【スノードロップ】の能力
「扇様、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「ん? 聞きたいことがあるなら遠慮しなくていいよ」
「ありがとうございます。実は私自身もあの魔剣の能力が気になっておりまして。ただ、聞いていいものかどうか……」
「ああ、そう言うこと」
ん~、ユリウスにはああいったけど別に隠してるわけじゃないんだよな。
と言うか今回の魔剣は【ダークネスドミネーション】と違って気軽……って言っていいのかはわからないが、それなりに普通に使えるし。ダンジョンでも使うつもりだからな。それだったら、先に能力を知ってもらっていた方がいいかも知れないな。
そのほうが連携?もしやすくなるだろうし。
「別にいいよ」
「ありがとうございます」
アイルは俺に向かって軽く一礼した。わざわざお礼を言われるようなことでもないと思うけど。
すると、その会話を聞いていた三人が口をそろえて、
「「「いいの(かい)!?」」」
若干乗り出し気味になりながらそう叫んだ。
「うおっ……」
いきなり叫ぶなよ! びっくりするだろ!
「だって、あたしも気になるしさ! でも聞いちゃダメみたいな雰囲気だったし!」
「うんうん!」
「同感だね」
「そ、そうか。それは悪かったな」
そんなに聞きたかったのかよ。聞いてもそんなに面白い話じゃないだろうに。
でも、そうだな。
「どうせならお弁当でも食べながら話すよ。なんだかんだ言ってもうお昼時だしな」
冒険者ギルドで予想以上の時間を消費してしまったせいでもうすっかりお昼だ。お腹すいた。
他のみんなもそれに同意する。
「で、どこかによさそうな場所あったっけ?」
「確かこの近くに公園のような場所があったはずです」
「ならそこに行くか。道案内よろしく」
「かしこまりました」
そう言ってアイルは少し前を歩き始めた。
数分ほど歩くとついに公園にたどり着いた。公園と言うには少し広すぎる気もするが、まあ、狭いよりはいいか。
俺たちは木陰があるとことまで移動する。
さてと、シートを敷くか、それとも椅子とテーブルを創るか、どっちにしようか。
星野と藤原もモノが創れる”権能”ってことは知ってるし、創っても問題ないんだよな。
「どっちがいいと思う?」
「あたしテーブル希望」
と言う星野。
「シートがいい!」
と言う藤原。
「テーブルを希望するよ」
と言う一ノ瀬。
「テーブルでお願いします」
と言うアイル。
結果は三対一でテーブルとなった。
俺はサクッと椅子とテーブルを創造する。フードコートとかに置いてあるような白っぽい椅子とテーブルだ。
「ホントに便利ねアンタの”権能”。それ使えばダンジョンに必要な道具全部揃うんじゃないの?」
「ま、できなくはないけどな。それだと楽しくないだろ? ダンジョン内でならまだしも、せっかくこうして買い物に来てるんだし」
「そうだよ! 買い物だよ!」
俺の言葉に藤原が乗ってきた。
「わかってるわよ。言ってみただけ」
そう言いながら星野は椅子に座った。俺たちもそれに続いて座る。
全員が席に着くとアイルが収納から大きなお弁当を取り出した。あれだ、運動会とかに持っていくお弁当に似てる。重箱って言うの? そんな感じのやつ。
「「「「「いただきます」」」」」
《……おーぎ、わたしあれがいい》
肩にいるのにすっかり馴染んできたラプラスがお弁当のおかずを指さしながらそう言った。
「はいはい。ちょっと待とうな」
ちなみにラプラスが椅子で食べるのは俺の部屋の中だけだ。外ではさすがに目立ち過ぎるからな。
俺はラプラスを肩からテーブルの上へと降ろし、先程ラプラスが指をさしていたおかずを【サイズ】で小さくしてラプラスに食べさせる。
《……んー、おいしい》
ふぅ、癒される。完全に癒しキャラだ。裸Yシャツ姿の幼女が癒しキャラって言うのもどうかと思うが。
でも、ラプラスYシャツ以外着ないのよ。ちょっと前に一度、メイド服でも着てもらおうと渡してみたけど来てくれなかった。残念。
ロリっ娘メイドとか結構よさそうだったんだが……
う……っ、みんなからの視線が痛い。こいつらエスパーか!?
俺はゴホンッとわざとらしく咳払いして話を始める。
え~と、魔剣の能力だっけ?
「まず【スノードロップ】の能力から話そうか。【スノードロップ】の能力は簡単に言うと対象の制御権を奪う、というものだ」
「対象の制御権を」
「奪う?」
「そうだ。この魔剣の能力で創り出した花弁に触れた対象を強制的に自分の制御下に置くことが出来る」
「なにそのチート性能。どういう仕組み?」
仕組み? え~と、ゲームの武器説明欄にはなんて書いてあったっけ? ……ああ、そうだった。思い出した。
「えっとな、あの花弁には俺の魔力が膨大な量込められていて、それを対象に流し込むことで対象を操る、って言う仕組みだ。雪みたいに解けていたのは魔力を流し終わったからだな。雪解け水が地面にしみこむイメージでいいよ」
「ギルドマスターの水を操ったのはそう言う仕組みだったんだね」
「ぶっ飛んだ性能の魔剣ね」
「でも、膨大な量ってどのくらい?」
「そうだな……」
俺は少しだけ考えた。あの時はまだ”能力”扱いじゃなかったからな。空気中の魔力を利用していた。
”能力”と”権能”の決定的な違いはそこだ。”能力”は自分の保有する魔力を使用するが”権能”は空気中の魔力を利用する。
だから空気中の魔力がどの程度減ったのかが分かればいいんだが……
俺はチラッとラプラスに視線を送る。
すると俺の視線に気が付いたラプラスがやれやれと言った感じで肩をすくめた後、魔力の消費量を教えてくれた。
……マジかよ。
「……大体、一枚当たり1000だってさ」
「せ、せん!?」
「う、嘘でしょ?」
「それは流石に、多すぎないかい?」
こいつらが驚くのも無理はない。この世界での一般人の魔力量が大体800~1000、学園の生徒が2000~3000ほどだ。
魔法タイプの藤原でも5000ほどだと言っていた。それでも十分多いとは思うが、花弁は5枚しか出せない。
ただ1000と言うのはあくまでも基準だ。込める魔力を多くすればそれだけ操れる時間と範囲、精度などが伸びる。が、反対に込める量を少なくすると短時間で狭い範囲、低精度でしか操れなくなる。それでもまあまあ操れるけどな。
え? 【ダークネスドミネーション】? アレは別だろ? 剣を顕現させるだけで20000とか、意味が解らないし。あんな化け物と一緒にしたらダメだよ。だって一発で山に穴が開くんだぜ? アレってどのくらい魔力消費してたんだろうな。少し気になる。
案外【スノードロップ】や【ヒガンバナ】の顕現時の魔力消費量も多いかも知れないな。ちゃんと確かめておかないと。
ちなみにユリウスの水を操るのに雪と見間違う量の花弁が必要だったのは単純にユリウスの魔力量が多すぎて一枚じゃ操り切れなかったからだ。一瞬なら一枚でもいけるがそれだと簡単にレジストされてしまう。
【催眠】を打ち消したことと言い、ホントあいつの魔力量ってどんだけなんだろうな。
もしかして俺よりも多かったりして? ……ってそれは流石にないか。
「? 扇様?」
「あ、いや、何でもない。とりあえず【スノードロップ】の説明は以上だ。どうする? 【ヒガンバナ】の方も聞くか?」
俺がそう言うと三人は顔を見合わせた。
「気になるけど、今はまだいいよ!」
「確かに、このまま聞いてると自信なくしそうだし」
「その通りだね。またの機会にとっておくよ」
「そうか。アイルはどうする?」
「私も、またの機会とします」
「そうか。それじゃあまた今度だな。まあ、もしかしたらダンジョンで使うかもしれないけど」
そう言って俺たちは再びお弁当を食べ始めた。
食べ終わったらいよいよお買い物だ。メイの時とは行く店が違うからな。結構楽しみだ。




