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デジャブ

 この状況、俺は悪くない……よな?

 だって先にあっちが突っかかってきたんだ。こっちの女性陣に手を出すとか、壊すとか好き勝手なこと言ってたし。しかも俺は胸ぐらをつかまれていた。

 

 …………正当防衛じゃね?


 俺は多少、ほんの少しだけ、”能力”を発動させただけであって、実際に相手を傷つけたわけじゃない。

 前みたいに相手を吹っ飛ばした訳ではないのだ。つまり俺がしたことは平和的解決方と言える。誰も傷ついていない、それが事実だ。それでいいじゃないか(心の傷は別として)。


 と、俺がそんなことを考えていると、5人の冒険者たちはどこかへ走り去ってしまった。まあ、興味もないしどこへ行ってもいいんだけどね。


 ただ――


「さてと、オーギ君、アイル君。お久しぶりだね。それじゃあ――奥で話を聞かせてもらえるかな?」


 そう言ってきたのはユリウス・シュトレム、ここのギルドマスターだ。このギルドで一番偉い人だ。そんな人がものすごい笑顔でこっちに歩いて来ている。


 あいつら、逃げるなら報告くらいしてから逃げろよな。面倒な。


  ◆◆◆


 俺たちは奥の部屋へと通された。以前、初めて冒険者ギルドに来た時に入った部屋だ。

 その部屋で俺たちはユリウスと向かい合うように座った。

 ユリウスの顔はとても真剣そうだった。

 怒ってるのか? まあ、初犯ならまだしも前科があるからなぁ俺。一ヶ月もたたないうちに二回目とか確かに怒られても文句は言えないか。


 チラッと他のメンバーを見る。アイル以外かなり緊張している様子だった。まあ、無理もないか。いきなりギルドマスターに呼び出されたらそうなるよな。うん、わかるよその気持ち。

 ちなみにラプラスは俺の肩の上で寝息を立てている。我が”権能”ながらマイペースなやつだ。


 俺が少し呆れていると、


「それで、オーギ君……」


 ユリウスはゆっくりとした口調で聞いてきた。


「今のは……一体何の”能力”を使っていたんだい? それともまた”権能”なのかな?」


 は?


「? 聞こえなかったのかい? だったら――」

「いや、聞こえてるよ。うん。それはもうばっちりと。……で? 今の状況とその質問、どう関係があるんだ?」

「覚えていないのかい? 以前にも言っただろう。僕は強い人を見ると話を聞かずにはいられない質なんだ。当然、”魔法”や”能力”、”権能”にも目が無い。だったらもうわかるだろう? 目の前であんな”能力”を見せられて黙っていろと言う方が無茶な話さ」


 ……そう言えばこいつそんなこと言ってたな。すっかり忘れてたわ。

 あ~あ、ものすごいデジャブを感じる。


 ていうか、


「お前、見てたならさっさと止めろよな。ギルドマスターだろ」

「いやいや、君ならあの程度の相手ぐらい余裕だろ? 止める必要性を感じなかったよ」


 こいつ……ッ、一回しばいたほうが良いんじゃないか? 

 と言うかこんな奴がギルドマスターで本当に大丈夫なのか? このギルド。今すげぇ不安になったよ。


「だから今回の件で咎めることはないよ。相手の冒険者にはペナルティーが付くけどね」

「はぁ……まあいい。それでユリウス、俺たちがここに来た理由は分かってるんだろ?」


 俺がそう聞くとユリウスはもちろん、と頷いた。


「来週、ダンジョンに行くそうだね。学校から通達が来ていたよ。準備はすでに済んでいるから、受付に頼むといいよ。……それで、”能力”の話なんだけど――」

「そうか。じゃ、俺たちこの後用事があるんだ。それじゃあな」

「え? ちょ、ちょっと!?」


 俺はユリウスの話を強制終了させて、みんなと一緒に部屋を出た。そして、受付へと向かう。が、ユリウスがあまりにもしつこく呼び止めてくるので、仕方なく立ち止まる。


「おい、しつこいぞ。【いい加減諦めろ】」


 そのあまりのしつこさに思わず【催眠】を発動させて喋ってしまった。


「!? ……す、すごいね。言葉一つにここまで精神を揺さぶられたのは初めてだよ」

「は……?」


 お、おいこいつマジか……。俺の【催眠】を自力で破った? しかもこの短時間で? そんなこと、できるのか? 


「……《超高度AI(ラプラス)》」

《ん、魔力の反応があった。でも”能力”じゃない。単なる魔力の放出だけで【催眠】を打ち消した》

「マジかよ……」


 俺がそう呟くと、ユリウスは自慢げな顔でこちらを見てきた。


「どうだい? なかなか僕もすごいだろう? こう見えて僕、結構強いんだよ?」

「……そうみたいだな」

「そこでどうだろう。僕と一つ模擬戦をしないかい?」


 ユリウスはそんな提案をしてきた。


「どうしてそうなる?」

「だって、君は僕に”能力”を教えるつもりがないだろう? だったら自分で体験したらいい、と思ってね」

「思考回路がぶっ飛んでるな。俺が受けるとでも思ってるのか?」

「今回に限って言えば、受けると思っているよ」

「どうして言い切れる?」

「それは、ここが僕の管理するギルドだからだね。僕が一言言えば君たちはギルドカードの発行ができなくなる。それでもいいの?」

「脅しかよ……はぁ、わかった。やればいいんだろやれば」


 俺がそう言うとユリウスはニヤリと笑った。


「決まりだね。それじゃあ、こっちに来てくれ」


 そう言ってユリウスは歩き始めた。


「悪いな皆、少しだけ待っててくれ。すぐ終わらせるから」

「それはいいけど……アンタ大丈夫なの?」


 星野がそんなことを聞いてきた。


「何が?」

「いや、何がって、相手はギルドマスターよ? 勝算はあるの?」


 そう言われた俺はチラッとラプラスを見る。


《勝率87%――問題ないよ》


 意外と高いな。ほぼ確実に勝てるレベルだ。


「大丈夫だって。多分勝てるよ」

「なら、いいけど……」

「気を付けてね扇君!」

「頑張ってね。応援しているよ」

「ご武運を。……ユリウスさんとは少しお話が必要なようですね」

「お、おう。頑張るよ」


 最後にアイルが物騒なことを言っていた気がするが、それは考えないでおこう。


「じゃ、ちゃっちゃと終わらせて買い物に行こうか」


 そう言いながら俺たちはユリウスの後についていった。

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