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捨て少女

 放課後、いったんアイルと別れた後、寮の廊下を歩いていると俺の肩の上に乗っているラプラスが聞いてきた。


《……ぱーてぃーめんばーどうするの?》

「それなんだよな~」


 残り一人を探すって言っても、当てがないんじゃあどうしようもない。だが、代表者になった以上どうにかして探さないといけない。

 クラスの連中から嫌われているであろう俺が? みんなに話しかけて勧誘して来いって? 無理ゲーじゃね?

 いっその事あっちから声をかけてくれると楽なのに。……ダメだな、現実逃避したくなる。もっと前向きに考えよう。それしかない。


 そうと決まれば、情報収集だな。


「《超高度AI(ラプラス)》」


 俺は《超高度AI》を発動させる。視界にいくつもの文字や数字が表示された。例えるなら映画とかに出てくるアンドロイドの視点。目につく物すべての情報が脳内に流れ込んでくる。

 これ、《超高度AI》の演算処理能力が無かったら一発で発狂する奴じゃん。でも、凄いなこれ。見ただけで何でもわかる。

 絨毯一つからでも材質、値段、いつごろ作られたものか、どのように作られたのか、などが一目でわかる。すさますさまじい情報量だ。


「さてと、クラス全員の顔写真と名前、それからパーティーに入っているかどうかを表示してくれ」

《了解。まかせて》


 次の瞬間、視界にクラス全員の一覧表が表示された。《超高度AI》マジ便利。もうスマホ超えてるんじゃね? と言うか間違いなく超えてるよ。スゲー。


「ありがとな、ラプラス。……にしても、結構みんなパーティー組み終わってるな」


 そこに表示されていた生徒のほとんどはすでに”済”のハンコが押されていた。残っているのは数人だけだった。


 てか、みんな早いなオイ。まだ先生が話をしてから一日もたってないぞ?

 これは、予想以上にヤバいな。早くしないと本格的に不味い。最悪全く知らない人と強制的に組まされる。どうにかしてもう一人を探さないと。


 危機感を覚えつつ歩いていると、自分の部屋のドアが見えてきた。が、ものすごい違和感がある。


「なにあれ、箱? いや、人か?」


 ドアの前に捨て猫ならぬ捨て少女が置いてあった。

 箱にはご丁寧に『みかん』と書いてある。その中に正座で入っているのは黒髪の巨乳美少女だった。


 背中まである長い黒髪に整った容姿、そして何と言っても制服の上からでも丸わかりのたわわに実った二つの果実。誰がどう見ても美人系の女の子だった。

 

 どうして俺の部屋の前に女の子が捨ててあるんだ? なんだか犯罪臭がするんだが、それはとりあえず置いておこう。それよりも気になるのは彼女が首からかけているプラカードだ。


『八重樫扇様、ボクを拾ってください』


 プラカードにはそう書かれていた。

まさかのぼくっ娘! いや、アウトだろ、コレ。捨てられてる女の子を拾うってどうよ。犯罪じゃね? 

 ここはスルーしよう。


 しかし、


「な、なあ? 部屋に入りたいから少しずれてくれないか?」

「……(ふるふる)」


 彼女は顔を横に振った。どうやら動く気はないらしい。


 しかたない、【空間転移】を使うか。でもこのまま放置するのも問題になりそうだな。

 

 俺はそっと《創造主》を発動する。そして、プラカードの文字を創り変えた。


『誰でもいいのでボクを拾ってください』


「うむ、完璧だな」


 それを見ていた捨て少女は今までつけていたプラカードを外して、箱の中から新たなプラカードを取り出した。そしてそれを首にかける。


 そこに書いてあったのは、


『八重樫扇様、どうかボクをあなた様のペットにしてください』


 ……いや、ちょっと待て。それはダメだろ? 完全に犯罪だろ? さっきの方がまだましだったよ? 正気か?


 俺が少しだけ後ずさると、捨て少女はジッと俺の目を見つめた。

 ん? あれ、この娘どっかで見たような……?


《この娘、扇のクラスの一ノ瀬(いちのせ)(ゆい)

「ああ」


 俺はチラッと視線を横に向ける。見ているのはクラスの全員が載った一覧表だ。その中に確かに彼女の名前があった。


 一ノ瀬唯。序列503位。”済”のハンコが押してないことからまだパーティーは組めてないのだろう。

 その原因は間違いなく、序列だろうな。


《そろそろ”権能”解除してもいい?》

「え? ああ、ごめん、ありがと」

《……ん、きにしないで》


 しかし、面識がなかったとはいえ、同じクラスの生徒。話くらいは聞いてもいいか。


「なあ、とりあえず部屋に入ってもいいか? 話はそこで聞くから」

「……わかった」


 そう言うと彼女は箱の中から出て、ドアの前からどいた。そして部屋の中に入る。


「自由に座っていいよ」

「……ありがとう」


 そうして俺は机を隔てて向かい合った位置に座った。

 それじゃあ本題と行こうか。


「俺に拾ってほしいって、どういうこと?」

「ボクにはパートナーが必要なんだ。そのパートナーになってほしい」

「パートナーって言うのは?」

「主従関係。主と奴隷。飼い主とペット」

「……いきなり話がぶっ飛んだな。どうしてそうなる?」

「それは、ボクの”能力”が関係しているんだ」

「”能力”?」

「そう、ボクの”呪われた能力”だよ」


 一ノ瀬さんは自分の能力について話し出した。


 【主従契約】。他人と主従関係を結ぶ能力。この能力の所持者は他の魔法、能力、権能の一切を取得できない。そして、筋力値と魔力値にマイナス補正がはいる。その代わり、主の筋力、魔力、魔法、能力を許可された範囲で使用することが出来る。


 その”能力”の主を探していたらしい。それで俺が選ばれた、と。

 確かに呪われた能力だな。誰かの奴隷にならないと力を発揮できないなんてひどすぎる。


「でもどうして俺なんだ? こう言っちゃなんだけど俺と一ノ瀬さんは全くと言っていいほど面識がない。話すのも初めてだ。そんな俺を主にして、危険だとは思わなかったのか? 主従契約って言うくらいだから一度契約するともう俺には逆らえないんだろ?」


 俺がそう聞くと一ノ瀬さんは小さく頷いた。


「だったら――」

「それでも、ぼくには主が必要なんだ。そうしないと今回のダンジョン攻略で死んでしまう」

「そう言うことか」


 確かに、”魔法”、”能力”なしで魔物と戦うのは無理がある。ダンジョン攻略前に主を見つけたいという気持ちもわかる。

 でも、だからって――


「その”能力”の話、俺以外には誰が知ってる?」

「誰も。話したのは八重樫君が初めてだよ」

「それは正解だな。誰にも言わないほうが良い」

「それで、ボクの主になってもらえる?」


 一ノ瀬さんは真剣な表情で聞いてきた。


「ラプラス、お前はどう思う?」

《……まかせる》

「そっか」


 これは少し考える時間が必要かな。


「一ノ瀬さん」

「はい」

「今日一日、時間をくれないか? 明日には答えを出すから」

「……わかった。それじゃあ明日の放課後、答えを聞かせて」

「わかった」

「それじゃあ、また明日」

「ああ、また明日」


 そう言って一ノ瀬さんは部屋を出ていった。

 さてと、判断材料が少ないかな。


「アイル」

「こちらに」


 俺が呼ぶと、アイルが突然隣に現れた。恐らく【空間転移】だ。

 

「お前は今の話どう思う?」

「少なくとも、嘘は感じられませんでした」

「なるほどな。とりあえず考えるだけ考えるか」


 相手を奴隷にするのは少し気が引けるな。合意のもとなら関係ない気もするが、そこはほら、倫理的に。

 そこら辺もあわせて考えないとな。明日までに答えが出せるように。

読んでくださりありがとうございます!


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