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模擬戦

「まさかギルドの地下にこんな空間があったとはな」


 俺は目の前に広がる空間を見渡しながらそんなことをつぶやく。

 立方体をそのまままるッとくり抜いたような空間だ。ヴェインヴェルグ(王立魔法学院)にある闘技場ほどではないが、かなりの規模の空間だった。どこかに光源があるのか、かなり明るかった。


 地下闘技場……いや、冒険者ギルドにあることからすると訓練場、か? どちらにしろ凄いな。《創造主》を使えば俺も創れるか? ……いけそうだな。学校を卒業したら地下帝国でも創るか? まあそれは冗談だが、邸宅くらいならいいかもな。わざわざ敷地とか考えなくていいし。いや、その考えだといっそのこと異空間か何かを創造したほうが良いんじゃないか? やろうと思えばできるだろうし。と言うか本来そっちが本業だろ? なんて言ったって名前が《創造主》だからな。


 って、今はそんなことを考えてる時じゃなかったな。

 ここで時間を使いすぎるとこの後の買い物の時間が減るからな。できるだけ早く済ませたい。


「ここの土地はもともと実験施設があった場所でね。今でこそこうしてギルドが立っているが、未だにその名残があるんだよ。この空間はその一つだね。今はありがたく訓練場として使わせてもらっているよ」

「へ~、そうだったのか」


 実験施設、ねぇ。一体どんな実験が行われていたのやら。


「気になるかい?」

「別に」

「そうか。それならもう始めてしまってもいいかな?」

「ああ」


 俺は小さく頷くとそう返した。

 そしてある程度離れた位置に立ち向かい合う。


 ちなみにアイルたちは壁際で観戦している。危ないかもと思ったが、そこは藤原が【結界術】で結界を張ってくれるそうだ。


「一応言っておくけど、ここには回復用の結界なんて張ってないからね? あんまり大怪我しすぎると死んじゃうから気を付けてね」

「ご忠告どうも。そっくりそのまま返させてもらうよ」


 それを聞いたユリウスがははっと笑う。


「それじゃあ始めようか」

「そうだな。アイル、審判を頼む」


 俺は観戦しているアイルにお願いする。


「かしこまりました。……それでは僭越ながらこの私が審判を務めさせてもらいます。制限時間は無制限で、相手を気絶、もしくは降参させた方の勝利。”魔法”、”能力”、”権能”の使用は自由。という事でよろしいでしょうか?」

「ああ、問題ない」

「問題ないよ」

「それでは――――試合開始」


 アイルが試合開始を宣言する。ただ、宣言と言うほどの声量はなかったな。無表情だし、なんだか締まらないな。


 俺がそんなことを思っていると、ユリウスが【武装】を発動させる。そして光が集まると、次の瞬間その手には一本の青色の剣が握られていた。


《扇。アレ、魔剣だよ。珍しいね》


 肩に乗っているラプラスがユリウスの持つ剣を見つめながらそんなことを言った。


 魔剣とはダンジョンなどでたまに発見されるという、特殊な力の宿った剣のことだ。

 ごく稀に【武装】で作り出すことのできる者がいるとは聞いていたが、まさかユリウスが魔剣を使えるとはな。


 ちなみに俺の【ダークネスドミネーション】も魔剣扱いらしい。


「来ないのかい? それならこっちから行かせてもらうよ。”アクアフィールド”」


 ユリウスは青色の魔剣を床に突き刺してその力を発動させる。

 すると魔剣から水が溢れ出し、この訓練場の床を水浸しにした。足首辺りまで浸かったところで魔剣を引き抜いた。


 水を出す魔剣? いや、水を操る魔剣か。どちらにせよ面倒だな。これじゃ雷系の”能力”が使いづらい。下手をすればこっちが感電するからな。

 さて、と。どう攻めるかな。


「なかなか余裕だね。辺り一面僕の魔剣の領域だって言うのに」

「ま、焦ったって仕方がないからな」

「その余裕、いつまで続くかな。”アクアスピアー”っ」


 床の水が形を変え、数本の槍を形成し俺に牙をむく。

 俺はそれを【空間転移】で避けつつユリウスの背後へと移動する。そして《創造主》で数本の剣を創造――しようとしたところで床の水に身体を絡めとられた。


「……ッ!」

「【空間転移】か。なかなか便利な”能力”を持っているね。でも言っただろう? 辺り一面僕の領域だって。この水に浸かっている限り君の居場所は僕に筒抜けだよ」

「へ~」


 それはいいことを聞いた。つまり()()()()()()()()()()()俺の居場所は分からないってことだな?


 俺は再び【空間転移】を発動。水の蔦を抜け出し空中へ転移する。それと同時に《創造主》を発動しスノーボードのような板を創造した。そしてその上に降り立つ。


「……もはや何でもありだね。さすが”権能”」


 ユリウスは宙に浮かぶ俺を見ながら呆れたようにそう言った。


 とりあえず、これでいきなり水に巻かれることはないだろう。あとは下からの攻撃を警戒しないとな。


「【反射板】」


 俺は【反射板】を発動させ、小型の赤い板を複数個つくりだす。そしてそれをスノーボードの裏側に敷き詰めるように貼り付ける。これで下からの攻撃もほとんど気にしなくていい。


「【反射板】まで……本当に一体いくつの”能力”を――……それじゃあこれはどうかな”アクアボール”、”アクアスピアー”っ」


 ユリウスがそう呟くと直径10cmほどの水球が一瞬にして浮かびあがる。そしてその水球から水の槍が放たれる。


「鬱陶しい……【雷撃】ッ」


 雷を放ち水の槍と水球を消し去る。ついでにユリウスにも攻撃してみたがそれは突如として現れた水の壁に阻まれた。

 手加減していたとはいえ【雷撃】を受け止めるとかどんだけだよ。


「水の魔剣ってのは厄介だな」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


 俺は浮かび上がり続ける水球を【雷撃】で次々と消し去りながら溜息を吐く。


 はぁ、仕方ない。アレを使うか。パクるようで気が引けてたんだが、あまり時間がかかり過ぎるのも嫌だしな。


「ラプラス、周りの水球は任せた」

《ん、任された》


 水球への対処をラプラスに任せた俺はそっと目を瞑り”権能”を発動させる。

 

「《創造主》……」


 イメージしよう。厄介なのは水だ。変幻自在で四方八方どこからでも攻撃できる。そして何より【雷撃】を防ぐほどの防御性能。本気を出せば破れるだろうが、恐らくこの訓練場が壊れる方が先だろう。それは避けたい。ならばどうするか? そんなものは簡単だ。俺も水を操作すればいい。

 ユリウスの魔剣を見ていて思い出したが俺の知っているゲームにも似たようなことのできる能力の魔剣があった。それを創造しよう。色も形も能力も鮮明に思い出せる。ここまでそろっているのならイメージは簡単だ。


 俺は魔剣をイメージしその名を呼ぶ。


「【スノードロップ】【ヒガンバナ】」


 眼を開けるとそこには刀身、鍔、柄などのすべてが雪のように真っ白な刀とすべてが血のように真っ赤な刀が浮かんでいた。

 俺は真っ白な刀を右手、真っ赤な刀を左手に取り、軽く振る。うん、ちょうどいい具合に仕上がったな。本当は【スノードロップ】だけでも良かったんだが、もともと二本一組の刀だからな。ついでにもう一本も創造した。


 それを見ていたユリウスは驚いたような顔をこちらに向ける。


「まさか……それは、魔剣かい? それも【武装】ではなく正真正銘の魔剣を……創った? たった今この場で? ははは、さすがにこれは驚いたよ。いや、さすがは《創造主》と言ったところかな。本当に、何でもありなんだね」


 そう言いながら苦笑するユリウス。


「そんな呑気なこと言ってていいのか? この魔剣、結構強いぞ?」


 俺は軽く忠告しながら白色の魔剣【スノードロップ】の剣先を天井に向けた。そして魔剣の能力を発動させる。


「”スノードロップ”」

「? これは……雪? いや、花弁?」


 すると訓練場内に純白の花弁(はなびら)が雪のように降り始めた。

 そしてそれは宙に浮く水球や床に満たされた水に触れると雪のように解けていった。

 

 これで良い。これで準備は整った。


 俺は【スノードロップ】を横薙ぎに振るう。すると、まるで呼応するように水球と床の水が一斉にユリウスに向かって牙をむいた。


「なっ!? 僕の水だよ!?」


 ユリウスは驚きの声を上げながら迫りくる水を動き回りながら手に持っている魔剣で捌いていく。だが、あまりにもその数が多すぎた。

 たまらず新しく出した水で障壁を張っているが、それすらも永遠と降り注ぐ純白の花弁に触れた瞬間ユリウスに牙をむいた。


「っ!? 出鱈目すぎるよっ!?」


 そして、ついにユリウスは水に足を取られた。


「しま……ッ」


 ユリウスは足を取られて動きが止まった一瞬の隙に全身を水で拘束された。その周りにはいくつもの水球が浮かんでいる。

 俺はそれを見てニヤリと笑う。


「俺の勝ちだな」

「……どうやら、そのようだね」


 ユリウスは悔しそうな苦笑いを浮かべながら自分の負けを認めた。

 

「そこまで。――――扇様の勝利です。当然の結果ですね」

「えぇ~。審判がオーギ君を贔屓しすぎてる気がするんだけど?」

「気のせいです」


 俺はそのやり取りを見ながら笑った。

 こうして、ユリウスとの模擬戦は俺の勝利で幕を閉じた。

ブックマーク&評価ありがとうございます!


早速ですが一つ謝りたいことがあります。

昨日のサブタイ……普通に間違えてましたね。

一応修正しております。すみません。


これからも続きますのでよろしくお願いします!

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