新婚プレイをしてみたい
ボス部屋の奥にあった扉を開けてさらに奥へと進む。
すると如何にもな空間に出た。
中心には直径5mほどの円形の台座があり、その奥には下へと下る階段があった。
その円形の台座は薄く光を発している。
「アレが転移ポータルか?」
「はい、その様ですね」
「つまりアレを使えば外に出れるわけだよな?」
「その通りでございます」
ダンジョンでは……いや、このダンジョンだけかもしれないが【空間転移】が使えない。
アイル曰く、転移阻害系の結界が全体に張ってある、という事らしいが詳しいことは謎だ。
正直、一瞬で町まで戻ることのできる手段があるのはありがたい。
最初の10階層分はショートカットできるってことだからな。
「それでどうするの? 今日はもう地上に戻る? それとも少しでも攻略を進めておく?」
「うーん、そうだなー…………よし、今日はもう終わりにしよう。べつに攻略を急いでるわけでもないからな」
「それもそうね、それじゃあさっさと転移しちゃいましょう」
「そうだね! 僕ダンジョンの転移ポータルは初めてだから、わくわくするよ!」
「でもその後はどうするのかな? 時間的にはまだお昼を少し過ぎたぐらいだろう?」
「あーそこまでは考えてなかったな。でもまあ、今日は各自の自由でいいんじゃないか? 今日までずっと潜ってたんだし。休息も必要だろ?」
俺がそう言うと3人は頷いた。
「そうだね! 今日はゆっくりと休むよ!」
「そうね。3日で10階層も攻略した自分へのご褒美という事にしましょう」
「確かに、今考えるとそれってすごいことだよね。なかなかのハイペースじゃないのかな? これはゆっくりと休む必要がありそうだね」
「アイルは? この後どうするんだ?」
「私は扇様に従うだけでございます」
「そうか、それじゃあ今日はゆっくりと過ごすか」
「かしこまりました」
アイルはそう言って恭しく頭を下げた。
「それで? この転移ポータルってどうやって起動させるんだ?」
「行きたい場所を口に出せばいいはずよ。と言ってもあたしたちはまだ入り口以外の場所に転移できないけどね。ちなみにパーティーを組んでいれば言うのは一人で十分よ」
「なるほどな。それじゃあ俺が代表で言うよ――――『入り口』へ」
俺がそう言うと次の瞬間、円形の台座が発光し俺たちの身体を光が覆った。
光が晴れて目を開けると、そこには外の景色が広がっていた。
太陽は真上に上っており、光が燦々と降り注いでいる。
「凄い便利だなこのポータル」
思わずそんなことを呟いた。
改めて転移の便利さがわかるな。
欲を言えば【空間転移】も使えるようにして欲しいんだが……まあ、そこは我慢するとしよう。
「それじゃあ今日は解散ってことで良いよな?」
「そうね。そうしましょう」
「いいよ!」
「ボクもそれで構わないよ」
「私も異存はございません」
「よし! それじゃあ解散!」
解散した後、俺とアイルはひとまず宿に戻り昼食をとることにした。
と言っても食堂で食べるわけじゃない。
当然アイルの手料理だ。
部屋には簡易的なキッチンも付いてるからな、これを活用しない手はないだろう。
それにこう言っては悪いが、この宿の飯よりアイルの手料理のほうがはるかに美味しいからな。
「それではしばらくお待ちください」
「なにか手伝おうか?」
「いえ、扇様のお手を煩わせるわけにはいけませんので」
「そうか。でも何か手伝ってほしいことがあれば遠慮せずに言ってくれていいかなら」
「はい、ありがとうございます。かしこまりました」
そう言ってアイルは白のエプロンを身に着け、料理を始めた。
あ~、いいなぁこの感じ。
新婚ってこんな感じなのかな。
結婚か。
そう言えばこの世界って何歳から結婚できるんだ?
ラプラスは寝ていたのでアイルに質問した。
「アイル、この世界って何歳から結婚できるんだ?」
「確か、男女ともに18歳からですね」
「18歳か」
俺は今17歳だからもうすぐ結婚できるってことか。
まあ、肝心の相手がいないんだけどね。
でも結婚はいつかしてみたいな。
新婚プレイしてみたいし。
俺がそんなことを考えているとアイルが料理をしながら聞いてきた。
「突然どうしたのですが?」
「なんとなく気になったんだ。別に気にしなくてもしいよ」
「? そうですか。かしこまりました」
流石に新婚プレイがしたくて聞いたなんて言えないからな。
それからしばらくすると料理のいい匂いが漂ってきた。
そしてアイルが昼食を運んでくる。
今回のメニューは和食だった。
ご飯にお味噌汁、そしてさんまの塩焼き、日本にいた時にすらあまり食べたことのないような本格的なやつだ。
「お疲れ様」
「いえ、これも私の仕事ですので。それよりも冷めてしまう前にいただきましょう」
「そうだな。いただきます」
「いただきます」
そうして俺たちは昼食を取り始めた。




