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頭のおかしい奴

 山田は神妙な面持ちで話し出した。


「10階層のボスが倒せないんだ」


 ……………………は? なんだって?


「……ねえ、八重樫」

「……扇君」

「……わかってる」


 俺は星野と藤原の言いたいことがすぐにわかった。

 いや、それは俺だけじゃないだろう。

 恐らく他の2人もだ。


「…………なぁ?」

「な、なんだ?」

「もう俺たち行って良いか?」

「ち、ちょっと待ってくれ! 本当に困ってるんだよ!」

「なにが困ってる、だ! 必死そうにしてるから何かと思えば、ボスが倒せないってお前、ただ単に実力が足りてないだけじゃねぇか!」


 つまりはそう言うことだ。

 話聞いて損した! 

 そんなことをいちいち人に頼むなよ! 自分たちで何とかしろ!


「ち、違うんだ!そうじゃなくて……」

「違う? 自分たちの実力以外に何かあるってのか?」

「う、ぐっ……た、確かに、確かにそれもある。俺たちのパーティーは皆序列下位者ばかりだからな……。でもそれだけじゃないんだよ! そもそも、実力の問題は他パーティーと組むことで解決してるからな」


 そう言われて「確かに」と思う。

 10人で足りるのか?という疑問は残るが、まあ、本人たちが問題ないって言ってるんなら問題ないんだろうな。

 だがそうなると、どういうことだ?


「それじゃあ、どうしてボスを倒さないのかな? 倒せるのなら問題はないんだろう?」

「……一ノ瀬か。お前本当に八重樫のパーティーに入ったんだな」

「まあね。でも今はそんなことはどうでもいいだろう? 問題はなぜ倒せないのか、だ。違う?」

「……」


 一ノ瀬がそう言うと山田は苦い顔をして黙り込んだ。


 こいつら知り合いなのか?

 山田と一ノ瀬の態度から推測するに、あまり仲は良くなさそうだが。

 まあ、はっきり言ってそんなの事はどうでもいい。

 俺に他人の友好関係をとやかく言う権利なんてないからな。

 ……こいつが一ノ瀬に手を上げるって言うんなら話は別だが。

 て言うかこいついつまで黙ってるんだよ?


「一ノ瀬の言う通りだ。倒せない理由をはやく話せ。俺たちだって暇じゃないんだから」

「ああ、わるい。それで、理由なんだが――」


 俺がそう言うと山田は改めて話し始めた。


「ボスと戦えないんだよ」

「戦えない? どういう意味だ?」

「ボスを倒しまくってる奴がいるんだよ。倒して、リスポーンするのを待って、また倒して、リスポーンするのを待って、また倒して、それを永遠と一人で繰り返してる頭のおかしい奴が」


 へ~、そんな奴がいたのか。…………ん? ちょっと待て。それって何時だ?


「なぁ、それって何時ごろだ?」

「え? 確か、朝から晩までだ。一日中ボス部屋の中に居やがるんだよ」


 山田は「マジであいつは頭がおかしい」と言って溜息を吐いた。

 俺はと言うと、ほっと胸を撫で下ろしていた。

 一瞬、俺じゃね?と思ったが、どうやら違ったようだ。

 というか、そもそもこいつらが攻略してる時間帯と俺が実験してる時間帯は違うからな。俺のはずがなかったわ。

 となると誰だ?

 このクラスに10階層とは言えボスをソロで倒せるような奴がいたか?

 アイルは別として星野、藤原、一ノ瀬の三人組でもそこそこ苦戦してたんだぞ?

 そんなすごい奴がいたら一度は聞いたことがあると思うんだけどな。

 考えられるのは生徒とは全く別の、普通の冒険者か?

 どちらかと言えばそっちの方が可能性としてあり得ると思うんだが。

 せめてどんな見た目なのかくらい分かればな。


「ああ、ちなみに少女だったぞ? バカ強い少女」

「は? いや、え、ちょっと待ってくれ。……相手を見たのか?」

「見たぞ。それで、ここからは協力の話になるんだが……」


 どうやらようやく本題らしい。

 ここまで長かったな。


「その少女に言われたんだ。『ボスを倒したいならまずあたしを倒せ』ってな」

「なるほどな。つまり俺に協力してほしいことって言うのは……」

「少女を倒すのを手伝ってほしい」

「だよな」


 話の流れでなんとなくわかってはいた。

 だが、なんだろうな。

 こうして面と向かって言われるとなかなかシュールだな。 


 さて、どうするかな。

 協力内容は『少女を倒す』こと。こうして文字だけ見ると何とも馬鹿らしいが、こいつらの必死加減で困っていることだけは分かった。

 後は返事をするだけだ。はいか、いいえと一言言うだけだ。


 俺はチラッと他の4人に視線を送る。

 するとみんなはやれやれと言った感じで肩をすくめると、小さく頷いた。

 どうやら俺の好きにしていいらしい。いや~、得だねリーダー。


「わかった。手伝うよ」

「そ、それは本当か!?」

「ああ」

「ありがとう! だが、自分で言うのもなんだがいいのか? はっきり言って俺たちには何も返せないぞ?」

「ああ、そこは問題ない」


 面倒だが。非常に面倒だが、俺も少し気になることができたからな。

 少女、少女ね~。まさかな。


 一瞬、脳裏を一人の少女の姿がよぎったが、俺はすぐに振り払った。

 今考えるのはよそう。

 せっかく頼みごとを受けたんだ。楽しみはとっておいたほうが良いだろう。


 俺はそう思いながら、俺と山田ともう一組のパーティーで臨時パーティーを組み、ダンジョンの中へと入っていった。

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