最下層にて 2
ユリス Side
――ドゴォオオオオオオオォォォオン…………
上の階層から轟音が響き渡る。
何の音だ?と首を傾げつつ、あたしはそんな音のした上の階層を見つめながら星野に問いかけた。
「なー、今ものすげー音しなかったか?」
「…………」
「なーってば、聞こえねーのかー?」
「…………」
ガン無視。
ここに連れてきてからずっとそーだ。
こいつが声を発したのなんて起きたばっかの時だけじゃねーか?
それもすぐに黙っちまったしよー。
はぁ……何つーか、楽しくねーな。
せっかくあたしが緊張をほぐしてやろーと話しかけてるって言うのによ。
……いや、まー、あたし自身言ってて無茶苦茶だって言うのはわかってんだけどさ。
だって拉致られたんだぜ? あたしが星野の立場だったら同じ反応して――――ねーな。うん、これだけは断言できる。あたしが同じ立場だったらぜってーにじっとなんてしてねーよ。
むしろ挑発しまくりの噛みつきまくりだろーな。
だけど、それをこいつにまで強制させるつもりも、その資格もあたしにはない。
あたしはそのまま上の階層を――オーギが居るであろう場所を考えながら見つめた。
つーか今の音、オーギだよな? いったいどっから聞こえてきたんだ?
まだまだオーギが下層まで来るにははえーだろ?
いるとすれば30階層とか、そこら辺だろーな。
だが何をどーやったら最下層まで響く音がだせんだよ。
しかもなんっつーか、音の感じからして破壊音って感じだったな。
どっかの壁でも突き破ったか?
って、それはねーか。
いくらオーギでもダンジョンの壁を突き破るっつーのは無理だろ。さすがに。
だってダンジョンの壁ってバカみてーに硬いうえに再生機能付きだかんなー。
あたしも結構前に試したことあっけど、あれはきつかったな。
ぶっ壊してもぶっ壊しても、次から次へと再生しやがってきりがなかったぜ。
付け加えてよーやく出来上がった穴に埋まっちまうとこだったからな。
あれはホントーにびっくりしたな。
だって振り向いたら出口が無くなろうとしてんだぜ?
そりゃーびっくりもするだろーよ。
つっても、今のあたしならゴリ押しで階層突き破るぐらいのことはできっけどな。
あーあ、早くオーギの奴来ねーかなー。
こいつといても楽しくねーし。
早く来て、あたしの相手でもしてくんねーかな…………おっと、ダメだな。このぐらいは待たねーと。
どうせすぐに来るんだろーしな。
それまでは我慢だな~。
あたしは楽しみでならないと自己主張をする心臓の鼓動を聞きながらそんなことを考えた。
ホントーに我慢しねーと、このままオーギのとこまで突っ込んでいきそーな気がするんだよな。
さすがにそれはな、『一人で最下層に来い』とか言っておいて自分から行くってのは何つーか……締まらねーよな。
あたしとしても、それはなんか違ーって思うかんな。
大人しくしておくか。
あたしは違うことに気を向けるように、天井から目を離し先ほどから黙りこくっている星野へと視線を向けた。
すると星野もさっきのあたしと同じように天井を見上げていた。
いったいどんな気分で見てんだろーな。
いきなりこんな自分の力ではどーしよーもない場所に連れてこられて、あまつさえ自分を誘拐した相手と二人っきり。
こんな普通ならありえねー状況で何を考えてんだろーな。
ま、瞳から光が消えてないっつーことは、オーギが来てくれるって、少なくとも現在は確信してるっつーことだよな。
つえーな、こいつ……。
ふぅ……あーあ、ホントにもなんなんだろーな。
どうしてあたしがこんなこと考えなきゃならねーんだよ。
あいつからの”お願い”が来たときはそっこーで皆殺しにするつもりだったんだけどな。
あたしも何かが変わったっつーことか? って、ないな。ないない。
人間そんな簡単に変われたら、苦労はねーっての。
あたしはそう思いながら自虐的に笑った。
そして、10階層のボス部屋でオーギたちにあった時のことを思い出した。
でも、もし。あたしがあの時変われたら、今あたしはこの場にいなかったかもな。
もしかしたら、あたしもオーギたちの輪に加われてかもしれねーな。
って、止めだ止め。
しんみりと考え込んだところで無駄だしな。
あたしはあたしの思うがまま、自分の好きな道を行くだけだ。
そう、それだけなんだ。
その結果が、どーであろーとな。




