寝不足でとても眠い
「ふぁあ~あ……」
朝起こしに来てくれたアイルと共に食堂へと向かう途中、俺は大きなあくびをした。
眠い。眠すぎる。さすがに寝不足だ。
まあ、毎日毎日深夜にダンジョンに潜って遊んで――ごほん、実験してるんだから無理もないんだが、どうやら【睡眠耐性:中】は全く以て機能してないらしい。
肝心な時に役に立たない”能力”である。
特に今日は実験が終わった後、ユリスと話し込んでしまったので余計に睡眠時間が取れていない。
どんな話をしていたかはこの際割愛するが、まあ大したことではないのは確かだ。
だが考えても見てほしい。
話し込んでるときの話の内容って大抵大したことないのがほとんどじゃないか?
少なくとも俺の場合はそうなのだ。だってそっちの方が話題多いし気軽に話せるじゃん。
そんなわけで話し込んでしまったわけですよ。
今思えばそれがダメだったんだろうな~。
「……ぁあ~……」
そんなことを考えてると、再びあくびが出た。
眠い。
自業自得とは言え眠いものは眠いのだ。
そもそも人間の三大欲求のうちの一つに勝てるわけがない。
ちなみに言うと俺はコーヒーや栄養ドリンクなどの眠気覚まし系のものはあまり好きではない。
まあ、嫌いと言う訳でもないのだが、あまり積極的に飲みたいとは思わないな。
「寝不足ですか?」
俺の隣にいたアイルが俺の顔を覗き込みながら聞いてきた。
「ああ、寝不足だ。でもダンジョン攻略に支障はないから、そこは気にしなくていいぞ」
「いえ、そこは気にしておりません。もしもの時は私が扇様の分まで働きますので。私が気にしているのは扇様のお身体の方です。体調が優れないのであればなんなりとお申し付けください」
「ああわかった。でも大丈夫だ。このぐらいなら問題ないよ」
「かしこまりました」
アイルは恭しく頭を下げる。
あ~ダメだな。アイルに余計な心配をかけさてしまっている。
次からは気を付けよう。
そう思いながら宿の廊下を歩いていると、ようやく食堂に到着した。
それと同時に辺りを見渡す。
するとこちらに向かって元気にぶんぶんと手を振る藤原の姿が目に入った。
あいつはどうしてこうも元気なんだろうな。
その元気を少し分けてほしいよ。
席に着いた俺は朝食をとりながら話を始めた。
「それで、今日はどこまで攻略する?」
「今のところは順調ですからね。いつもと同じペースでいいのではないでしょうか?」
「となると、次は21階層からだから2、3階層まで進めたらいいんじゃない?」
「そうだね。でも今回からは流石に気を引き締めていかないとね。魔物も強くなっていることだし」
「だな。まあ、ラプラスの演算結果だと、目に見えて強くなるのは35階層辺りかららしいけどな」
「へぇ~、ラプラスちゃんがそう言ったのならそうなんだろうね。でもだからと言って油断はできないだろう?」
「確かにそうだな。油断大敵って言うし、気を付けておくに越したことはないだろ」
「それじゃあ決定!?」
「ああ、決定だな。いいよなそれで?」
俺が4人を見渡しながらそう聞くと全員頷いた。よし決定。
「それにしても、このままいくと本当にダンジョン踏破できそうね。順調すぎて逆に怖いわね」
「それは分かる。本当に踏破できるかどうかは別として、確かにかなり順調だよな」
「実際、今のところは攻略スピードも魔石獲得量もボクたちのパーティーが一番だからね。まあ、スライムキングの魔石がある限り負けは無いんだろうけど」
「あれホント強かったもんな。はっきり言って20階層のボスよりもはるかに上だったな」
「でもアンタ、あれから3匹くらい狩ってなかった?」
「あれ凄かったね!」
「狩ったけど、どれも強かったぞ?」
「それはそうでしょうよ。災害級なんだから」
呆れ顔でそう言ってくる星野と目を輝かせて言う藤原。
いやホントにアレは強かった。
スライムってレベルじゃねぇよ。まあ、最近のラノベなんかでは割と最強キャラだったけどな。
それでも俺的にはいい敵なんだ。
だってあいつら下に下りれば下りるほど強くなるんだよ。
まあ、他の魔物も強くなるんだけどな。でもスライムキングだけはレベルが違う。
下層になればなるほど戦う相手がいないからエネルギーを多く蓄えてるんだと思う。
50階層にいるスライムキングなんてどんだけ強いんだろうな。そこまでくると戦いたいとは思わないけど。
◆◆◆
朝食を食べ終えた俺たちはダンジョンへと向かう。
その途中、ダンジョンの入り口に10人ほどの生徒が固まって話しているのに気が付いた。
全員どこか困ったような表情をしている。何かあったのだろうか?
でもまあ、特に興味はないので無視して先へと進む。
が、そこでその集団にいた一人に呼び止められた。
「な、なあ八重樫! 頼む! 俺たちに協力してくれないか? 話を聞くだけでもいいんだ!」
なんだよいきなり。と言うか誰だよこいつ馴れ馴れしいな。
話したこともない相手に対する接し方じゃないだろ。
「アイル」
「はい。彼は同じクラスの男子生徒、序列387位、山田健一郎です」
俺の意図を正確に読み取ったアイルが説明してくれた。
名前を聞いてもわからなかったので、本当に話したこともないんだろうな。
まあ俺友達少ないし。話したことのある生徒の方が少ないんだけどな。はっはっは……はぁ。
「な、なんか初めて聞いた、みたいな顔だな。話すのこれが初めてだし無理もねえけど……」
「実際初めて聞いたからな。それで? 何に協力しろって?」
「協力してくれるのか!?」
「そうは言ってない。協力するかどうかは話を聞いた後で決める」
「あ、ああそれでいい、ありがとう」
「その代わり、もしも協力しなかったとしても文句は言うなよ?」
「わかった」
そう言うと、山田健一郎は協力とやらの内容を話し始めた。




