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信用している

「ラプラス、それって本当にいけるのか?」


 俺はショートカット方法を話し終わったラプラスに問いかけた。


《できるよ。確率はというと、98%だよ。まず間違いなく成功する》

「98、か……」


 確率的に言えばかなりの高確率だ。これで失敗したら俺の運が悪すぎたとしか言いようのないくらいのな。

 ただ、残り2%が気になるな。100回やれば2回は失敗するということだ。

 そして、初めの一回ではずれを引く確率はゼロではない。

 確かに切り捨ててもいい、誤差と言っていいレベルかも知れない。

 だが、いくら誤差と言ってもこれはラプラスの……《超高度AI》の超越した演算能力で導き出された結果なのだ。

 それは俺たちが普通に感覚や計算で求めた結果とはわけが違う。

 未来すらも求めることのできる力で、あらゆる手を尽くし、無限に近い可能性をシミュレートした結果なのだ。

 つまり、そこまでしても失敗する可能性があるということだ。

 となれば、成功した場合のことだけではなく、最悪の場合も想定しなければならないだろう。


 と言ってもまあ、このショートカットで失敗した場合のことはあまり考えなくてもいいだろう。

 何故なら――


《信用できない?》

「いや、そんなことはないよ。俺はラプラスのことを信用しないなんてありえない」


 そう。俺がラプラスを信頼しないわけがない。

 理屈とか確率とか、そういうのではない。

 俺は俺としてラプラスを信用している。

 だから、ラプラスが成功すると、大丈夫だと、そういうのならそれはもう何も問題のないことなのだ。

 

 というか、俺の”権能”であるラプラスが俺を裏切ることは不可能なのではなかろうか。


 と、俺がそんなことを考えていると、ラプラスが口を開いた。


《ん、うれしい。でも、我慢してない?》

「我慢? なんで俺が我慢なんてしなくちゃいけないんだよ?」


 俺がそう聞き返すと、ラプラスは《だって……》と言いながら答えた。


《この方法、もしも失敗しちゃったら扇は死んじゃうんだよ》

「それは……まあ、そうだよな」


 そう、俺は何もタイムロスが嫌であんなに考えていたわけではない。

 この方法、もしも失敗したら俺は死ぬかもしれないのだ。

 100回やったら2回は死ぬ、ということなのだ。

 これで考えるなという方が無理な話だろう。

 それも《超高度AI(ラプラス)》が導き出した答えならばなおのことだ。

 笑い飛ばして無視できる話ではない。


 だが、だ。

 それは先ほども言った通り、あまり考える必要はない。

 俺はそれだけラプラスのことを信頼しているからな。

 

「俺とラプラスの二人なら余裕だろ? 絶対に成功するさ。いや、成功させるんだ。それに、死んで死ぬようなやわなステータスしてないって」

《扇……、うんっ! 任せて! 絶対に成功させて見せるから!》


 そう言って笑顔を浮かべるラプラスの姿は大変可愛らしかった。

 やべぇ、失敗する気がしない。

 これは癒しキャラ最強説が出てきたな。ラプラス最強説ともいえる。

 はぁ……癒される。この感覚久しぶりな気がするな。わるくない。


「そうだな。もしもすべてが終わった後、ちゃんと俺が無事だったら、一緒にどこか遊びに行こうな」

《……扇、それこのタイミングだと死亡フラグにしか聞こえないよ?》

「え? …………あー確かに、そう聞こえるな。全くそんなつもりなかったんだが」

《ふふふ、わかってる。ありがと。一緒に行こうね!》

「ああ! でもとりあえずは目先の問題を解決しないとな」

《そうだね。それじゃあ行こっか》

「おう」


 そう答えながら俺は31階層へと続く階段のもとへと歩いていく。

 そして31階層へ降りると、ラプラスを服の中に潜らせながら、前と同じように”権能”と”能力”を発動させていく。


 あらかた発動させ終えたところで俺はつぶやいた。


「それじゃあ、行くか」

《うん!》


 服の中から顔だけを出しているラプラスがそう返事をする。可愛い。

 でも何かあったら危ないから一応服の中に隠れてような?


 それじゃあ、気を取り直していくとしようか。最後の仕上げだ。


「《創造主:武器創造》」


 俺はそう呟きながら、『魔物を探し出し狩り続ける』というイメージを込めながら、数十本にもなる武器を創造した。

 そしてそれを一斉に放つ。

 これであの武器たちは魔物を狩り続ける殺戮マシーンとなることだろう。

 こんなイメージをしたのはひとえに少しでもステータスを上げておきたいからだ。

 最悪、というか間違いなくユリスとは戦闘になるだろう。

 その時のために出来るだけ力はためておきたいというのが率直な気持ちだ。


 俺がイメージすることにだんだんと慣れてきたおかげで、こういう少し変わったイメージもできるようになってきた。

 ただ、同じ《創造主》で創られたはずのこのダンジョンはほとんど操作できない。

 壁や床、天井などの形を変えることは出来なくもないが、このダンジョンの構造自体を変えるとなると話が変わってくるのだ。

 詰まるとこと、俺はまだまだアリスと同じレベルには達していないということなのだろう。

 まあ、あっちはガチの女神様だからな。そう簡単に追いつけるとは思ってはいないが。


 おっと、話が脱線してしまったな。

 それでは改めて出発しようか。


「ふぅ……【加速】」


 そう言って”能力”を発動しながら、床に設置した【反射板】を強化した足で思い切り踏み抜く。

 すると、反射されたエネルギーが身体を満たし、ものすごい速さで俺はダンジョン内を駆け出した。

 だが、先ほどとは違い身体への負荷は少ない。

 付け加えて先ほどよりもかなりスムーズだ。

 これはラプラスのおかげだろうな。

 さっき俺の動きを解析してるとか言ってたし。

 これはありがたいな。

 

 そんなことを考えていると、ついに地図上に赤い点が表示されている場所が見えてきた。

 俺は改めて覚悟を決める。

 大丈夫だ、必ず成功する。

 というか、成功以外ありえない。


 強く意思を持ちつつ、俺は赤い点があった場所の真上に【反射板】の赤い板を設置する。

 俺は一度高く飛び上がり、天井に設置したその赤い板に足をつくと、()()へと飛んだ。


 そして、タイミングよく新しい”能力”を発動する。


「【融解】ッ!」


 そう叫ぶのと同時、俺の周りを薄い水色の膜で覆った。

 そしてそのまま突き進む。

 分解する対象をダンジョンとした状態で。


 すると、【融解】に触れたダンジョンの地面が、一瞬にして消え去ってしまった。

 おしっ!と、内心でガッツポーズをしながら、俺はさらに突き進んでいく。

 一度背後を振り返ると、ものすごいスピードで入り口が閉じていっていた。


 やばい、アレに巻き込まれたら死ぬ。


 今までさんざんと聞いてきたとこだが、ようやく実感がわいてきた。

 生き埋めなんてまっぴらごめんだ。

 そう考えながら俺は全力で駆け抜ける。


 それから数秒。俺はついに31階層を抜けた。

 速度を全く殺すことなく、ショートカットに成功したのだ。


「ぃよっしッ! 成功ッ!」


 俺は生きている。それが事実だ。


 そう、ショートカットとはダンジョンの床をぶち抜いて進むこと。

 確かに多少強引な手段だが、これは俺とラプラスにしかできないことだろう。

 そもそも、この赤い点の場所以外で同じことをやれば俺は間違いなく死んでいただろう。

 これはラプラスが導き出したことだが、この赤い点の場所は他の場所よりも()()()()()()()()()()()()らしい。

 だからこうして【融解】することができたのだ。

 もしも、普通の場所ならば壁の再生スピードに負けて生き埋めになっていたことだろう。

 

「さっすがっ、ラプラス! うまくいったな!」

《ありがと! うれしい!》


 今は加速中なので声だけだったが、その声音には確かに歓喜の感情がこもっているように聞こえた。


 それからしばらくして、31階層から40階層までのショートカットはつつがなく終了した。


 そして、次はいよいよ40階層のボス戦だ。

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