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温泉回 中編

 一ノ瀬の消えていった女湯の暖簾を見つめながら、俺の掌に乗っているラプラスに聞いた。


「なあ? ラプラスさんや」

《……どうしたの? おーぎさんや》

「お前、本当に俺と入るのか?」

《……はいるー》

「【サイズ】使って?」

《……つかってー》

「本気か?」

《……ほんきー》


 俺がそう聞くと、ラプラスは無邪気な笑みを浮かべて首肯した。

 

 くっ、その笑顔が眩しい! でも、こいつ分かってるのか? 俺と一緒に入るってことは――


「ラプラス? 一応言っておくが、この温泉には俺以外の男も入ってるかなら? ラプラスも女の子だろ? 他の男と一緒でもいいのか?」

《……んー、いいよー》


 少し考えてすぐに頷くラプラス。

 まさかラプラスにそんな性癖があったとは……我が”権能”ながら恐ろしいぜ!


《……だって、おーぎといちのせいがいにはみえないもん》

「あ~確かに。見えないんだったな」

《……そうだよー》

「でも、万が一という事もあるだろ? 一ノ瀬って言う例外もあるんだし、他にも見える奴がいるかもしれない」


 俺がそう言うとラプラスは首を傾げながら聞いてきた。


《……もしかしておーぎ、しっとしてるの?》

「……は?」

《……わたしのはだかをほかのひとにみられたくないんでしょ》

「は、はぁ? そんなわけ無いだろ?」

《……めがおよいでるよ?》

「うぐっ」

《……おーぎ、かわいい》


 そう言ってラプラスは俺の胸に飛び込んできた。

 そう言えばこいつ飛べたんだったな。すっかり忘れてた。


《……いっしょにはいろ?》


 俺の胸に飛び込んて来たラプラスが上目遣いでそう言った。


「……………………………………わかった。俺の負けだ。一緒に入ろっか」


 俺は諦めたように両手を上げた。


《……ありがとう、おーぎ!》

「じゃあ入るか」

《……うん!》


 満面の笑みを浮かべて元気な返事をするラプラス。

 ラプラスには勝てる気がしないな、なんてことを思いながら俺たちは男湯の暖簾をくぐった。


  ◆◆◆


《……んー! おーぎ、うまくぬげないー》

「はいはい、ちょっと待ってな」


 ボタンを外さずにYシャツを脱ごうとするラプラス(【サイズ】使用済み)。

 俺は服を脱ぎタオルを腰に巻いた状態でラプラスの服を脱がせていく。

 日本でやったら現行犯で逮捕されそうな背徳的な雰囲気が流れる。

 だが、これはいつものやり取りだ。どうやらラプラスは服を脱ぐのが苦手らしい。《超高度AI》って名前なのに学習してないのだろか?


《……おーぎ、いましつれいなことかんがえた》

「え? そんなことないよ? でも、早く一人で着替えれるようにならないとな」

《……ぶー、だってー、《超高度AI》をつかってがくしゅうしたら、おーぎにぬがせてもらえなくなるから》

「なん……だと……」


 そう言って恥ずかしそうに頬を染めるラプラスは控えめに言って超絶可愛かった。

 ずっとお世話していたくなる、そう思わせる可愛さがそこにはあった。

 思わずドキリとしてしまう。これはいろいろとまずいな。主に倫理的な意味で非常にまずい。


 俺が内心でドギマギしていると、服を脱ぎ終わった一糸纏わぬ姿のラプラスが俺の手を引く。


《……おーぎ! はやくー》

「お、おう。そうだな。……と言うか前! 前隠せ!」

《……だれもみえてないよ?》

「俺には見えてるだろ!」

《……んー? わかったー、りょうかーい》


 そう言って俺の差しだしたタオルで前を隠すラプラス。

 小さいときはまだ良かったが、大きくなった今は流石にね。俺も男だからね、うん。(※ラプラスの見た目は6歳児です)


 ただ、タオルで隠したことで余計に背徳的になった気がするのは俺だけだろうか?

 いや、考えるのは止めよう。これ以上考えたら人間として超えてはいけない一線を越えてしまいそうだ。


《……はやくー》


 無邪気に俺の手を引くラプラスを見て、俺は雑念を振り払うように顔を振った。

 まったく、ラプラス相手に何を考えているんだ? 相手は”権能”だぞ? いくら可愛くても俺の”権能”なんだ。そんなことを考えること自体間違ってるだろ。

 

 俺は心の中でそう考えつつ、ラプラスに手を引かれて大浴場の中に入った。

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