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VS スライムキング 前編

 とりあえず、スライムキングのスキルでとりわけ面倒そうなのは――

 ・【分裂】

 ・【スライム操作】

 ・《スライムボディー》

 この三つだ。

 その効果は以下の通り。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【分裂】:自らの身体を切り離すことが出来る。切り離した身体は攻撃に使用することが可能。また分身体として操作することも可能。最大分裂数=レベル

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 簡単に説明すると分離した肉体を遠隔操作できるって言う”能力”らしい。

 スライムキングのレベルは30だから分裂の最大数は30ということになる。

 戦闘中に分身体にまで気を配らないといけないのは面倒くさいな。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【スライム操作】:周囲にいるスライムを操ることが出来る。最大操作数=レベル

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 これは文字通りスライムを操作することのできる”能力”だ。

 これも最大30匹まで。

 今目の前にいるスライム達も大体30匹ぐらいだから、この場にいるスライムをほぼ全て操作することが出来るという事だ。チートかよ。

 そして極めつけはコレ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《スライムボディー》:スライムの肉体になる。同時に【衝撃吸収】【無限吸収】を獲得。スライム固有能力(【再生】【分解】【吸収】【物理耐性】【魔法耐性】【形状変化】)の効果が大幅に上昇、最大練度で使用できる。また、今まで吸収してきたエネルギーを使用し、自分の魔力、筋力、能力の効果を一時的に上昇させることができる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 化け物かと。バグキャラかと。

 まあ、”権能”なんだから当然といえば当然だが。

 それでも明らかに性能がおかしい。ただでさえ高い耐性能力が上がった挙句に新しいのが増えた。

 付け加えて吸収したエネルギーを使用できるらしい。

 星野って『好き好んで狩る奴はいない』とか言ってたよな? だとしたらこいつどれだけのエネルギーを貯め込んでるんだろうな。

 面倒なんてレベルじゃない。はっきり言ってチートキャラだ。マジでなんで三階層にいるのかが謎なんだが。

 これって『狩る奴がいない』じゃなくて『狩れる奴がいない』の間違いじゃないのか?


 ま、やるだけやってみるか。


「【強酸】」


 俺は【強酸】を発動させて、目の前のチビスライム達を包み込む。

 するとスライム達は分解されていった。

 これは【スライム操作】対策だ。周囲に操作できるスライムがいないのならこの”能力”は使えないからな。

 【雷撃】でもよかったが、あれだと身体の一部が残ってしまう可能性があるからな。【再生】を使われるのは面倒だ。

 あと、スライムキングに誤射する可能性がある。それは避けたい。

 その点、【強酸】ならたとえ【再生】を使われても分解スピードが上回っている限り殺しそこなうことはない。

 スライムキングを対象に指定しない限り危害が及ぶこともない。


 ただ分解速度はいつもよりも遅い。人間の肉体くらいなら一瞬で消滅させられるが、【再生】と耐性能力を持つスライムにはやはり多少の時間がかかるのだろう。


 それから30秒ほどですべてのチビスライムは消え去った。


 すると周りのスライム達が消えたことに気が付いたスライムキングがのそのそと動き出し、こちらに向き直った。……多分。だってスライムの顔が何処かなんてわからないし。

 でも多分こっちを向いている。

 

 さてと、スライムの出方が気になるが、ここは先手必勝かな。


「【空間転移】、【雷撃】【雷操作】」


 俺は【空間転移】でスライムキングの頭上に一瞬で移動し、【雷撃】と【雷操作】を発動する。

 刹那、俺の掌から青緑色のスパークがバチバチバチッという音と共に煌めき、次の瞬間、雷竜を超えるレベルの【雷撃】がスライムキングに向かって一直線に放たれた。

 さらに【雷操作】の効果で【雷撃】を操作し、スライムキングを包み込むように形を操作した。


 そしてスライムキングに接触――――する寸前でスライムキングは自らの形状を変化させた。

 その形状はさながら大きな口のように広がり、一瞬にして【雷撃】を飲み込んでしまった。


「はあ!?」


 余りの事態に俺は驚きの声を漏らす。

 だが、俺の驚きなど知らないスライムキングはその形状をさらに変化させ、触手のようになった身体の一部を使い、俺に襲い掛かった。


「ッ! 【空間転移】ッ!」


 俺はすぐに【空間転移】を発動させ退避する。

 そして一度、深呼吸をして気持ちを整えた。

 

 スライムキングとの初めての接触を経て、俺は思った。


 速過ぎるだろ!?


 向こうも俺のことを一度認識していたとはいえ、【空間転移】で移動した俺の【雷撃】に対応し一瞬で飲み込んだた挙句、次の瞬間には触手で攻撃を仕掛けてきた。その間約3秒。

 俺はチラッとスライムキングの頭上に視線を向ける。

 触手のぶつかった天井はガラガラと崩れ去っていた。

 

 速い挙句に攻撃力まで高い。こいつボスギャラだろ。てか雷竜より強い気がするんだが?


 これは……本気でやらないと負けるな。


「《超高度AI(ラプラス):未来予測演算/思考加速》、《創造主:武器創造》、【ダークネスドミネーション】」


 俺は立て続けに”能力”と”権能”を発動する。

 目の前に浮かぶ漆黒の剣を手に取り、創造したオリハルコンの剣を空中で構える。

 これで準備は整った。

 それと同時に再び俺に気がついたスライムキングの触手が襲い掛かる。だが、その動きはスローで少しズレて見えた。


「【縮地】……ッ!」


 俺は《思考加速》により動きがスローになったスライムキングの攻撃を《未来予測演算》と【縮地】を使い切り裂き避けつつ、分解することのできないオリハルコンの剣を飛ばし、スライムキングにダメージを与える。

 本当にダメージが入っているかは謎だが、何もしないよりはましだろう。

 だが、ほとんどの剣は硬化した触手に弾かれている。

 いまいち攻めきれない。


「じゃあ、これならどうだ! 《万物創造:形状改変》!」


 俺はこの洞窟内の形状を創り変える。

 洞窟の地面、壁、天井は巨大な槍へと形を変え、四方八方からスライムキングに向かって牙をむく。

 が、


「おいおい、マジかよ……」


 スライムキングは触手を切り離しそのまま俺に向かわせた後、垂直に跳躍し全身を大鎌のような形状に変化させ、乱回転することですべての槍を切り裂いてしまった。

 そしてスライムキングは何事もなかったかのように元の楕円の形状に戻り着地、触手の片側を身体に戻した。


 俺の頬を冷や汗が伝う。

 ホントにこいつに勝てた奴がいるのか? だとしたら全力で尊敬するよ。


 さてさて、どうする? スライムキングに肉薄してゼロ距離から【ダークネスドミネーション】をぶっ放せば行ける気はするが、肉薄できる気はしないな。

 唯一の方法としては【空間転移】だが、タイミングを見誤ると逆にこっちが死ぬという諸刃の剣。


 はははっ、楽しいな~。

 気が付くと俺は笑っていた。

 この気持ちは雷竜以来だな。

 ギリギリの戦いなのに楽しいと感じる。おかしいだろうか? 

 俺はそうは思わない。


 今までは《創造主》を受け止めることのできる奴なんていなかったからな。これだけ豪快に力を使えることが楽しい。

 次はどう動こうかと考えるのが楽しい。

 相手に通じる”能力”の組み合わせを考えるのが楽しい。

 相手の分析をするのが楽しい。

 他にもいろいろとあるが、これらは人間だれしもが持つ感情だと思う。

 これらを感じるからこそ、勝利したときの喜びと言うのは大きくなるのだ。

 戦闘狂と言いたければ言うがいい。

 それでも俺は、今この瞬間を全力で楽しむだけだ。

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