。 

 俺は本能に従い【加速】を発動させ思い切り横に飛ぶ。


 刹那、今まで俺のいた場所が抉れた。

 ドゴォオオオオオォン、という大きな破壊音とともに暴風が吹き荒れる。

 見ると、そこには隕石の落ちた後のような巨大なクレーターができており、その中に悠然と立つ黒い鶏の姿が目に入った。

 たらりと、俺の頬を冷たい汗が伝った。

 

 おいっ、なんだ今のは!? 早すぎるだろ!?


 心の中で叫ぶ。

 どうやら、俺は目の前にいる黒い化け物のことを見誤っていたらしい。

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